「ドルガねえちゃん、何するんだ? アポロノミカンは、魔人をつかまえるためにボクが持ってきたんじゃないか」
「スネール様は、降臨する前にマクミラに魂を奪われていた。アポロノミカンを見せて、新魔人として生まれ変わっていただくのだ」
「ま、待つんだ! アポロノミカンを人間以外のものが見せたことはまだない。何が起こるかは、誰にもわからないんだよ」
「さかさまジョージ、お前らしくもない。何が起こるかわからないからこそ、やってみるべきではないか?」
ウッ、さかさまジョージがうなった。
ドルガの鋭い爪が特殊ガラスケースを砕く。
だが次の瞬間、アポロノミカンが圧倒的思念で語りかけてきた。
(死の神の娘よ、今、儂とお主だけは異なった時間帯にいる。ちょっと話をしようではないか?)
夏海と合体したドルガが、声に出して答える。「何ごとだ? 『神導書』は『悪魔姫』に力を貸すのは不満か? 我が望みは、スネール様と共に世界を再構築することじゃ。やり方が気に入らないならば、はっきり言うがよい。そうでなければ、だまっているがよい」
(アスクレピオスが作った儂も、しょせんは「歴史」のパワーの一部にすぎん。それにお主がここで儂を開くのも、すでに予言されていること)
「それなら何の文句がある?」
(文句などはない。儂はこれまで予言するだけの存在だったし、これからもそれ以上でもそれ以下でもない。ある種の人間どもは、儂を手に入れることで何かを変えられると勘違いしていた。もし儂を狙って手に入れられたのならば、運命がそうなっていただけ)
「年寄りの話はまわりくどくてかなわん。何が言いたい?」
(たしかに、まわりくどかったな。儂はどうやら、神々のゲームに踊らされるお主たちが好きになったようだ。といって、何かをしてやることはできない。儂にできるのは、心構えを伝えることだけじゃ)
「心構え?」
(お主が取り付いた夏海の心をのぞいてみろ。チョイス・イズ・トラジックというメッセージが見つかるはずじゃ)
「チョイス・イズ・トラジック?」
(『悪魔姫』と呼ばれて気ままに暴れ回っていた時のお主と、人間に取り付いた今では立場が変わってしまったのじゃ。人間は、神々のように気まぐれには生きられぬ存在じゃ。人間は、自らの行動を選択する自由を持っている。だが、一度選択をしたら、その選択には責任を持たなければならぬぞ)
「上等よ!」
次の瞬間、ドルガは元の時間帯に戻っていた。
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