亡き次男に捧げる冒険小説です。
===============
〇七
自信満々の笑顔で席に着くヴァッロ。視線をテーリに戻す。
「色々言いにくいことがあるけど、オデたちは悪い人間じゃない。」
「多少お節介な性分なのです。」
《オートノーム》が続けた。
「そっちの《聖騎士》様にちゃんと答えるならさ、『弱っちいお前たちが心配で放っとけない』のが、オデたちがつけ回す理由になるな。」
真っ直ぐに見つめられ、真剣な口調で言われるとぐうの音も出なくなる。自分たちが「強くない」ことは昨日の《ウォーグ》戦で痛いほどわかっている。冒険者の先輩が心配になったと言うのは道理が通っていた。
「あの時はまだ《パーティー》ですらなかったんだ。連携が取れないのは仕方がなかった。」
ハーラが悔しそうに呟く。
「僕なんて丸腰を通り越して丸裸だったんだ。それにしてはよくやれた。」
テーリはヴァッロの言葉を認めたくなくて言い訳をした。言ってみたものの空虚な気持ちになる下手な言い訳だった。ナーレは夫婦喧嘩を楽しみにしていたのに、あっさり諌めた二人組の話術が気になった。ヴァッロの語った「弱っちいお前たち」については頭にもこなかった。むしろ上手いことをいうもんだと改めて感心していた。
「私たちは腕に覚えがある。生半可な魔獣相手に苦戦はしない。駆け出しの冒険者ならば一緒にいて損のない用心棒になれる。」
《オートノーム》が平坦な口調で、唐突に本題を切り出してきた。僕たちの仲間になりたいのか。義兄弟は目を見合わせた。
「ちょっと失礼するよ。」
三人は少し椅子を引くと、頭を寄せ合い相談を始めた。
ヴァッロたちは藪の中から僕たちの戦いぶりを見ていたのかもしれない。あんまり拙い戦いぶりだったから助けたくなったという言葉を信じるとして、こちら側は助けを必要としていない。自分たちの力量は充分に把握している。無謀な冒険をするつもりはない。三人は既に決まっていた結論を確固たるものにして椅子を戻した。
「ヴァッロさんと《オートノーム》さん。」
「《オートノーム》ではない。ヘロ・ペロピィだ。」
ヘロは名前で呼ぶように暗に求めてきた。
「ああ、ヘロさんね。では改めて。ヴァッロさんとヘロさん。僕たちは確かに駆け出しの新米冒険者です。だからといってあなた方のような世話焼きの先輩方のお世話にならなければいけないほど弱くはないし、施しを受ける義理もない。自分たちの冒険は自分たちで切り拓くものです。愛馬のことは改めてお礼を申し上げます。僕らのことを思うならば、どうぞもうお気にかけないでください。」
ハーラは誠意を込めてヘロの申し出を断った。この話題はもうおしまい、自分たちの冒険に集中しますという決然とした態度を表明してみせた。あまりにもはっきりと断られたのでヴァッロたちは食い下がることもなく、ただ残念そうに席に着くと黙って食事の続きを始めた。
【第2話 〇八に続く】
次回更新 令和7年2月7日金曜日
===============
義兄弟の偶然の一致!3人の好物とは?