2014年7月17日木曜日
サウジのバンダルがイラクでのISIL/ISIS侵攻を仕切っている
‘Bandar Bush’ is back calling the shots on ISIL’s advance through Iraq
by Wayne Madsen
「バンダル・ブッシュ」復活、イラクでのISIL侵攻を推進http://www.intrepidreport.com/archives/13495
(アクセス 2014年7月9日)
2014年7月7日
バンダル・ビン・スルタン王子は現在では「イスラム国」または「イスラム・カリフ帝国」と名を変えているイラクとレバントのイスラム国(ISIL)創設の影の親玉だ。去年の4月にサウジ諜報局長の地位を解かれた彼がアブドゥラー国王に助言を与える影響の大きな地位に復帰した。彼の新しい職位名は「国王顧問とその特使」である。
バンダルがサウード家内で優位の復帰をすると同時にアブドゥラー国王が先ごろ副国防大臣の地位を解かれたハーレッド・ビン・バンダル・ビン・アブドゥル・アジズを新サウジ諜報局長に任命した。ハーレドがたった45日勤めた副国防大臣の地位を解雇された後、サウジ諜報局長に任命されるまで2日しかかからなかった。この人事異動は、バグダッドに向かって進撃を続けるISISへのコントロールを改めて推進するにあたり、サウジの国防と諜報の主要高官らが同じ認識を持っていることを保障するためである。
しかし、サウード家はシリアの内戦でISILが活動を始めたときからずっと彼らにとって主要な資金提供者であった。その一方でアル・ヌスラ戦線は主にカタールから資金を得ていた。だが、アル・ヌスラ戦線はISILのライバルなどではなく、イラクの北部と西部に戦力を拡大するISILを支援することを誓約している。
サウジアラビアの実質的な目的は、イラクとシリアを揺るがし、それによってヌーリ・アル・マリキとバッシャール・アル・アサド政権がそれぞれ転覆されて、サウジに恩義のあるスンニ急進派政権が取って代わることだ。
バンダルはシリアのいわゆる「穏健派」反政府勢力ではなくシリア反乱軍の急進的聖戦主義者に武器と資金を供与してきたことは広く知られている。彼はバラク・オバマ大統領とアブドゥラー国王が3月28日にリヤドで会談した後にサウジ諜報局長の地位を退くことを強いられた。
バンダルの職務であったサウジのシリア反乱軍との主要な調整役は内務大臣のモハメッド・ビン・ナイエフ王子に移された。これらの職務は現在ハーレッド王子が行っている。モハメッド王子は米国が後援する自由シリア軍(FSA)へのサウジの支援に働きかけた。自由シリア軍はシリア内戦で2番手の弱い勢力となっている。その人員の多くは追放された元アサド政権の役人であり、イスタンブールのレストランやホテルにいるほうがシリアの前線にいるより居心地がいいのだ。
しかしISILがシリア東部とイラクで成功した後、サウジはISILの主要調整役であったバンダルを復帰させて、このグループのリーダーをサウジのより強固な支配下に置くことにした。
バンダルと聖戦主義テロリストとの繋がりは長期にわたる。バンダルがソチ・オリンピック前にモスクワを訪れた際にはロシアがアサド政権を支援することやめればロシアに高収益が見込める武器取引をすると持ちかけた。バンダルはさらに、もしロシアがこのサウジの提案を拒否するのであればサウジが支援するコーカサス地方のイスラム主義テロリストがソチでの冬季オリンピックでテロ攻撃を自由に開始するであろうとプーチンに述べた。プーチンはバンダルにクレムリンの彼のオフィスから出て行くよう命じたと報告されている。
また、サウジから資金を供与されているチェチェンとダゲスタンのイスラム主義テロリストがウクライナで活動しており、ロシア語を話すウクライナ東部の分離主義者と戦っているという報告もある。
ウクライナでイスラム主義テロリストらがイスラエルの準軍事部隊に参加してキエフ政府の東部ウクライナに対する軍事行動を支援したといういくつかの事例もある。シリアではモサドがISIL部隊と協調してシリア国軍に対する攻撃をゴラン高原の北部地域などで行ったと報告されている。
バンダルの名前は、今でも機密文書になっている28ページのサウジアラビアの9.11攻撃での役割に関する9・11合同議会調査報告書に記載されていると報告されている。この28ページの機密を解除する試みはブレナンとCIAと共にオバマ大統領府からの強い反対を受けた。
元上院ボブ・グラハム(民主党・フロリダ州)はこの報告書が書かれたときに上院諜報委員会 の議長を務めており、この28ページを公開することを提唱していた。グラハムが昨年完全公開を要求するためにホワイトハウスを訪れた際には冷たくあしらわれた、と信頼できる筋がWMR(ウェイン・マドセン・レポート)に語った。グラハムはホワイトハウスの下級職員と会うようにと突き放された。
CIA長官のジョン O.ブレナンはサウジ愛好家で元リヤドのCIA駐在所長である。彼は、私たちの情報源によれば、サウジ政府内でバンダルが重要な地位に復帰するのを背後で推し進めた。千人ほどのアメリカ兵と顧問団がイラクに派遣されたのはマリキ政府が崩壊するのを防ぐのではなく、親サウジ、スンニ派を強力に代表することになるマリキ後の次の政権への移行を支援するためである。
アメリカの軍事要員らがイラクにいるのはまた、バグダッドにある巨大な米大使館施設や石油産業の利権を含む米国がこの国に持つ資産を保護するためである。
バンダルが解雇されたときには、シリアの反乱勢力に占拠された拠点を彼が訪問した際に暗殺された、または負傷したなどの根拠のない様々な報道がなされた。別の報道では、アメリカの政治有力一家に近しい関係から親しみをこめて「バンダル・ブッシュ」と呼ばれている彼が、サウジ家内部の確執によって毒殺され、これはサウード家内のスダリ氏族の長であるバンダルの影響を抹殺することを目的としているとされた。この氏族はトゥルキ王子と元サウジ諜報局長で、アブドゥラー王亡き後には確実に王位を継承するサルマン皇太子も属している。
バンダルがアブドゥラー国王の顧問という顕著な地位に復帰したのは、この地域でのサウジとイスラエルの基本計画を遂行するためだ。リヤド=エルサレム枢軸はイラクの国としての存在は終わるべきだということで同意している。イスラエルのべンヤミン・ネタニヤフ首相はイラク北部が独立したクルディスタンとなることを最近公的に承認した。ISIL軍のイラクへの進攻によって、長い間イラクでのクルド国家樹立に反対してきたトルコは、この案を支持しないのならばクルディスタンがISILの支配下に置かれかねないと考えるようになった。
トルコ政府はまた、非合法であったクルド労働者党(PKK) との交渉を始めた。トルコからはテロリスト団体と見なされていたPKKも今はISILがイラクのクルディスタンを奪取するのに対抗するためのパートナーになる可能性があると見られるようになった。
進攻し続けるISILはイスラエルが西岸の支配を続けなくてはいけない理由について強力な議論を可能にした。ISILが「イラクとレバントのイスラム国」からより無限定な「イスラム国」に変え、最近のISILのリーダーで自称「カリフ」のアブ・バカー・アル・バグダディの公式声明からしても、ISILのイスラム・カリフ国計画はヨルダン、レバノン、パレスチナ、そしてそれよりも広い地域を含むと見られている。バグダディは中央アフリカ共和国からミャンマーまでがイスラム反乱を起こすことを呼びかけている。
ネタニヤフにすれば、ISILの攻撃は彼に政治的な武器を与えたことになる。それは西岸の支配を続ける為だけでなく新しくできたパレスチナのファタハとハマスの統一政府を妨害する上でもだ。
バンダルの目的はシリアとイラクの現政府を抹殺してイランからこの地域で唯二つの同盟国を奪い去ることだ。急進的なスンニ・カリフがバグダッドを支配することでISILはイランとの国境を越えて、イランの石油産業の中心地であるフーゼスタン地方でイランのアラブ少数派の反乱を起こす構えだ。
ISILがイラク南部の油田とイラク・クルディスタンと国境を接する油田の一部を支配下に置き、サウジの代理がイランの石油地方を乗っ取ることによってサウジアラビアは中東のほとんどの石油埋蔵量を効果的に支配することができることになる。リヤドへのこの政治的経済的勢力の移行は、カタールとそのムスリム同胞団と緊密な政府をサウジと地域の覇権を真剣に競う相手という地位から追い落とすことにもなる。
ワシントンでバンダル側についているのはブレナンだけではなくジョン・マッケイン上院議員(共和党・アリゾナ)もいる。彼は2月にミュンヘン安全保障会議に出席した際に「サウジとバンダル王子を神に感謝」と述べた。マッケインはその前にCNNで述べてた似たような発言を繰り返した。2012年にマッケインは極秘でトルコからシリアに渡りイスラム急進派と写真に納まっている。これらの急進派のなかの数人は現在ISILと共にイラクで戦っている。
**ウェイン・マドセンはワシントンを本拠とする調査ジャーナリスト。