2019年10月 4日 (金)
ジョシュア・ウォン、フアン・グアイド 新世代の親欧米「聖人」
2019年9月29日
Andre Vltchek
New Eastern Outlook
「親欧米派の英雄」と「聖人」の新世代は、明らかに世界を感動させ損ねている。フアン・グアイドとジョシュア・ウォンは、確実に、マザー・テレサがそうだったと同じぐらい右翼だが、それほど「本当らしくは見えない」。
大昔、私はインド、カルカッタのマザー・テレサが活動していた場所に行った。カトリック教会と欧米宣伝機構によれば、彼女は貧しい人たちを助けていた。
彼女を直接知っていた人々に尋ねると、彼女は短気で、意地悪で、執念深い人だったと言った。彼女を公然と批判すれば世界中で激しく激怒されるのだから、もちろん内密の発言だ。
マザー・テレサ最大の批判者の一人は、率直に、公然と彼女について書いたイギリス系アメリカ人評論家クリストファー・エリック・ヒッチンスだった。
「これは、金持ちには贖宥状を売りながら、貧しい人たちには業火の苦しみと自制を説き聞かせた、中世教会の堕落を思い出させる。[マザー・テレサ]は貧しい人々の友人ではなかった。彼女は貧困の友人だった。彼女は苦しみは神からの贈り物だと言った。彼女は貧困に対する唯一の既知の治療法、女性の社会的地位の向上と、家畜のように強制的に子供生まされることからの解放に反対して人生を過ごした。」
反共産主義で、強烈なセルビア嫌いのマザー・テレサは、この情報は魔法のように記録から消えているが、ベオグラードに爆弾を投下するようビル・クリントンに頼んだと言われている。
***
欧米の宣伝機構は、常に「悪者」を産み出す。ソ連共産党、中国共産党、中南米の反帝国主義者、アフリカやアジアの独立志向の指導者や中東の愛国者。
それは同時に「英雄」を作り出す。宗教的準聖人、「自由を愛する反体制派指導者」「国民に大切にされている慈悲深い君主」、親欧米派(それゆえ「民主的な」)大統領。
全く驚異的なことに、これらの輝かしい人々全員、まさにロンドンやパリやワシントンが彼らに期待することを行い、言っている。彼らは欧米マスメディアや国民を感動させそこなうことは決してない。彼らはほとんどどんな大失敗もしない。まるで何か見えざる手が脚本を書いているかのようだ。
何百人もそういう連中がいるが、最も目立つ連中は世界中で知られている。ごく一例を挙げよう。ダライ・ラマ、マザー・テレサ、ヴァーツラフ・ハヴェル、ヨハネ・パウロ2世、タイのプミポン国王。リストは延々続く。
主要「聖人」のほとんど全員、欧米政権に作り出された冷戦戦士だった。全員が欧米帝国主義と新植民地主義に密接に結びついていた。全て簡単に暴露して、信用失墜させられるはずなのだが、またしても「驚異的に」なのだ。それは、現地の従僕や、欧米の主要宣伝屋との直接対決を意味するので、ほとんど誰もあえて、そうしない。
***
今、新たなアイドルが登場しつつある。
連中は前任者と同じぐらいうまく作られていない。過去の「聖人」は宣伝屋の傑作だった。彼らはイデオロギー的に、ほとんど「無敵」だった。
新アイドルは、透けて見える安物の複製であることが多い。
最新製品の二つが香港のジョシュア・ウォンとベネズエラのフアン・グアイドだ。二人とも若く、自己中心的で、攻撃的で、全く臆面もない。二人とも、最近は、一体何が「政権交代」と定義されるかという技術を、帝国に仕込まれている。
一人は、欧米で「民主化運動の指導者」と描写され、もう一人は自称大統領だ。
二人とも、大衆が信用できると思う場合に限って、信用できるのだ。もし大衆がそう思わなければ、連中の「論理」と狙いの誤りを見つけるのは容易だ。連中のプログラムと「プログラマー」を笑い飛ばすのは、実際簡単だ。
香港「民主化運動指導者」ジョシュア・ウォンは、グローバル政治を何も理解しておらず、いかなる深遠な哲学的目標もない、明らかに欧米が植えつけた「自撮り世代」なのだ。九龍の私立キリスト教学校で教育を受けた福音主義狂信者の彼は「教会グループでの活動を通して、組織化と演説の技能を身につけた」。2014年、最初の「抗議行動」(雨傘運動)時、わずか17歳だった。だがこの若い混乱した子供はアメリカの反中国戦士レーダーに素早く拾い上げられ、2018年「政治改革をもたらし、中国・イギリス共同声明で香港に保証された自治と自由を守る平和的努力」に対しノーベル平和賞にノミネートされた。
その時以来、もし実行されれば(まさに「一国二制度」の取り決めの下、いまだ適用されている古いイギリス法のおかげで、彼ら蹴落とすことができない)腐敗したターボ資本主義エリートによる支配の下、既に遥かに中国本土から遅れている都市香港の人々に、更に損害を与えるはずの奇異な政治概念を促進しながら、彼は中華人民共和国を中傷し、欧米の首都から首都へと渡り歩いている。
「カラー革命家」ウォン(かつての彼の象徴は、実際は傘だった)は、2019年9月、ドイツの首都ベルリンで、信用を失った「ホワイト・ヘルメット」と一緒に写真に写っていた。欧米が(シリア内に)植えつけたもう一つのもの、ホワイト・ヘルメットの一団は、欧米の資金援助で、中東で活動しているジハード部隊と密接に協力している傭兵の一群とされている。ホワイト・ヘルメットも、ある時点で、ノーベル平和賞にノミネートされたことも触れる価値がある。
それに加えて、ジョシュア・ウォンは、アメリカの香港領事館職員たちと一緒の写真も撮られていた。それは「抗議行動参加者」が、アメリカが彼らの都市を中国から「解放する」よう要求するデモを、このアメリカ在外公館にした後、暴れ回ったわずか数週間前のことだ。言うまでもなくこの行動によって、彼らは、事実上反逆罪を犯したのだ。
ジョシュア・ウォンと、彼を奉じる黒マスク暴徒に、欧米マスコミが、どれほど支援し、称賛さえするかにかかわらず、大多数の香港の人々は、明らかに北京を支持しており、実際、公共財を破壊し、中国本土や、その国旗への敬意を表する人々を無差別に打ちすえる暴徒を恐れている。
洗脳され、ひどく条件付けされたウォンは、独善と宗教的熱狂に近いものに酔いしれ、ベルリンで、こう宣言した。
「もし世界が新冷戦なのであれば、香港は新しいベルリンだ。」
ドイツ滞在中、更に進んで、彼は「主席ではなく皇帝」だと言い、「自由世界」に「我々とともに、中国独裁政権に対抗する立場に立つ」よう促し、中国の習近平主席を侮辱した。しかも、中国が、破壊的で、反逆罪的な抗議行動参加者に対して、大きな抑制を、フランスや欧米の属国インドネシアよりずっと大きい抑制を示している中でだ。
ウォンが率いる香港抗議行動参加者は、公共財を破壊し、中国人愛国者を打擲し、時折香港飲料水スプレーをかけられ、欧米メディアに殉教聖人として扱われているのだ!
***
ベネズエラのフアン・グアイドは、自分が大統領だと宣言して初めて、ベネズエラ国民に知られるようになった。彼は誰にも選出されていない。彼は匿名の少数右翼エリート以外の、いかなる本格的な団体にも支持されていない。
だが彼は、少なくとも、社会主義のニコラス・マドゥロ大統領を追い出し、誰か退行的で、大企業擁護派で、反逆罪的な独裁者を王座に据える決意が固い、アメリカやヨーロッパ幹部政治家の間では、欧米の新しい「聖人」となったのだ。
大多数のベネズエラ国民にとって、グアイドが、どれほど滑稽に、大馬鹿のようにさえ見えようとも、状況が、いかに怪物のように、あらゆる国際法に違反しようとも、欧米(と、多くの中南米諸国の親欧米エリート)はグアイドを世界に強引に押しつけている。首都のカラカスでも、地方でも彼の子供じみた従順な微笑みが出没している。
彼がコロンビア麻薬カルテルのボスと一緒に写真を撮っていたのを誰が気にかけよう。左翼政府に対する戦争を行う際には、常に中南米麻酔マフィアが欧米に利用されてきた。ニカラグアとコントラを想起願いたい。
誰が、何億すでに承認された資金の他に、最近、グアイドが、政権転覆のため、新たに5200万ドル受け取ったことを誰が気にかけよう。最近の資金は「開発援助」の名目の下で、堂々と米国国際開発庁USAIDから来た。
彼が社会主義と国際主義を憎む限り、彼は欧米の英雄で聖人なのだ!
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インターネット時代、追跡は容易ではないが、不可能とはほど遠い。
今、欧米に作り出される「聖人」は、昔より遥かに高い精度で精査が可能だ。そうならない場合は、欧米大衆(と属国大衆)が関係したいと望まないからに過ぎない。
ジョシュア・ウォンやフアン・グアイドを支持しているベルリンやパリやニューヨークの人々は、無知ゆえに支持しているわけではない。一部の人はそうかも知れないが、大部分は確実にそうではない。彼らは中国に対する民族的優越感から、愛国的な中南米の社会主義に対する悪意から支持しているのだ。以上、終わりだ。議論では彼らの心を変えるよう説得できまい。彼らは彼らに合わない議論には耳をふさぐ。彼らは知りたいと望んでいない。彼らは現状を欲しているのだ。
中国がどのように進歩しているのか、国民生活をどれだけ改善しているのか連中は気にしない。連中は「民主主義」が、いくつかの欧米の複数政党政治茶番ではなく、国民による支配を意味するものであるのを気にしない。連中は異なる文化に敬意を持たない。
大陸中いたる所で勝利しているベネズエラ風社会主義は、連中の利益にはならない。
北京に救われる腐敗しつつある香港は、彼らの最悪のイデオロギー的悪夢だ。
だから、ある意味、逆説的に、ジョシュア・ウォンは正しい。香港は新冷戦のベルリンになりつつある。だが北京やモスクワのおかげでではなく、彼の様な反逆罪幹部のおかげで。
世界のあらゆる場所で欧米に作り出された「聖人」は、その国々と人類に大きな損害を与えている。
今日に至るまで、彼らは依然そうしている。
だが彼らがどこにいようとも、我々は彼らを暴露する。
ウォンよ、あなたは、自分の国がアメリカに攻撃され、爆弾を投下されるのを望んでいる。あなたは、自分の都市が、イギリスに再び支配されるのを望んでいる。あなたは外国の敵対的権力から命令を受けている。あなたは中国と欧米を対立に向かって押しやっている。あなたの手は血にまみれており、あなたは阻止されるべきなのだ。活動中のあなた方の連中を私は見た! 私は、視覚的にも、文章でも、あなたの破壊行為を記録した。
フアン・グアイドよ、あなたは自分の美しい国を、数十年も数世紀も植民地化し、略奪してきた政権に売っているのだ。あなたには羞恥心が全く残っていないだけではない。あなたは自分の国の人々と南米大陸の両方を裏切っているのだ!
私は、聖人には常にうさんくさいものを見いだす。
だが、新しい、オーダーメードの偽聖人は、並外れて最悪だ!
Andre Vltchekは哲学者、小説家、映画製作者で調査ジャーナリスト。彼は Vltchek’s World in Word and Imagesの創作者で、China and Ecological Civilizationを含め、多くの本を書いている作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/09/29/juan-guaido-joshua-wong-new-generation-of-pro-western-saints/
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2019年10月 3日 (木)
サウジアラビア国内でのフーシ派による破壊的攻撃でサウジアラビア三旅団壊滅
Federico Pieraccini
2019年9月30日
Strategic Culture Foundation
今まで多くの人々が、フーシ派は洗練されない寄せ集め勢力だと信じるよう仕向けられてきたのかもしれない。サウジアラビア石油プラントに対する無人飛行機とミサイル攻撃を見て、多くの人々は、アラムコの市場価格をつり上げるため、リヤドが仕組んだ偽旗攻撃だと断言したかもしれない。そうであったのか、あるいは、イランや、イスラエルに実行された事業だったと。9月28日土曜、フーシ派は、私自身や多くの人々が何カ月も書いてきたことを裏付けて、こうした憶測を粉砕した。つまり、イエメン軍の従来の能力とあいまったフーシ派の非対称戦術が、ムハンマド・ビン・サルマーンのサウジアラビア王国を屈服させられるということだ。
イエメン軍のミサイル部隊が極めて複雑な攻撃ができるのは、サウド家独裁に反対する王国内のシーア派住民に提供される偵察情報のおかげなのは確実だ。サウジアラビア内のフーシ派支持者は、目標識別を支援し、プラントの内部を偵察し、最も脆弱で、影響力が大きな場所を見つけ出し、この諜報情報を、フーシ派とイエメン軍に伝えたのだ。イエメン軍は、自前の兵器を使って、サウジアラビアの原油採掘、加工プラントを大幅に劣化させたのだ。壊滅的攻撃は石油生産を半減させ、サウジアラビアがイエメンで行っている大量虐殺を止めなければ、更に他の標的を攻撃すると脅したのだ。
29日土曜日、フーシ派とイエメン軍は、イエメン国境内から始めた三日間に及ぶ信じ難い攻撃を行った。この作戦には、何カ月もの諜報活動と、作戦計画があったに違いない。それは彼らがアラムコ石油施設に行ったものより遥かに複雑な攻撃だった。最初の報道では、サウジアラビアが率いる連合の部隊が脆弱な場所に誘い込まれ、それから、サウジアラビア領内での素早い挟み撃ち作戦で、フーシ派がナジュラーン市と周辺を包囲し、無数の戦闘車両同様、多数の高官を含め、人数で何千人も上回るサウジアラビアの三旅団を出し抜いたことを示している。この出来事は全てイランから遥か離れた場所で起きたので、アメリカもマイク・ポンペオもイスラエルもサウジアラビアは、イランのせいにすることができない逆転の切り札だ。
この大規模作戦は、まずジーザーン空港を標的にしたイエメンのロケット砲撃で始まり、10機のミサイルが、包囲された部隊への航空掩護を含め、空港に/からの、あらゆる動きを麻痺させた。フーシ派は、アパッチ・ヘリコプターに標的を定めた主要作戦で、リヤドのキング・ハーリド国際空港も攻撃し、ヘリコプターをその地域から去るよう強いた。近くの軍事基地も標的にされ、あらゆる増援が阻止され、指揮系統が混乱させられた。これで、サウジアラビア部隊に混乱の中での撤退を強いた。フーシ派が示した画像は、ナジラン市近い谷の真ん中の道路で、多数のサウジアラビア装甲車両が、フーシ派の重火器と軽火器と携行式ロケット弾で両側から攻撃され、逃げようとする状態が写っている。この映像による総くずれの確認で、捕虜や犠牲者の数も見ることができる。画像は、イエメン兵の監視のもと、捕虜収容所に向かって歩くサウジアラビア捕虜の行列を映している。これは驚くべき画像だ。世界三番目に大きな兵器購入国サウジアラビアの軍が、世界でも圧倒的最貧国の一つに打ちのめされているのだ。数が全てを物語る。フーシ派が、サウジアラビア領土の350キロ以上を支配することができたのだ。サウジアラビアの軍事予算が、年間ほぼ900億ドルであること考えれば、この功績は一層驚くべきものだ。
フーシ派は、サウジアラビアが彼らの包囲された兵士を支援すべく、航空や他の手段で彼らの兵隊を掩護するのを阻止するため、ドローンやミサイルや防空システムや電子戦を駆使した。サウジアラビア兵士の証言が、彼らを救助する取り組みは及び腰で、ほとんど効果がなかったことを示唆している。サウジアラビア人戦争捕虜は、自分たちを敵の餌食にしたと言って、自軍指導部を非難している。
イエメン軍とフーシ派は、わずか10日間以内に、アメリカ防衛システムの信頼性と、サウジアラビア軍の両方に衝撃的打撃を与えることができたのだ。彼らは当面の目的に相応しい創造的な方法を使うことで、これを実現したのだ。
彼らは、潜入者や地元協力者の支援により、最大の影響と損害のためには石油設備のどこに打撃を与えるべきかを正確に知るための国内偵察を行うことが可能なほどのサウジアラビアへの潜入によって、サウジアラビア内部の脆弱さを、まず明らかにした。
その後、彼らはアメリカのパトリオット・システムのレーダーの目をくらませ、その過程で、まだアラムコが特定できない期間、サウジアラビア石油生産を半減させた様々な種類のドローンや電子戦を駆使する非対称作戦を通し、技術とサイバー能力を実証した。
最終的に、この最近の出来事で最も驚くべき、仰天すべきものは、敵領土で実行し、何千という兵士や装置から構成される三旅団の包囲に成功したイエメン地上作戦だ。ドローンや、対地攻撃機や、防空部隊に支援されたこの成功した作戦には、アンサール・アッラー(フーシ派)に忠実な何千人ものイエメン人兵士が参加した。通常、このような能力は、第三世界の軍隊ではなく、良く訓練された、装備が整った軍のものなのだ。
彼らが石油設備に打撃を与えたとき、フーシ派はリヤドに明確なメッセージを示したのだ。彼らは、サウジアラビア王家に取り返しがつかないほどの損害を与え、究極的にサウド家を打倒する手段と能力を持っていることを効果的に知らしめたのだ。
サウジアラビアの石油施設に打撃を与えた後、イエメン軍報道官は、彼らは無人飛行機とミサイルを駆使したあらゆる攻撃を停止しするが、そこでことを終わりにして、紛争を終わらせるため交渉の席につくのか、あるいはサウジアラビアは更に同じような目に会いたいのかは、リヤド次第だと発表した。
ムハンマド・ビン・サルマーンは、アメリカから、パトリオット・システム不具合の言い逃れや、更に多くのアメリカ支援が予定されていると保証する、多種多様の再確認をアメリカから受けたのは確実だ。特に彼らが(既にウソであることがばれている)イランの代理人であること考えれば、フーシ派と合意するのは不可能なこと。もちろん、そのような降伏が実現するようなことがあれば、サウジアラビアや、イスラエルやアメリカの威信に対するの莫大な損失は言うまでもない。
既に、リヤドでは、(フーシ派の非対称戦争に対し、やはり役に立たない)高高度防衛ミサイル・システムや他の非常に高価なアメリカ防空システムの新たな供給を受けるという話がかたられている。アメリカには、パトリオットや高高度防衛ミサイルTHAADのようなシステムで迎撃することが難しい、小型の低空飛行無人飛行機やミサイルから守るのに理想的な多層航空防衛が可能なロシアのパーンツィリやBUKシステムのようなものがないのは、サウジアラビアには、お気の毒だ。
イエメンで進行中の大量虐殺を止め、反撃でフーシ派に再度攻撃されないようにする和平会談を始める代わりに、ムハンマド・ビン・サルマーンと彼の顧問は、イエメンで更なる戦争犯罪を行うのが適切だと考えているように思われる。
このような強硬姿勢に直面して、フーシ派は、サウジアラビアの士気にとって一層破壊的で、欧米政策当局を困惑させる新たな攻撃を進めたのだ。何千人もの兵士と兵器が、2015年、ウクライナでキエフ軍が同様に包囲され、破壊されたドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の行動を思い出させる挟み撃ち作戦によって、殺されるか、傷つけられるか、捕虜にされた。
通常このような挟み撃ち作戦は、敵をどこで包囲するのが最善か決定するための徹底的な偵察が必要だ。更に、アメリカとサウジアラビアの反撃を防ぐため、航空援護と防空体制が必要だ。この全ての他に、調整が必要なこのような攻撃には、命令を短時間で効果的に実行するための訓練と同様、兵隊と装備が必要だ。イエメン軍とフーシ派による素晴らしい準備と、地形に関する知識の結果、これら全ての必要条件が満たされたのだ。
サウジアラビア石油施設に対する攻撃が大きな衝撃だったのであれば、この前の土曜日の更に一層劇的な攻撃は、ムハンマド・ビン・サルマーンと彼の同盟者アメリカに非常に厳しい現実に直面することを強いているはずだ。今や認識されるべきなのだが、サウジアラビアは、イエメンから国境を守る能力を持っておらず、サウジアラビア人やアメリカ人の感情には、ほとんど関心を示さない一方、フーシ派とイエメン軍が思うままにサウジアラビア領に入れるままにしているのだ。
これはフーシ派にとっては、リヤドに対する三重の王手だ。第一に、彼らは、サウジアラビア内に、イランやイエメンと総力戦の場合、国内で破壊活動を行うのに十分な現地の支持を得ていることを示したのだ。そして、彼らはサウジアラビア石油生産を損なう能力を持っていることを示している。究極的には、イエメン正規軍は、サウジアラビア軍が、イエメンの主権に違反して、これまで五年間、一般人を手当たり次第に大虐殺していたことを考えれば、もしイエメンの指導者が緩衝地帯を安全に保つため、サウジアラビア領の帯状地帯を侵略し、占拠すると決めれば、彼らの思うままに、サウジアラビアとイエメンの間に国境を引き直すことができるのだ。
これらの出来事の重要性は熟考に値する。世界で三番目に大きな武器浪費国家には世界最貧のアラブの国を打ち破ることができないのだ。しかも、サウジアラビアは、国益と国境を、この貧困にあえぐアラブの国から守ることができないのだ。フーシ派は、貧しいながらも、まとまった、やる気満々の軍隊が、非対称の方法を使って、装備が世界最高に整った軍の一つを屈服させるために何ができるかを世界に示しているのだ。技術や、サイバー能力が民主化され、フーシ派がドローンの使用と電子戦で見せたように、どのように適切にそれを使うべきか知っている利用可能になった場合、戦争の新しい手段が可能かの例として、この紛争は全世界で検討されるはずだ。
ミサイル能力や、多くの捕虜や、サウジアラビア中に広がる破壊活動家を擁する組み合わせによって(おりしも日曜、ジッダのアル・ハラマイン高速鉄道駅で奇妙な火事が起きた)フーシ派が、高レベルの影響力を享受する状態では、リヤドは、この無用な戦争の悲劇的な結果を受け入れ、アンサール・アッラーと交渉の席につく頃合いかもしれない。
ワシントンとテルアビブはあらゆる方法でこのような交渉を阻止しようとするだろう。だがもし、ムハンマド・ビン・サルマーンと家族が彼らの王国を救いたいと望むなら、すぐにフーシ派と話を始めるほうが良い。さもなければ、アンサール・アッラーによる更なる攻撃が、サウド家とサウジアラビア王国の完全な崩壊と荒廃に導くのは時間の問題に過ぎない。
Federico Pieracciniは国際問題、紛争、政治と戦略を専門とする独立したフリーライター
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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2019年9月27日 (金)
アメリカ・パラダイムを粉々にするアメリカの信頼性に関する精密攻撃
アラステア・クルック
2019年9月23日
先週、サウジアラビアの「極めて重要な」原油加工施設に対する精密攻撃は、サウジアラビアの信頼性、アメリカ安全保障の「傘」への信憑性に対する精密攻撃でもあり、トランプにとって、特に有能な軍・諜報大国としてのアメリカのイメージにとって屈辱だ。
今彼らは自身の脆弱性を考慮し、アメリカの傘に対する信頼を疑問視しながら、湾岸諸国は彼らの唇を噛んでいるはずだ。国防総省さえ、起きたことを考えれば「アメリカ中央軍に一体何の意味があるだろう?」と自問しているかもしれない。とりわけ、イスラエルは骨まで凍りつきそうな風で背筋をぞっとさせているはずだ。イスラエルは攻撃の正確な目標設定と技術的有効性に、畏敬の念に打たれずにはいられまい。特に、昨年サウジアラビアが兵器に650億ドルを使ったのに、全く何の役にも立たなかったことを考えるとなんとも印象的だ。
この屈辱に直面して、アメリカ政権は「煙に巻こうとしている」。UAVと巡航ミサイルの出発点や発射について、色々、わけのわからないことを主張している。「このような作戦は彼らの能力を超える高度なものなので、アンサール・アッラー(フーシ派)のはずがない」。この主張明白な東洋蔑視は別として(ヒズボラが、ハイテク無人飛行機や高性能巡航ミサイルを製造できるなら、どうしてフーシ派が製造できないだろう?)アブカイク攻撃は、正確に、誰が実行したかは本当に重要なのだろうか? 湾岸にあらゆる膨大な資源を保有するアメリカが、アブカイクに飛来したUAVが、一体どこからか来たかという証拠を提供できないのは実に多くを物語っている。
実際、攻撃手口が、あいまいなのは、攻撃の精巧さを更に強調している。
アメリカは、アブカイクにミサイルを雨あられと浴びせられたのは、イエメンに対する(トランプに無条件に支持された)サウジアラビアの戦争が根本原因であるという非常に明白な(しかし恥ずかしい)事実から目を逸らすため、発射場について「煙に巻いて」いる。フーシ派は攻撃実行を主張しており、彼らは兵器(確かにフーシ派のクッズ1巡航ミサイルに関しては、イランのソウマル・ミサイルの単なるコピーではない。ここを参照)を実演し、近い将来、攻撃を繰り返すと約束している。
精密攻撃がしたのは、ともかく湾岸の「守護者」、脆弱な世界経済の静脈に流れ込む活力源たる原油の保証人になりすましているアメリカという「船」を粉々にしたことだ。つまり、これは支配的なパラダイムを狙った精密攻撃だったのだ。そして直撃したのだ。それは二つの主張の空疎さを暴露したのだ。アンソニー・コーズマンは「サウジアラビアに対する攻撃は、アメリカの湾岸制空権の時代と、精密攻撃能力に関するアメリカの、ほぼ独占状態が急速に弱まりつつある明確な戦略的警告だ」と書いている。
イランは、直接あるいは間接に関係していたのだろうか? それは本当に重要ではない。帰結的意味を理解するには、それは、ある意味、共同戦線(イラン、シリア、ヒズボラ、イラクのハシドシャービー、フーシ派)の共同メッセージと解釈されるべきだ。これは広範な制裁危機の最終段階なのだ。戦略(ミサイル)が、アメリカによる"最大圧力"戦術の効果という膨らみすぎた‘風船’をパーンと破裂させたのだ。トランプが「世界を制裁し/関税をかける」のが最終段階を迎え、爆発させなければならなかったのだ。ロシアと中国はほぼ確実に同意し、(静かに)拍手喝采しているはずだ。
このやり方には明らかなリスクがある。ワシントンはメッセージを正確に理解できるだろうか? 異なる文脈で、ガレス・ポーターは、「敵」の心を理解したり、「正確に読み取ったりする」ワシントンの能力は、どういうわけか失われたように思われると指摘している。ワシントンでは、(イランであれ、中国であれ、ロシアであれ)「他者」に対して共感する、いかなる素質も見出せないのだ。だから、おそらく見込みは大きくはない。ワシントンは「それを理解しない」だろうが、むしろ、強化して、悲惨な結果になりかねない。ポーターは書いている。
「アブカイク攻撃は、戦略的に、アメリカを驚かせて、アメリカの政治的、軍事的計画を台無しにする、イランの能力の劇的な証明だ。イランは、これまで20年、アメリカとの終局的対立に準備して過ごしてきたが、その結果が、イランの軍事資産を破壊しようとするアメリカの取り組みに、イランが遥かに効果的に反撃し、中東中のアメリカ基地に標的を定める能力を与える新世代の無人飛行機と巡航ミサイルだ。
「イランが高高度無人監視飛行機を撃墜した時、どうやらアメリカは不意打ちされたが、イラン防空システムは、2016年に受け入れたロシアのS-300システムから始まって、絶えず強化されてきた。2019年、イランは、S-300システムよりも、インドとトルコが切望するロシアのS-400システムに近いと見なすBavar -373防空システムを公表した。
「更に、ある専門家にイランを「無人飛行機超大国」と呼ばせたように、イラン軍は無人飛行機戦隊も開発している。無人飛行機の実績には、精度誘導ミサイルを装備したシャヘド171「ステルス無人飛行機」や、アメリカのセンチネルRQ -170や、MQ -1プレデターからイランがリバース・エンジニアしたと報じられているシャヘド129がある」[強調とリンクは筆者による]。
ポーターのメッセージの理解は、地域で起きている「大きな変化」の性質を理解する鍵だ。ロボット飛行機やドローンが戦争戦略を変えたのだ。古い真理はもはや有効ではない。イランに対して、アメリカ軍の簡単な解決策はない。
イランへアメリカ攻撃は、イランの断固とした反撃とエスカレーションを引き起こすに過ぎない。2003年のイラク侵略のようなアメリカによる全面的侵略する能力は、もはやアメリカにはない。
政治的な答えしかない。だが当面、アメリカとMbSは共に否認段階にある。見たところ、後者はアラムコの一部株式の売却を続けることで(市場は、まさにアラムコのような資産の地政学的リスクに再度目覚めたところだが)、彼らの問題を解決するかもしれないと信じている様子で、トランプは、いまも、最大の圧力が、思ったよりうまく行くかもしれないと信じているように思われる。
サウジアラビアとっての「政治」は我々には明白だ。イエメンでの敗北を受け入れ、必然的帰結として、イランとロシアとの交渉は、どんな和解であれ達成するための必須要件だ。MbSにとって、政治的にも財政的にも、代償が高価なのは確実だ。だが他に選択肢があるだろうか? 更なるアブカイクを待つのだろうか? 公正のために言えば、状況は自分たちの存在の根幹に関わっているのをサウド家は理解しているという報道がある。そのうちわかるだろう。
トランプにとって教訓が明らかなのは確実だ。アブカイクに対する攻撃は(より大きな石油供給中断で)もっと酷いものであり得たはずなのだ。トランプの最大圧力戦術に、石油市場と市場一般は地政学リスクを見たのだ。世界貿易が揺らぐにつれて、彼らは不安になっている。
「衝撃的な週末の攻撃は、サウジアラビア石油生産の50%を破壊したが、経済はより高い石油価格を切り抜けられるだろうか?」のような見出しは、いささか余りに人騒がせかもしれないが、当を得ている。より高い価格が持続すれば、供給途絶は、脆弱なアメリカと世界経済を容易に景気後退に向かわせかねない。
2020年の再選可能性は、アメリカが景気後退しないようにできるかどうかにかかっているかもしれないので、トランプ大統領よりこれを意識している人物は他にいない。一般的に言って、二期目を追求するアメリカ大統領は、一期目の任期末期に景気が後退しない限り、常に再選される。これが、ジミー・カーターとジョージ・H・W・ブッシュに起きた。両者は、彼らの目の前でおきた景気後退のおかげで、再選出馬に敗れた。
既にサウジアラビアとトランプ双方が(サウジアラビアの困難の根底にあるイエメン問題に対処する代わりに)イランとの(陽動)対立可能性を撤回しつつある。問題は、最大圧力というイラン政策の問題点の否定が、どれだけ長く続くかだ。選挙次第だろうか? おそらく、そうだ。もし彼が二期目を勝ち取るつもりなら、トランプは景気後退という致命的な地雷を避けるのに並行して、有権者のご機嫌もとらなければならない。そして、それは現代の「宇宙の悪」という、イランに対する福音主義者とAIPACの執着に迎合することを意味するが、一つの前向きな「風向きを示すもの」は(ガンツは決してイラン「ハト派」ではないが)ネタニヤフ支配が終わるかもしれないことだ。
アラステア・クルックは元イギリス外交官でベイルートを本拠とするコンフリクツ・フォーラム創設者・理事長。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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