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ロッテ戦を中心に、野球を好き勝手な視点から見るブログ

読み応え満足 「オリンピックの身代金」

2009-06-24 16:37:35 | 小説

吉川英治文学賞作品。著者は「ガール」「空中ブランコ」などの奥田英朗さん。

私はこの方、初読だったんですが、すごく満足しました。他の作品もぜひ読んでみたいと思います。

東北の貧しい村出身の東大生国男は、義理の兄の死をきっかけに、彼の仕事だった末端の労働者になる。オリンピックを控えた東京の華やかさとは裏腹な地方の貧しさ、インテリとプロレタリアートの格差が身に浸みる。そして行き着いたのは、オリンピックを人質に国から身代金を奪うことだった……

奥田さんは1959年生まれだということなので、一応東京オリンピックの時にはお生まれにはなっているが、でも5歳。この本に書かれている詳細な当時の景色や環境をおぼえてらっしゃるわけではないと思う つまり綿密な調査の上で書かれているのでしょう(巻末の参考資料の数はものすごかった)。当時の雰囲気や時代背景、地図まで浮かんできそうな描写のすごさ

構成も凝っていて、起きた事件が先に描かれ、時間が戻って主人公のそこまでの状況や心境が書かれるというのがちょこちょこ繰り返される作り 最初は全体像がつかめなかった私は、何だかわからず進まなかったが、そこがわかってくると読書スピードが加速した もう最後まで一気

国男の欲のない身軽さ頭の良さ、相棒のおやじとの不思議な信頼関係、刑事とのスリリングな戦い……面白いです 引き込まれてのめり込んじゃいました。ラストは……ちょっとあっさりだったかも

しかし、結構分厚い2段組のハードカバー。なので時間がかかってしまい、図書館期限オーバー。一度「200人待ちなので早く返して下さいね~」とクギを刺されたのだが……待ち行列だったみなさん、ごめんなさい

次は奥田さんの本、買ってゆっくり読んでみようと思います