(絶対悪!?)
議論をまかせ切りにしていたユピテルとネプチュヌスの顔が青ざめた。
光あるところ、闇がある。
この宇宙は、光と闇のバランスによって成り立っている。
光があるゆえに、闇も自らの陣地を保つことができる。もしも光だけしかなかったならば、誰しも疲れ果ててしまう。陰影こそが、深みとつかの間の休息を実体に与えてくれる。
逆に、もしも闇だけしかなかったならば、誰しも不安の中でじっとしているだけとなる。闇の中でも導く灯りがあれば、夢や希望を示してくれる。
だが、宇宙における絶対悪の存在だけは例外。
すべてが惹き付けられてしまう魅力を持ち、悪を肯定し善を否定することで、この世を闇に向かって突き動かす禁断の存在であった。
(絶対悪の誕生は、魔界にも望ましくないはず。もしも新たな暗黒星団を呼び寄せられたらどうなる? 古き星団の生き残りのお主たちと主導権争いが生まれるぞ)
(その時は、その時のこと。さあ、魔性とトリックスターの連合軍に絶対悪が絡んだゲームをお主たちがどう闘うか、とっくりと楽しませてもらおう)
(魔界がそうした覚悟ならば、それもよかろう。それでは、これで神界と魔界の交渉成立とする)ユピテルが、会議の閉会を宣言した。
(皆の者、これより魔界とのつながりを閉ざす)激しい思念と同時に、再び激しい雷鳴が天界中に響き渡る。(ヤヌスよ、鏡を閉じよ!)
ヤヌスが、うなずくと天界と魔界をつなぐ扉を閉じる呪文を唱え始める。
太古からの約束事
禁断の天界と魔界の扉
再びの呼びかけがなされるまで呼びかけを静かに待つがよい
再びの呼びかけがなされるべき刻まで眠りにつくがよい
天主ユピテル、海主ネプチュヌス、冥主プルートゥの求めにより
今、扉の閉じられんことを我願う
魔界の支配者たちよ
我が願いに応じて
再びヤヌスの鏡の中に姿を隠したまえ
再び神界と魔界の復活と破滅の争いを忘れるために
キィーン!
何か巨大な龍が叫んだような、あるいは超音速の怪鳥が通り過ぎたような音がして、ヤヌスの鏡の表面が最初の輝きを戻して行った。
魔王たちの姿が、あっという間に見えなくなった。
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