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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第一部 最終章−8 死闘の終わり

2020-04-03 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 

 その時、孔明とナオミの帰りが遅いのを心配して、寮で待っていたチャックとクリストフがやってきた。

 車のドアを開けて飛び出しきた二人はあまりの惨状に声も出せない。もはや勝負はついてしまったのか・・・・・・

 ナオミはあきらめかけた。

「勝負は、まだついてない」

 皆が声のする方を振り返ると孔明が立ち上がっていた。

「ビル、雲から大地に向けて雷を落とせばいいな?」

 服がボロボロに破れて上半身裸になった孔明が言った。

「ああ、アルゴスは雷のエネルギーを利用できる」

「よし」

 演武を始めるために孔明が後ろを向いた。

 その背中に鮮やかな真紅の龍の入れ墨が浮き上がった。

 右手が振られると光りが生まれ足をあげると虹が空気を切り裂いた。彼が移動するにつれて闘気が渦を巻きだした。つむじ風が起きた瞬間、幻視ではなく孔明は巨大な龍に変容すると天に向かって昇りだした。

「いいぞ、もっと上がれ!」ビルが叫んだ。

「今日の天気なら雲間放電が起きてるはずだ。孔明が大地に向けて雷を落としてくれればアルゴスを再起動できるぞ」

 ゴロゴロと雷が鳴り出したかと思うと稲光が始まった。

「来た、来た、来た!」

 ビルが、舌なめずりしている。

「ゲッーート!」

 アルゴスから出た弱い雷撃が雲間から落ちてきた稲光とつながった。

 耳をつんざく大音響と共に雷撃が一度アルゴスに引き込まれた。コンマ数秒後、今度はアルゴスから巨大な雷撃が発せられるとビルが器用にコントロールする。

「渦雷三連発!」

 たちまちゾンビ三体が消し飛んだ。残りは、でかぶつ一体だけだ。

 だが、アルゴスと孔明との二重奏はまだ安定していなかった。ビルの手元が狂って、次の雷を取り込んだ強力な雷撃がナオミの方に落ちてきた。

 あれ、やばい。

 ナオミが思った時だ。

 黄金色の鷲が飛んできてナオミをかばって代わりに雷撃を受けた。鷲は一瞬にして焼け焦げた。

 ナオミは目の前のクリストフに駆け寄った。

「バカ、なんてことをするのよ」

「ナオミ・・・・・・無事か?」

「わたしは平気。だいじょうぶ?」

「意識が遠くなってきた・・・・・・まだまだ俺を待ってるお魚ちゃんたちは海にたくさんいるんだけどな。でもよかった。ナオミが無事で」

「おい、ナオミ、気をつけろ!」孔明が叫んだ。

 ナオミは襲ってきた最後のゾンビをアクアソードで一蹴した。

 気がつくとボロボロになった孔明がジャガーの前に倒れていた。

「孔明・・・・・・」

 自分もボロボロの姿になったナオミが声をかける。

「お二人さん、最後は雷坊やの手を借りたにしてもお見事だわ。ご褒美をあげなくては」

 マクミラは掌から火の玉を出すとローデン・オーデトリアムを爆発炎上させた。

「これで明日の講演会は中止ね。こちらのメンバーもあらかた殲滅されてしまったし。次に会う日を楽しみにしているわ。アディオス」

 アオーン! 

 ケルベロスの息子たちは一泣きすると三首の巨大な魔犬ジュニベロスに変身してマクミラを乗せてかなたへ去ってしまった。

 

 

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