イエメンを24時間に130回にわたって空爆したとサウジアラビア主導軍が5月9日に発表し た。市民には避難を呼びかけたというが、この連合軍は避難に使われていた空港を爆撃している。サウジアラビアの後ろ盾になっているアメリカ政府は自国民の 救出も拒否、現地にいたアメリカ人を助け出したのはロシアだった。アメリカの傀儡勢力はウクライナでも同じことをしている。弁護士が考えそうな小賢しいア リバイ工作。今回の空爆では国連の高官も国際法に違反するものがあったと語っていた。
サウジアラビアがイエメンに軍事介入してきたのは2009年のことで、この時は空軍と特殊部隊を派遣している。イエメンのアリ・アブドゥラ・サレーハ大統領の政権はフーシ派(アンサール・アラー)と戦闘状態にあり、そのフーシ派を叩くことが目的だった。
サレーハ政権とフーシ派が軍事衝突したのは2004年。その前年、アメリカ政府はネオコン/シオニストが1991年に描いていたプラン通りにイラクを先制攻撃したが、これに抗議するため、フーシ派のメンバーはモスクで反アメリカ、反イスラエルを唱和するようになる。
政府は弾圧に乗り出し、首都のサヌアで800名程度が逮捕されたという。これが切っ掛けで戦闘が始まり、2010年まで続く。つまり、イエメンの内戦はアメリカのイラク侵攻から派生したと言える。
1991年のプランとはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官が語っているもので、ネオコン/シオニストの
ポール・ウォルフォウィッツは国防次官だったこの年、シリア、イラン、イラクを殲滅すると話していたという。そのうちイラクを2003年に破壊、次はシリアとイランということになる。
ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセインを排除すると主張、91年1月にイラクをアメリカ主導の連合軍が攻撃した際、体制を倒さなかったこ とにネオコンは激怒していた。そしてウォルフォウィッツの発言につながるのだが、フセインを排除すると宗派の関係でイラクがイランへ接近することは中東の 専門家なら見通せていたはず。ネオコンは親アメリカ/親イスラエルの傀儡体制を作れると考えたのか、親イラン政権の成立を見通した上でイランを攻撃するつ もりだったのかは不明だ。
シリアとイランの体制を転覆させ、レバノンのヒズボラを倒すための秘密工作が スタートしたと2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが書いている。秘密工作の中心にはアメリカ政府のリ チャード・チェイニー副大統領、ネオコン/シオニストのエリオット・エイブラムズ国家安全保障問題担当次席補佐官やザルメイ・ハリルザド、そしてサウジア ラビアのバンダル・ビン・スルタン国家安全保障会議事務局長がいたという。
バンダルは1983年から2005年まで駐米大使を務め、「バンダル・ブッシュ」と呼ばれるほどブッシュ家と近い関係にある「親米派」。2005年から国家安全保障会議の事務局長を務め、12年から14年にかけては総合情報庁長官を務めた。
サウジアラビアがフーシ派に対する攻撃を始めた2009年には「アラビア半島のアル・カイダ(AQAP)」が創設されている。元々、アル・カイダはアフ ガニスタンでソ連軍と戦わせるためにアメリカが創設した武装勢力の中から登場した。ロビン・クック元英外相も言っているように、
アル・カイダは軍事組織でなく、CIAに雇われて訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル、つまり「データベース」だ。なお、アル・カイダ系の武装集団はスンニ派と見なされているが、スンニ派のフセイン政権はアル・カイダを人権無視で弾圧していた。
イエメンでは2011年の「革命」でサレーハ大統領が辞任し、副大統領だったアブド・ラッボ・マンスール・アル・ハディが2012年2月に新大統領の座 に納まった。任期は2年なので、2104年2月まで。ハディはイエメンに権力の基盤がなく、辞任後のサレーハを脅かすことはないだろうという読みがあった と言われている。つまり、真の意味のハディ派は存在しない。だからこそ、ハディはさっさとサウジアラビアへ逃走したのだろう。フーシ派に武力で対抗してい るのは事実上、AQAPだと言える。
AQAPが名称通りアル・カイダならば、そのスポンサーはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟。このAQAPが思い通りの成果を上がられな いため、今回の空爆になったのだろう。今のところ自らは空爆、地上軍はアル・カイダ/IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、 IEIL、ダーイシュとも表記)といういつものパターンだが、地上戦にサウジアラビア軍が投入されると、戦闘は泥沼化する可能性が高い。空爆に対する報復 攻撃が始まった直後にサウジアラビアとアメリカは停戦を言い始めた理由もその辺にあるのだろう。もっとも、停戦を言いながら攻撃を続けているようだが。
戦闘が長引いた場合、別の問題も生じてくると言われている。サウジアラビアの石油施設で働く労働者の多くがイエメン人のようで、戦況によっては戦乱がサウジアラビアへ飛び火することも考えられるのだ。
ペルシャ湾岸の産油国は戦闘機の購入などでフランスを抱き込もうとしているが、それでは追いつかないだろう。
ネオコンを中心に立てられた三国同盟のプランは結果として中国とロシアを接近させ、ペトロダラーの仕組みを揺るがし、ドルは基軸通貨として地位から陥落 しそうになっている。つまりアメリカ崩壊の危機。シリアでアル・カイダ/ISを、ウクライナでネオ・ナチを訓練し、軍事的に状況を好転させようとしている ようだが、裏目にでる可能性もある。