旧・鮎の塩焼キングのブログ

80年代を「あの頃」として懐かしむブログでしたが、子を亡くした悲しみから立ち直ろうとするおじさんのブログに変わりました。

冒険小説 ハテナの交竜奇譚 第1話 その27

2025-01-12 08:22:00 | 小説

亡き次男に捧げる冒険小説です。



二七

 宿場町の宿屋の一室でハーラとテーリとナーレは、ベッドを三つ並べ、天井を見ながら話をしていた。幼い時にどんな昆虫が好きだったとか、英雄譚の中で一番強いのは誰々だとか、そんな他愛のない話題に花が咲いた。お互いを知るための情報交換は一切せずに、ただただ馬鹿話を楽しんだ。暫く話し込んでいたが、次第に戦いの疲れが襲ってきた。

 瞼が重くなってきたテーリとナーレが寝入る寸前、ハーラが二人に突飛も無いことを持ちかけた。

「なあ、僕たち義兄弟の契りを交わさないか?僕が長男分でさ。」

一瞬で眠気が覚めたテーリはノリノリだった。義兄弟が力を合わせて挑む冒険を思い浮かべてニヤけていた。

「それじゃあ、僕は義兄弟の要の次男分か…。」

これまた眠気の覚めたナーレが笑いながら続ける。

「どうせ僕が一番下っ端の弟分なんだろ。言われなくてもわかってるよ!」

誰も構っていないのに、一人で勝手に拗ね出した。ただのおふざけであることがわかっているので、ハーラもテーリも特にナーレには取り合わなかった。

「僕は感じるんだよね、今日の出会いは運命なんだって。この三人で何かをしなくちゃいけない運命なんだって。だから、三人はこの先一蓮托生。命を賭けて助け合う義兄弟でありたいんだよ。」

ハーラは改めて自分の胸の内を明かした。なぜか名前を知っていた三人。顔を見合わせると無性に泣けてくる三人。そんな三人だからこそ、否が応でも肉親以上の強い絆を感じてしまうのだ。

「僕は賛成だ。二人には命を救ってもらった。この恩義は一生ものだもの。僕はハー兄の弟分になりたいし、ナーレの兄貴分にもなりたい!そうして恩義を二人に返したい!」

真ん中のベッドのテーリは身体を起こすと、ナーレの方に身体を向けた。同じタイミングでハーラもナーレも身体を起こした。

「ハー兄、テー兄、僕も二人を助けたい。ハー兄は実家のことで苦しんでいるし、テー兄は記憶をなくして困っている。僕がいなくちゃ多分、二人は何にも成せないと思うんだ。二人のために付き合ってあげるよ、しっかり者の弟分としてね!」

ハーラもテーリも腹を抱えた。ナーレがしっかり者?末弟は甘えん坊に決まっているだろう、とナーレを小馬鹿にして。


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【第1話 二八に続く】

次回更新 令和7年1月14日火曜日