竜巻が過ぎ去った上空には、怒りのおさまった龍神が浮かんでいた。
(礼を言わねばならぬようだな)
「礼にはおよばない。逆鱗に触れられた痛みは知っている」
(やはり・・・・・・お主も地上に降りた龍であったか)
「この場は、これでおさめてくれるか?」青龍が話しかける。
(久しぶりに力を使って疲れたわい。また、長い眠りに戻るとしよう)
「ありがたい。もう二度と竜泉を刺激しないと約束しよう」
(老師よ。それだけではない)
「それだけではない?」
(この聖地の結界がゆるむだけの気の乱れが生じておる。おそらく魔界と精神界が短時間つながってしまったのじゃ)
「なんと・・・・・・」
(なぜ魔界と精神界がつながったかはわからぬが、これだけで済むとは思えぬ)
「忠告ありがたくいただいておく」
(さらばじゃ)
龍神は雲中に姿を隠すと、一筋の落雷となって地中に戻ってしまった。
「さあ、屋敷に帰るとするか」人間の姿に戻った孔明たちに青龍が話しかけた。
「じいちゃん、今の話は・・・・・・」
「すべては屋敷に戻ってからじゃ。だが、しばらくは働いてもらうぞ」
「ヘッ?」
「見るがよい。自慢の屋敷がぼろぼろじゃ」
「でも、じいちゃん、この辺りは液状化現象で地盤がぐしゃぐしゃで・・・・・・」
「お兄ちゃ〜ん」
その時、皆が見る方向に孔明の妹、眠眠の姿が現れた。
魔界と精神世界が短時間だがつながってしまった理由は、1994年のクリスマスまでさかのぼる。
精神世界におけるマクミラたちと魔女たちとの闘いが終わりを告げた時、アストロラーベが「時空変容ミラージュの儀式」を閉じる呪文を唱えた。
大いなる時よ、再びその歩みを始めよ
大いなる時よ、しばしの眠りを解き
大いなる時よ、我らを元の世界に戻すがよい
大いなる場よ、再びその動きを始めよ
大いなる場よ、しばしの眠りを解き
大いなる場よ、我らに人間界への帰還を許すがよい
メギス、ライム、リギリヌ、アストロラーベ、スカルラーベ、マクミラ、ミスティラ、そしてすべての神界に所縁あるものたちよ
いざ、我とともに人間界へ戻り行かん!
彼は安心のあまり気づかなかった。
儀式が終わる際、666分間のタイムリミットをコンマ6秒すぎたことに。そのわずかな瞬間、魔界と精神世界を隔てる隙間にするどいかぎ爪がのぞいた。閉じようとする結界が引き裂かれて、3人の魔性と2匹の魔獣が現れた。
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