詩人は、 自分の悲しみを、 言葉で誇張して見せるのでもなければ、 飾り立てて見せるのでもない。 一輪の花に美しい姿がある様に、 放って置けば消えて了ふ、 取るに足らぬ小さな自分の悲しみにも、 これを粗末に扱はず、 はっきり見定めれば、 美しい姿のあることを知ってゐる人です。 悲しみの歌は、 詩人が、 心の眼で見た悲しみの姿なのです。 これを読んで、 感動する人は、 まるで、 自分の悲しみを歌って貰ったやうな気持ちになるでせう。 悲しい気持ちに誘はれるでせうが、 もうその悲しみは、 不断の生活のなかで悲しみ、 心が乱れ、 涙を流し、 苦しい思ひをする、 その悲しみとは違ふでせう。 悲しみの安らかな、 静かな姿を感じるでせう。 そして、 詩人は、 どういふ風に、 悲しみに打ち勝つかを合点するでせう。
( 美を求める心 )
( 美を求める心 )