ナオミは、二十歳の誕生日にもかかわらず一人の夜を過ごしていた。
四つの部屋の闘いで、登場人物たちのほとんどは疲れ果ててしまい、皆、彼女のバースデー・パーティどころではなかったのだ。
だいたい、このクソ暑い時期に延々とクリスマスの闘いのエピソードを書くとは、いったいアヴァンの神経はどうなっているんだ、と相変わらず口の悪いナオミだった。あ~あ、第二部「マクミラ篇」では脇役の扱いだったし、最後までこんな感じなのか。ナオミがあきらめかけた時だった。
コンコン。聖ローレンス大学のドームの彼女の部屋がノックされた。
「ナオミ、サプラーイズ!」ドアを開けると、孔明がほほえんでいる。両手に、ケーキ、シャンパン、チキンにポテト、それにどうやら花束らしきものまで持ってきている。
「サプラーイズって、孔明、いったいどうしたの!?」
「どうしたって、お前、今日が誕生日だろう?」
「それはそうだけど。第二部では一度も登場しなかったあなたが・・・何しに来たの?」
「たまにはお前の顔が見たくなってな」
「それはうれしいけど。いったい、今までどこにいたの?」
「ん、それはな・・・」
「言えないの? それじゃ、いったい何をしていたの?」
「ん、それはな・・・」
「じゃあ、これなら答えられる。いったい何を考えてこれまで過ごしてたの?」
「ん、それはな・・・」
「アー、分かった・・・」
「そうだ。その通りだ」
「アヴァンの奴、あなたが登場しないのをよいことに何も設定を考えていなかったってわけね。手抜きか・・・私の誕生日前日に第二部が終わるなんて、どうも都合がいいと思った。久しぶりに孔明に会えるのはうれしいから、まあいっか」
「俺も含めて影のうすかった天界の連中のことを第三部「孔明篇」じゃ書かなくてはいけないと思って、俺を一度登場させておこうと思ったんだろう」
「行き当たりばったりのアヴァンらしいわね。だいたい、第二部の執筆途中、何度書けない書けないと泣き言を言ったのか忘れたのかしら。第三部なんてやめとけばいいのに」
「それが、そうも行かなくなったらしい」
「どういうこと?」
「アルファポリスー電網浮遊都市ー「第4回ファンタジー小説大賞」に参加するとか、はりきっていただろう?」
「たしかに」
「アヴァンの奴、俺の口から言っておいてくれと頼まれたんだが、ウエッブコンテンツには登録したが、エントリーに失敗したらしい」
「なに、それ!?」
「あわてものの奴のことだから許してやってくれ。なんとか投票用のバナーをくれないかと交渉したらしいんだが、もうエントリーが始まってしまったのでなんともしがたいと断られたらしいんだ」
「バカじゃない」
「たしかにバカだ。しょうがないんで、第二部が終わってから休みをもらって冬にでも第三部を書き出して、来年の「第5回ファンタジー小説大賞」に応募するつもりらしい」
「鬼が笑いすぎてへそでお茶を沸かすわ」
「ところで、第三部はどうなるの? 今度はあなたが主人公になるんだから、もうだいたいのことは聞いているんでしょう」
「それは、なあ・・・」
その時、再びドアがノックされた。
「誰だろう? せっかくいい感じだった・・・、ううん、せっかく第三部ではわたしの出番がどうなるか分かるところだったのに」
「お誕生日、おめでとうさまでございます!」
「ミスティラ! 相変わらずKYの女王様みたいなタイミング・・・じゃなくて、よく来てくれたわね」ナオミの顔がヒクヒクいっている。
「マクミラお姉様が、ダニエルさんをほおってニューヨークから離れることはできないので、今年は私だけでも行ってこいとおっしゃられたのでございます。でも、おじゃまだったのでは・・・」
「そ、そんなことないわよ」
「そうだ。飲み物も料理も山ほどあるんだ。今夜は、派手に盛り上がろうじゃないか!」
近づきそうで、近づかない二人にミスティラが参加したパーティは、まだまだ続く・・・・・・
9月5日(月)に、マクミラと仲間たちがどうなったかを語る「マーメイド・サーガ第二部」最後のエピソード「四つの部屋の闘いの後」をアップする予定です。請うご期待!
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闘いの内容に夢中でしたが、確かにクリスマスの時期のお話だったんですね(笑)
アヴァンさん、登場人物にイジられながら、今後も更新頑張ってください♪