旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第2話その2 『ダンジョン・アタック前編』 〜《ウォーグ》の洞穴〜

2025-01-26 08:06:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説です。


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〇二

 ハーラは夢を見ていた。《年降る緑色竜》から逃げる為、馬で駆けていく夢だ。馬で…馬…。馬!《ゴール橋》の欄干に愛馬を繋いだままだったことを思い出す。すかさず飛び起き、ハーラは全力で叫ぶのだった。

「れつどばろーん!」

愛馬の名を叫ぶハーラ。事情を知る由もないテーリとナーレは目をパチクリさせている。

「レ、レツドバロン…とは?」

ナーレが恐る恐る尋ねると、ハーラはそれを無視してベッドから飛び出した。目にも止まらない速さで甲冑のアタッチメントを閉じていく。カチャカチャンと小気味良い金属音が響き、ハーラは武装をあっという間に終えた。


 ハーラは一言残して部屋を飛び出ていった。

「れつどばろんを迎えにいってくる。すぐ帰る。」

直後、稲妻が目の前に落ちたかのような轟音が響いた。ハーラが階段を転がり落ちた音だった。あ痛たたたたた、とハーラのか細い声が聞こえ、すぐにまたバタバタと走る音がした。

「ナーレ、ハー兄を追うぞ!」

慌ててテーリは革鎧に袖を通した。着古した馴染みの革鎧を手際よく締め上げると、テーリはハーラの後を追った。ナーレは装飾の多い派手な衣装を頭から被ったが慌てていた為、頭をどこから出していいかわからなくなり《僧兵》とは思えない無様な転け方をした。

 テーリから遅れること数分、やっとナーレは宿屋を出ることができた。今から追いつけるのかと不安げに遠くを見やる。遥か彼方には何も見えなかったが、視界の片隅にうごめくものがあった。視線を移すとすぐ目の前で白馬に抱きつくハーラと、うんざりした顔のテーリの姿があった。慌てることもなかったな、とナーレは頭を掻いた。


【第2話 〇三に続く】

次回更新 令和7年1月28日火曜日


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ハーラのから騒ぎに付き合わされたテーリとナーレ。宿屋に戻って朝食を摂ろうとした時、意外な人物と再会を果たす。