今回のシリア問題で、三名の方の視点をご紹介します。
①増田俊男氏
増田俊男氏プロフィール
②馬渕睦夫さん
シリアで化学兵器使用 北朝鮮・米中貿易で鮮明になった事
③田中宇(さかい)さんの国際ニュース解説
(ラエリアンムーブメントさんより転載)
邪魔をする勢力がしつこくつきまとい絡みついてくるので、トランプは自分のやりたい方向に直線的に前に進めない。回り道をしながらやらざるを得ない。
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◆シリアで「北朝鮮方式」を試みるトランプ
【2018年4月14日】
軍産複合体は、ロシアと戦争したくない。
米露戦争は人類破滅の核戦争になる。
とろ火の米露対立を長く維持し、米国の世界戦略を牛耳り続けるのが軍産の目標だ。
トランプはこれを逆手に取り、
軍産が起こした濡れ衣の化学兵器攻撃劇を機に、本気でロシアと戦争しそうな感じで突っ走って軍産をビビらせ、
軍産に「ロシアと戦争しないでくれ」と言わせ、
それに押される形で、米軍のシリア撤退もしくは米露協調を実現
しようとしている。
トランプは北朝鮮に関しても過激な「先制攻撃」を言い続けて
軍産を「反戦」に追いやり、米朝会談の開催につなげた。
トランプは今回、シリアで「北朝鮮方式」を試みているわけだ。
以上、三名の専門家の視点でした。
↓こちらは昨年1月に行われたシリア・アサド大統領へのインタビューです。
ココでいうアメリカとは、トランプ政権以前のアメリカです。
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====海外で恥をかく日本のジャーナリスト ====
シリア・ダマスカスに於いて、2017年1月17日
■シリア・アサド大統領、単独インタビュー(全録)
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(以下動画と文字おこし)
●質問
以前のインタビューでは、大統領はワシントンDCのロビー団体に言及したが、
ロビー団体が政策変更の障害になっていると思いますか?
●シリア・アサド大統領
主要メディアと、さまざまな組織・ロビー団体が1つの組み合わせになっています。
彼らは変化は必要ないと考えていて、
ジョージ・ブッシュ政権補足の2000年以来、
17年続いた【米の破壊的な政策に利害関係かあるから】です。
直接的にせよ、代理戦争にせよ、
アメリカは戦争ばかり起こしてきました。
そして、さまざまな企業やロビー団体、メデイアが利害関係を持っているのです。
ほとんどの場合、経済的な利害関係でしょう。
ですから、新大統領の政策のうち、テロとの戦い、他国の主権の尊重や
ロシアや中国などとの関係改善を通じた国際関係の緊張緩和など、
彼らがことごとく『邪魔をする』のは明らかです。
●質問
イスラム国との戦いの過程で、
トルコやクルド、アメリカと協力する考えはありますか?
●シリア・アサド大統領
先ずはじめに
率直に見れば
『イスラム国』はアメリカの管理下で生まれた。
2006年「ISIS」を名乗る前の「IS」は
イラク国内だけに存在していました。
シリアで紛争が始まるとシリアとイラクの「イスラム国」を名乗り
後にトルコは「イスラム国」を支援しました。
「イスラム国」は石油を輸出し、資金を得て
戦闘員勧誘にシリアの油田を使ったが、
トルコはこの石油の密輸に関わっていました。
エルドアン大統領自身も「イスラム国」に関与し、共犯関係にあります。
ですから
トルコやアメリカが「イスラム国」との戦いに参加するとは期待できない。
あからさまな例としては、数週間間、アメリカのドローンによる監視の中、
「イスラム国」がパルミラを再び制圧した事が挙げられます。
彼らは砂漠の中を抜けて来てパルミラを占領したのです。
私達が話しをしている今日も、「イスラム国」は
シリア東部デリゾールを攻撃しています。
アメリカ人は「イスラム国」を止める為、何もしない。
ココはいわゆる有志連合が一年半前活動してきた地域です。
彼らは何も成し遂げていない。
真剣ではいからです。
トルコのエルドアン大統領はムスリム同胞団ですが
彼は本能的、先天的に
「イスラム国」やアルカイダに同情的で
彼らは同じ思想を持っていて、
エルドアン大統領は彼らから離れる事が出来ないのです。
「イスラム国」やヌスラ戦線と戦っていると『見せる』為
エルドアン大統領はいくつか工作を行っていますが
実際は彼は日々それらの組織を支援しています。
彼の支援なしに、それらの組織は生き残れないのです。
●質問
アレッポなどでシリア軍とロシア軍は
『住宅街や病院を空爆』と批判されている
そうした人的な被害はアレッポ制圧の為、避けられなかったのか?
●シリア・アサド大統領
爆撃や戦争犯罪などでロシアやシリアを非難しているのは、
米・英・仏・トルコ・カタール・サウジアラビアなどです。
メディアや政治、武器、資金、物流を通じ、
テロリストを支援した人々には、
シリアの一般市民のために叫ぶ権利はありません。
【彼ら自身が罪のないシリア市民が過去6年間、殺されてきた原因】
だからです。
それが第一です。
第二に、
憲法や法律、シリア国民に対する
道徳的な責務からくる政府の役割は、
国民をテロリストから解放することです。
国の一部がテロリストの支配下にあって、人々が殺され、全てが破壊され、
ワッハーブ主義という憎悪に満ちた思想を人々に押し付ける中、
その国の政府が何もせず、ただ見ているのが許されると思いますか?
死傷者について話をするなら、
全ての戦争に死傷者がつきもので、全ての戦争が悪い戦争です。
良い戦争というのはない、自明のことです。
もし、テロと戦うため戦争すれば、残念ながら、死傷者が出ます。
我々は死傷者をなくすため最大限のことをしました。
しかし、一般市民のためと叫ぶ人たちは、
シリアやロシアが一般市民を殺しているとの
一片の証拠でも提出しましたか?
もう1つの問題は
道徳的に政府が自国民を殺すことがありえますか?
もし、我々が自国民を殺していたら、
6年間、政府として、軍として、大統領として持ちこたえられますか?
論理的ではないし、現実的でもない。
【我々がここにいるのは、国民の支持があるから】です。
しかし、結局のところ、必ず、死傷者が出ます。
この戦争をできるだけ早く終わらせたいと願っています。
それがシリアの人を救う唯一の道です。
●質問
シリア軍は塩素ガス爆弾を使用した疑いが指摘されています。
その事は否定しますか?
●シリア・アサド大統領
化学兵器の事をおっしゃっているのだと思います。
化学兵器というのは数時間で何千人を殺害します。
そのようなことはこの戦争が始まって以来、シリアでは起きていません。
最も重要なことは
道徳的に政府として、そのようなことはしません。
申し上げたように、
自国民を殺したり、大量破壊兵器を自国民に使うというのは不可能です。
これはさらに重要ですが、
2013年に我々は、化学兵器を禁止する条約に署名し、
それ以来、我々は化学兵器を放棄し、すでに保有していません。
実際には
テロリスト側がそのような兵器を使っている。
最初は2013年でした。
2013年春には国連に、調査団を派遣するように要請しましたが、
【アメリカが我々の要求を妨害した】のです。
アメリカは【調査団がシリアに派遣されれば、
テロリスト側が塩素ガスをシリア軍兵士に使ったとの証拠が見つかるとわかっていた。】
私はシリアに関する西側の『ストーリー』を反映する指摘は完全に否定します。
それは【シリア政府やシリア軍を悪者に見せるための手段】の一部です。
●質問
小さい子どもを含む何百人もの難民や国内避難民がいます。
何十万人もの死者が出ています。
大統領としての責任をどう考えますか?
●シリア・アサド大統領
もちろん難民の事を言えば、それは悲劇です。
特に子供達…、小さい子供達や若者、彼らは何の罪もありません。
今回の戦争とは無関係です。
どこに所属するかに関わらず、実際子供達には政治的党派制もない。
何の罪もないのに、誰よりも代償を払わされている。
貴方の言う悲劇は、我々が日々経験している事です。
毎日こうした感情と共に生きているからこそ、
我々は政府当局として、問題の原因であるテロリストらを排除し、
シリアに平和と安定を取り戻す為全力を尽くそうとしているのです。
それこそ、シリア国民が大統領に問う事なのです。
戦乱で苦しんだ全シリア人に同情します。
でもシリア国民が問うのは、
私がどう思っているかではなりません。
私が何をするか、なのです。
我々がいつ
あのテロリストらを駆逐するか?!
なのです。
最も重要で欧米や国際社会の多くが触れない面があります。
難民問題の一部はテロリストらに関係するだけでなく
欧米やその同盟国によってシリア国民に科されている経済制裁も関係している。
この経済制裁は政府に対して効力を発揮したのではありません。
シリア市民一人一人の生活に影響を与えたのです。
多くの国民が国を離れたのは
テロリストらの脅威があるからだけでなく、
普通の暮らしに必要な基本的なものを手にする事が出来ないからでもあります。
食べ物、教育、医療、何でももう手に入らない。
だからシリアを出て、どこか別の場所で誰もが求める最小限の暮らしをしている。
●質問
和平プロセスの中で、それが和解に資すると判断した場合
辞任も選択肢として考えますか?
●シリア・アサド大統領
大統領の去就は国民全体の問題です。
一人一人の国民に関係します。
シリアでは大統領はシリア国民から直接、選挙で選ばれているからです。
選挙の権利でも反対派の権利でもありません。
シリア人一人一人の権利です。
なので大統領の去就を決められるのは投票箱だけです。
大統領に辞めて欲しい人は投票で「彼はいらない」と意思表示すれば良い。
世界中どこでも、これが民主主義というものです。
これは反政府派や外国と話し合う事ではありません。
大統領の去就は国民全体の問題で、憲法とも関係する事です。
選挙、或いは任期満了前の選挙
ーー現在検討されていませんがーー
それをやって初めて私の去就について語れるのです。
これは私の問題ではないのです。
大統領として私は、
困難の時期には国を助けねばなりません。
逃げ出したり
「私は去る。国民はそれぞれ自分で何とかして」
と言うのではなく、
そんな事は解決にはなりません。
困難の時期には、大統領はかじ取りをし、危機に対処すべきです。
危機が終われば、大統領は続けたいとか辞めたいとか言ってもいい。
そのとき、シリア国民らが大統領に、続けろ あるいは 辞めろ と言うでしょう。
●質問
和平、シリア再建について
日本にどんな役割を期待しますか?
●シリア・アサド大統領
日本からの客人に対して、率直に申し上げましょう。
何十年も前に、国交を持って以来、
日本はシリアを含むさまざまな国の発展に
インフラ支援などの分野で、とても重要な役割を果たしてきました。
日本は中東地域におけるさまざまな問題で公平さを保ってきました。
日本は常に国際法を重視してきたが、
今回のシリアの危機の初期に、
日本は初めてこうした慣例を破り、シリアの大統領は辞任すべきと言った。
これは日本の人々の価値観・倫理観に基づいたものだったか?
絶対に違います。
日本の市民がどれだけ道徳を重視する人々か、みんな知っています。
これは国際法にのっとっているのか?
それも違います。
我々は主権国家であり、
誰が辞めて、誰が残るべきなどと言う権利は世界中の誰にもない。
残念ながら、【欧米社会と歩調を合わせた】ものでした。
日本はシリアの経済制裁に加わりました。
日本はかつてシリアの人々を支援してくれた。
シリアへの禁輸措置は、
日本の人々の利益や価値観、日本の法律や憲法と関係するでしょうか?
私はそう思いません。
日本はシリア大使館を閉じ、シリアの現状を見ず、
どう貢献するのか?
政治の分野において、日本は
シリアと関係を絶った多くの欧米と同様に状況が見えていない。
だから、日本は何の役割も果たせない。
何が起きているのか知らないのだから。
日本が得ている欧米諸国からの情報は、
我々からすれば、ばかげたものです。
シリア再建と言うが、
制裁を科しながら、再建を語ることはできません。
一方の手で食べ物を与え、もう一方の手で取り上げるようなものです
つまり、これは日本の政治の問題で、
日本は国際法に立ち返らなければなりません。
我々は主権国家で、日本は常にシリアを尊重していました。
世界の中で日本を際立たせた
その立場に日本が戻ることを期待します。
それでこそ、日本は和平やシリア復興で重要な役割を果たし
人々を支援する事が出来るでしょう。
殆どの難民は独・仏などで『歓迎します』と言って欲しいわけでは無いんです。
難民達は自分の国に帰りたい。
行った先の国で支援して欲しいのではなく
シリアで支援して欲しいのです。
これこそ我々が考える今後の日本の役割です。
我々が過去数十年、知っていた姿に日本が戻ることを期待しています。
(略)
●質問
日本人ジャーナリスト安田純平氏、私の友人でとても能力のある人ですが
2015年6月からシリアで拘束されたままです。
彼の所在や置かれている状況について何か情報はありませんか?
●シリア・アサド大統領
今のところありません、彼について何の情報も持ち合わせていません。
気の毒に思いますし、我々シリア人は彼の家族の心痛をお察しします。
この戦争で沢山のシリア人も行方不明になりました。
彼の家族の気持ちを理解し、気の毒に思います。
もし我々が何か情報を持っていたら、貴方にお伝えしたことでしょう。
(星氏 彼はヌスラ戦線に捕らわれているのです)
彼の情報を得るのに役立つのはトルコだと思います。
トルコはヌスラの監視役ですから。
トルコは情報機関や政府が、ヌスラの全ての情報を持っている筈です。
●質問
日本政府から(この件で)シリア政府にコンタクトは?
●シリア・アサド大統領
残念ながらありません。
日本の市民であるこのジャーナリストの件も含めて
日本政府とシリア政府の間には一切のコンタクトがありません。
●質問
日本はアメリカ主導の連合の一員だと思いますか?
●シリア・アサド大統領
シリアについてですか?
(アメリカを中心とした)その連合が何かを成し遂げたでしょうか?
何も成し遂げていません。
(過激派組織)「イスラム国」は、
(連合の)空爆開始後、勢力を拡大してきた。
率直に言って、この空爆は、
”外づらだけの空爆”でした。
2015年9月ロシアの「イスラム国」への軍事行動で初めて「イスラム国」勢力は縮小し始めた。
(アメリカ主導の)あの連合は、何も成し遂げていません。
「イスラム国」と戦っていたシリア軍の兵士を殺害し、
シリア独立以来、70年間、築き上げたシリア人のインフラを破壊しました。
油田、学校、橋、製油所・・・何もかもです。
これが(アメリカ主導の)あの連合が、達成した唯一のこと。残念ながら。
●質問
シリアの復興にどれくらい時間がかかると思うか?
タイムテーブルは?
●シリア・アサド大統領
この危機が終わる前から 我々は(再建を)始めています。
先ずはダマスカス郊外から、そしてアレッポや他の街でも
破壊された郊外を現代的なものに建て替える形で再建する計画です。
この危機が終わるのを待つことはしません。
直ぐに始められます。
シリアの人達は国を再建する決意を持っています。
我々がシリアを造ったのです。外国人が造ったのではありません。
シリアの技術が、労働者が、シリアの資源、物資を使い
友好国の技術面でなく、資金面の支援を得て造ったのです。
我々にはシリアを再建する能力があります。
資金も沢山必要で、時間もかかる。
限られた財力の範囲内であっても、
シリア一人一人が家を建ててゆくでしょう。
在外シリア人、難民で余裕のある人は帰国したがっています。
友好国のロシア・中国・イランも助けてくれます。
他にも多くの国がシリア再建の協議を始めていて
資金面でも支援が行われるでしょう。
シリア再建のための材料はたくさんあるのです。
時間が問題なのではない。
再建・復興は時間がかかるもの
最も大切なのは、国を再建する能力があるかどうか
これについては心配していません。
憂慮するのは、
何年も「イスラム国」やヌスラ戦線の支配下に置かれた人の心をどう再建するかです。
彼らの心は、憎しみに満ちたワッハーブ派の思考を植え付けられ、汚染されています。
彼らは死や殺人を見てきました。
子どもたちが罪のない人々を殺したこともあります。
どうやって、こうした心を再建し、元の状態に戻すことができるでしょう?
これは危機が終わった後の大きな問題になってきます。