民主50議席台クリア予想でも燻る「小沢ファクター」
先ず、マスコミ各社の参院選挙予測を見てみたい。
(1) NHKの情勢調査によれば、
民主党:選挙区36、比例区17の計53、自民党:選挙区33、比例区12の計45
(2) 共同通信社では
民主党:選挙区35、比例区17の計52、自民党:選挙区34、比例区12の計46
(3) 日本経済新聞社では
民主党:選挙区37、比例区20の計57、自民党:選挙区32、比例区11の計43
(4) 週刊文春では
民主党:選挙区32、比例区20の計52、自民党:選挙区29、比例区11の計40
(5) サンデー毎日では
民主党:選挙区35、比例区18の計53、自民党:選挙区32、比例区11の計43
(6) 週刊朝日では
民主党:選挙区38、比例区20の計58、自民党:選挙区28、比例区10の計38---であった。
民主党は改選議席の54には届かないが50の大台を何とかクリアでき、菅直人首相(代表)体制は首の皮一枚繋がるのではないか。
筆者も編集・発行する『インサイドライン』(6月25日号)でも「54±3」と書いた。そして自民党も改選議席38を上回り、谷垣禎一総裁の当分間の続投は確実視されるという予測となった。蓋を開けてビックリ仰天にはならず、選挙後政局はそれほど面白い展開にならない可能性が高い。
それでもなお、焦点は「小沢(一郎前民主党幹事長)ファクター」である。
依然としてお得意の「川下作戦」を取り続ける小沢氏は、幹事長時代に強行した「複数人区2人目擁立」の各選挙区を回っている。
6月28日には愛媛県今治市、29日は山形県鶴岡市、30日が宮城県七ヶ所町、7月1日も兵庫県朝来市と京都府福知山市で、それぞれ僅か20~30人の聴衆を前に辻立ち演説を行っている。
小沢氏の企図するところは、例えば京都選挙区に2人目の候補として擁立した河上満栄前衆院議員の応援をみれば伺え知れる。
谷垣総裁(衆院京都5区選出)の地元である福知山に入り、比例代表の近畿ブロックで復活当選した「小沢ガールズ」の小原舞衆院議員を同道したことからも分かるように、実は次の衆院選挙を念頭に置いた"事前運動"と見ているのだ。河上候補が仮に敗れても、再び衆院選挙チャレンジさせる腹積もりなのである。
さらに"小沢らしさ"が象徴的な選挙戦を展開しているのが同じ2人区の長野選挙区である。現職の北澤俊美防衛相に次ぐ候補として地元紙『信濃毎日新聞』OBの高島陽子元県議を擁立、同候補に対し物心共に集中応援していることだ。
小沢氏の私設秘書を5~6人張り付かせているだけでなく、沖縄県選出の糸数慶子参院議員(元社会大衆党副委員長)をはじめとする同県県議が高島の応援のため長野入りしている。北澤防衛相の普天間基地移設問題での迷走を「沖縄県民の声」として批判させ、"北澤落とし"のために事実上の分裂選挙を行っている。
新トロイカが考える長期政権戦略
なぜか。菅直人首相・仙谷由人官房長官・枝野幸男幹事長の新トロイカは、54議席前後をクリアできれば、菅政権の存続・長期化のための戦略第1弾を考えている。
当選が確実視される小沢最側近の輿石東・参院議員会長を今月末召集の特別国会での参院議員議席確定時に同院議長に棚上げし、北澤氏を後任会長に起用。小沢氏の権力の基盤である民主党参院執行部を握る腹積もりなのである。小沢氏もまた、そうはさせじと北澤追い落としに全力を挙げているのだ。
小沢氏の複数人擁立が奏功しそうなのが、大阪と愛知の3人区である。大阪の地元テレビの人気タレント、岡部まり氏が選挙戦序盤は泡沫扱いだったのに急浮上中。また愛知の安井美沙子氏も3人目当選の可能性が強くなってきている。つまり「小沢ガールズ」要員3人が当選圏に入りつつあるのだ。こうした読みが現在の小沢氏を強気にさせている。
それでも恐らく、民主党は何とか52か53議席に届き、菅体制安泰となるはずだ。
となると、菅首相が"輿石外し"の参院議長人事と連動させて月末にも内閣改造を断行することになれば、9月の代表選前の小沢氏離党・新党結成もあり得る。その場合、衆参院議員多くて40人前後が行動を共にするのではないか。
(以上、現代ビジネスより転載)