一九九〇年五月、マクミラは十八歳になっていた。
「マクミラ様、またゲームのことをお考えですね?」ジェフが言った。
「お前に隠しごとは出来ないわね。すでに勝ちが見えたゲームで果たすべき役割は何だろうと考えていたの。相手の動きが見えないうちは動きようがないとはなさけないわ」
「ご主人様なら、これはと思う人物をしもべとすることで完璧を期せましょう。そうしておけばマーメイドごときが動いても努力を無効化出来るのでは」
「話はそう簡単じゃないの。無制限にヴァンパイアを増やせば世界はヴァンパイアだらけになってしまうし、足跡を残せばハンターに狙われる危険も高まる。ヴァン・ヘルシングを気取る連中は今でも存在するわ」
「なるほど」
「それに一度くらい血を吸われても、全員がヴァンパイアになるわけではない。その資格を認められて、血の洗礼を受けなければならない。あなたのようにね」
「光栄でございます」
「あなたは選ばれたのよ。プルートゥ・・・様、直々にね。だけど最初と比べてずいぶんと性格が変わったんじゃない」
「それはよい方にで、それとも悪い方にでございますか。どちらにしてもご主人様のおかげでございます」
マクミラは笑って答えなかった。
「人間だった頃は人を信じては裏切られる連続で。今はけっして裏切ることのないご主人様の下でこれ以上の幸せはございません」
「やけにもちあげるわね」
「心からの気持ちでございます。思えば私の人生は学生時代から同じことの繰り返しでございました」
「学生時代は何をしていたの。聞いたことなかったわね」
真っ赤な液体の入ったグラスをもてあそびながらマクミラが訊いた。
「国際関係論を専攻しておりました」
「国際関係と言っても、いろいろあるわね」
「国際戦略問題研究所に顔出しして極左団体の研究をしていました」
「億万長者のお坊ちゃまが?」
「当時は、政界進出を考えていました。事業を継いだのは無理矢理押しつけられたからです。父はわたしに才覚があると思っていたようです」
「才覚はあったかもしれない。ただ運はなかったわね」
「運も才能の内でしょう」
「ツキは変わるものよ。でも、お前が極左団体を研究していたとはね。もう少しくわしく説明してくれる」
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