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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第6章−2 夢の続き

2018-08-26 12:03:44 | 私が作家・芸術家・芸人

「隙がないのがシリウス、太っちょがアンタレス、腕立つのがコーネリアス、娘は天界時代の姿が分からない。相手はちょうど4人」
 シリウスにはヒビキム、アンタレスにはオーシャム、コーネリアスにはミホシム、眠眠にはサマンザ自身を振り分ける。「さあ、引き籠もりたくなるほどの甘い夢を見せてやろう」
 夢魔たちは夢の中に入り込んでいった。夢魔たちによって与えられる夢こそ、人が心の奥底にしまった欲望だった。
 ヒビキムは鯉の滝登りのタトゥーを宙に投げると、チャックに人狼冒険譚を与えた。彼は、英雄になるべく旅に出かけた。
 どこかに俺を受け入れてくれる場所があるはずさ。
 深い森の中に入っていくと、小さな集落を見つけた。
 巨大な蛇の一族によって苦しむ人々がいた。チャックは狼に変身し、蛇たちと闘いを始めた。レインボースクラッチが決まると、どんなに蛇も一撃で倒された。チャックは、ヒビキムが変身した可憐な村の娘と恋に落ちた。
 チャックは、幸せすぎて俺はまるで夢の中にいるようだと言った。
 娘は、夢なら覚めなければいいのにと言った。
 俺には、何か使命があった気がするが・・・・・
 だが、頼りにしてくれる人たちがいる以上、ここにいようと決心する。

     

 オーシャムは眼帯がない方の目をウィンクすると、ビルに夢の環境ビジネス物語を与えた。世界中から秀才が集まるマサチューセッツ工科大学で、「百年に一人の天才」として知られた彼の長年の夢がかなう瞬間だった。
 やった! ついに暴走しない核融合原子炉を開発したぞ。
「地上の太陽」と呼ばれる核融合原子炉は、希薄なエネルギー密度の太陽と異なり、核融合炉のエネルギー密度が桁違いに高くなるため実現は早くても数十年先と言われてきた。
 通常の原子炉は重いウランやプルトニュームの原子核の分裂反応で作られた中性子を再利用する。核融合エネルギーは、軽い原子である水素やヘリウム、その同位体であるヘリウム3の核融合反応を利用してエネルギーを発生させる。臨界と呼ばれる点火条件が厳しいため、炉が異常をきたすと自然と止まるためにメルトダウンしない。
 しかし、ヘリウム3は地球上にほとんど存在しないため、入手がむずかしい。ビルは、ヘリウム3を月面の岩石から入手する方法を考案した。オーシャムが変身した知的美人の共同研究者と恋するようになった。
 核融合エネルギーは平和利用だけでなく、軍事利用も可能だった。水素爆弾開発者たちは、起爆用の核分裂に原子爆弾を使用してきたが、中性子を原子炉内のリチウム6に当てて三重水素を作り、ベータ崩壊させてヘリウム3を得る方法を探ってきた。彼らがビルの発明を知れば、多額の研究費と引き替えに軍事技術への転用を迫るのは火を見るよりも明らかだった。娘は世界が水爆開発競争の時代に入ることを懸念していた。
 ビル、このまま研究所にとどまって。あなたがいなくなれば、研究室は軍事技術者たちに支配されてしまう・・・・・・
 何か使命があった気がしたが、ここで自分が果たすべき役割の方がずっと大きいと感じた。


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