鷲津(大森南朋)は、企業を買いたたくファンドマネージャーとして「ハゲタカ」と異名を取るほど有能だったが、ほとんど引退同然でいた。そんな鷲津のもとへ因縁浅からぬ芝野(柴田恭兵)が、日本を代表する自動車会社を買収の危機から救ってほしいと頼みにくるのだが……
ドラマ版は、バルクセール、ゴールデンパラシュート、EBO、ホワイトナイト等々、マネーゲームに関わる普通じゃ余り聞かない専門用語が次々飛び交った それぞれがキーワードとなり、わかりやすくドラマチックに組み入れられていて、経済に明るくない私でも「へえ~」「なるほど」と、夢中になった。
お互いの生き残りを賭けた戦いの緊迫感、失敗すれば死さえ絡むという厳しさ。非情に見える鷲津がそうなった過去などがとてもリアルで、人間像も魅力的だった
だから否が応でも期待が大きくなり、キャストも見応えがありそうで、映画は楽しみにしていた。
でも、映画の感想は「……」。
何か物足りなかった。今一つ響いてこなくて乗り切れずに終わってしまった……
やっぱり見所は、買収をかけてくる「赤いハゲタカ」とそれを阻止しようとする元祖「ハゲタカ」の頭脳&情報合戦だと思うのね。それが、何かもう一つという感じがしてしまったからかな……
お互いの戦いが、ほとんどTOBという株式の公開買い付けだけで、ドラマのようにいろんなパターンが見られずに、スカされた感があったというのが一つ。
それから、追いつめられて負けそうになった鷲津側が仕掛けてひっくり返した作戦というのが、どうも納得がいかず…… 相手側も相当な情報を持っているだろうと思うのに、そううまくひっかかってくれるのかな~??って。
リアルさを追求した脚本は、何度も書き直されたと聞く 確かに中国の台頭、派遣工の厳しさ、サブプライムなどタイムリーな問題が取り上げられていたけど、それがどうも表面を触っただけという感じがしたのが残念に思えた。
そうはいっても、鷲津、芝野は相変わらずクールでカッコよかったし、「赤いハゲタカ」の玉鉄もインテリジェンスで魅力的、ほぼ主役は玉鉄?という感じもした
映画単体で観ると、鷲津と芝野の信頼関係の背景などがわからないのでただの盟友にしか見えないだろうし、西野(松田龍平)とか三島(栗山千明)にいたってはテレビ版で出たから出ました、というオマケ出演だろうな、、、という気がする
2時間で駆け足の映画じゃなくて……、ドラマのパート2を作ってじっくり見せてくれた方がよかったんじゃないかな……と思わせられた一作でした