東芝、複数原発の撤退模索 英会社への出資引き下げ検討、韓国勢に売却も
東芝が、巨額損失の原因となった原発事業で、案件の選別を急いでいる。英国の案件に関し、6割を出資する運営会社への 出資比率を引き下げるほか、東芝本体が海外で初受注した米テキサス州の案件から撤退することも検討している。これ以上の損失を食い止めるため、海外案件の リスクを極力減らし、経営の安定化を最優先する。
東芝グループでは現在、米原発子会社のウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が米国で巨額損失の原因となった4基を建設中で、中国でも4基を着工済み。また、米テキサス州では東芝本体が2基を受注。ほかに英国で3基、インドで6基の受注が有力視されている。
英国の案件をめぐっては、2014年に開発運営会社ニュージェネレーション(ニュージェン)の株式をスペイン電力大手などから約170億円で買収。現在は、6割を東芝、4割を仏電力大手エンジーが出資している。
東芝は、以前からニュージェンへの出資比率を下げる方針を示していたが、水面下で韓国電力公社に売却を働きかけているもようだ。韓国電力公社は、過去に ニュージェンへの出資を目指したことがあり、海外進出に意欲をみせる。ただ、18年に着工の判断が迫るなか、好条件でまとまるかは未知数だ。
一方で、東芝ではテキサス州の案件からは撤退を模索する。同案件は、安全規制の強化や電力価格の低迷で、予定していた 16年度中の稼働が遅れ、着工に至っていない。東芝では今後、事業開発会社への9.3%の出資分についても引き下げを検討していく。このほか巨額損失の原 因となった米国の4基についても、今月から米建設大手ベクテルや日本の総合建設会社のアドバイスを受け始めた。
同社は建設請負からも撤退する方針。WHへの出資比率を現在の約87%から引き下げることも検討中だ。ただ、17日にはIHIから3%分のWH株を買い取り、比率が約90%に高まることが決まったばかりで、今後も再建は難航が予想される。
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■東芝の原発事業縮小策
・海外での原発の建設工事から撤退し、原子炉などの設計や製造、納入に専念
・海外での原発設備の新規受注計画を見直し
・東芝本体が受注した米テキサス州の原発新設計画から撤退検討
・英国で進める原発新設計画の運営会社の保有株式売却を検討
・米原発子会社の保有株式の売却を検討