マクミラが一瞬の内にワイヤー入りの鞭を左右に振ると、右の鞭にナイフがからみとられ左の鞭に銃弾が取り込まれる。いつのまにか両方の鞭に炎が走っている。
「坊やたち、まだまだあまい」マクミラがつぶやくと鞭をさらに一振りする。
燃える炎が二人のストリート・ギャング団リーダーの頬を一撫でする。
アチッ、彼らが思わず声をあげる。
「次は火だるまだよ」
脅しに二人がゾッとしたときだった。
どこからかゴースト・トレーラーが突如として現れた。
引っ越し荷物などを運ぶ「鉄の固まり」のようなトレーラーには普通なら牽引車がついている。このトレーラーには牽引車がなく、どこに進むかわからない頼りなさで当たるのを幸いになぎ倒していく。
停めてあったギャングたちのバイクにトレーラーがぶつかると、激しい音を立ててバイクの車体を引き裂きランプをつぶしてぐるりと180度回転させながらフラフラとさらに進んでいく。
棒立ちになったギャング団数人が巻きこまれる。他の連中もさっきまでの興奮を忘れてあっけにとられている。
チッ、マクミラが舌打ちする。運が悪いね、坊やたち。
ゴースト・トレーラーの後部ドアが開くと次々と悪鬼たちが現れる。
さながらその動きは地獄のバネ仕掛け人形のよう。
ゆっくりと、だが、山のような筋肉を左右にゆすっている。
「久しぶりだな。魔界の大王ダークブリッジ様がお礼参りに来たぞ」相手を退路のないところに追い込んでいたぶることで知られた牛のような姿の悪鬼がまだなれていない人間の言葉で話す。
「魔界の貴公子グリッド様を覚えているか? 相変わらずきれいな顔をしているな。お前に恋いこがれて、もう何千年過ごしたろうか?」とてつもなく醜い顔をした全身が甲羅でおおわれた悪鬼がからむような声で言った。
「ああ、またお前に会えるとは! 今日こそ、その美しい姿を魔界の恐怖ヒードン様がズタズタに引き裂いてやる」自尊心のかたまりで嫉妬しかできない猛禽類の姿をした悪鬼が感に堪えないようにつぶやく。
「お前たち、わたしの前にまた顔出しをするとはいい度胸だね。冥界ではまるで相手にならずに捕まえられたことをお忘れか?」闘いを前にして高ぶりを押さえられないマクミラが続けた。「坊やたち相手で欲求不満になっていたところだ。さあ、久しぶりに思い切り戦うとするか」
「いいのか、そんな強気で? ここにはお前の父親も兄弟もいないのだぞ」ヒードンが答える。
「ザコ相手にはわたし一人でおつりがくるわ」
「ドブ掃除は俺にまかせろ」ダニエルがマクミラを制して言った。
「ダメよ。わたしが一匹、あなたが一匹。一匹だけ残してつるし上げよう」
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