「今は保守派が優勢ね。アンケート調査では、保守派を自認する人が3割強、リベラル派を自認する人が3割弱、中道が3割強と言ったところ。80年代のレーガン革命でアメリカは保守化が進んだし、リベラリズムが輝いていた時代の最後の大統領は60年代のケネディまでさかのぼらなくちゃならない。でもアンケート調査なんてあてにならない。どんな場所で、どんな方法で調査をするかによって、データは変わってくる。たとえば、昼の電話アンケートじゃ、生活に追われている人はつかまるわけがないし、ショッピングモールでアンケートを取ってもどんな客層か想像が付くでしょ。ある程度の余裕があって、車で買い物をすることができる幸せな家庭の人々。だから、アンケートからは生活に追われていたり困窮生活を送っている人は、対象からこぼれ落ちてしまうし、不法移民の人々はアンケートには答えない。もちろん、不法移民を国民に含めるかどうかは疑問の余地があるけど」
「ポイントは何なのですか?」
「ポイントはリベラルな前提条件を持つか、保守的前提条件を持つかによって、異なった政策だけじゃなく異なった国家システムを目指すことになるってこと。アメリカの長期政権は中道化の運命から逃れられずに、どちらかに片寄ることはあまりなかった。でも、どちらの前提条件にも支配的になった時代がある。社会矛盾の変革を指向した革新主義、世界恐慌後のニューディール政策、ジョンソンの『貧困との戦い』などがリベラルな前提条件が支配的になった例で、レーガンの保守革命が保守的な前提条件が支配的だった例よ」
「もしも時代の要請によってリベラリズムと保守主義が交代に出てくるなら、歴史の必然と呼ぶべきではないですか? リベラル派が大きい政府によって福祉を充実させたり少数民族の公民権を保証したり、保守派が小さい政府によって財政均衡を目指したり減税によって人々の購買力や企業の活力を高めるなら、両方が異なった役割を持っていると言えるのでは?」
「そこに気づくとは頭がいい。でも、問題はそれだけじゃないの。おもしろいデータがあるわ。リベラルな政策を指向する民主党支持者と保守的政策を指向する共和支持者の比率を、さっき言ったリベラルを自認する国民3割と保守派を自認する国民3割という比率と比べると、違いがあるの」
「どのくらい違うのですか?」
「ガチガチとゆるやかなを合わせて民主党支持者が約4割強に対して、ガチガチとゆるやかなを合わせて共和党支持者も約4割弱なの。でも20世紀の大統領選を見ると、支持者の少ないはずの共和党の方が優勢に立っている。それは富裕層の投票率よりも貧困層の投票率が劣るためよ。だから、勝とうと思ったら2割強の中間層への訴えかけが欠かせない。中間層を味方につければ、相手に行くはずだった票を減らせるからプラスマイナス倍の差になっていく」
「たしかに、そうですね」
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