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10-2 平民の権利の伸張と新貴族の台頭

2018-03-11 04:34:54 | 世界史
『古代ヨーロッパ 世界の歴史2』社会思想社、1974年

10 世界帝国への道

2 平民の権利の伸張と新貴族の台頭

 紀元前五世紀の中ごろには立法委員十名によって、最初の成文法である十二表法が作られ、貴族も平民もこの法によって平等にとり扱われるようになったが、貴族と平民との結婚はまだ認められなかった。
 しかしその後まもなくカヌレイウス法(紀元前四四五年制定)によってその制度もとり払われて、平民も貴族と結婚できるようになると、平民のなかの有力者が政治にもしだいに進出してくるようになった。
 こうしてローマ市民をちょうどアテネでソロンが行なったように、財産によって段階をつける財産政治が行なわれるようになり、またそれにもとづいて軍隊組織が変わり、新しい市民総会である兵員会(コミティア・ケントゥリアタ)が成立した。

 兵員会は百人組(ケントゥリア)が単位となって組織されており、財産の程度によって武装も騎兵・重装歩兵・軽装歩兵(四等級にわかれる)・補助兵(工兵・軍楽兵および子供以外に財産がないので、ただ名前だけが登録されるプロレタリイ)に区分された。
 この百人組の単位がそれぞれ一票の投票権をもつが、騎兵は十八組、重装歩兵は八十組、四等級の軽装歩兵は上の三つがそれぞれ二十組、四番目が三十組、補助兵は工兵と軍楽兵がそれぞれ二組、そしてプロレタリイが一組と定められているので、総計は百九十三組になる。
 しかしこの百人組という単位は実際の人数を表わしているのでなく、有産者に都合のよいようになっていることは明らかで、上の二階層の騎士と重装歩兵の百人組を合算すると九十八になり、過半数の投票権をもち、しかも上の階層の組から投票していったので、軽装歩兵以下は投票する必要がなかった。
 このようにして、兵員会は軍会であるとともにこれまでのクリア会にとって代わる民会となり、執政官(コンスル)などの高官の選挙、宣戦、講和、立法など国家の重大事をとり決めたが、それが純粋な民主政治ではなく、財産政治であることは明らかである。
 そのうえに高官の経験のある人々を終身議員とした元老院が権威をもち、政治や外交を指導したから、貴族政の性格も強かった。
 それでも貴族と平民の身分の差別をなくしてゆくことはその後も進められた。
 紀元前三六七年のリキニウスセクスティウス法によって、執政官のうち一人は平民から選ぶこと、国民一人が使用することのできる土地は五〇〇ユゲラ(約一二五ヘクタール)までとして、広い土地がひとりじめされることを防いだ。
 また紀元前三二六年には、ポエテリウス・パピリウス法によって、市民を債務のため奴隷にすることが禁止され、紀元前三〇〇年ころには、執政官などによって刑の判決をうけた市民が、民会(兵員会・平民会)に上訴する権利(プロヴォカティオ)が認められた。
 さらに紀元前二八七年のホルテンシウス法によって、平民会の決議は元老院の承認を得ないで国法と認められるようになったので、長い年月にわたった「胃袋と手足の争い」は終わりをつげた。
 しかし、それはやはり、ペリクレス時代のアテネにおけるような、民主政ではなかった。
 平民会は手続きの面倒な兵員会より、ひんぱんに開かれるようになったが、三十一の地区(トリブス)を単位として投票し、土地をもたない市民は、ローマの四つの市街地区にのみ所属し、二十七の地区は土地所有者の声を反映し、しかも農村地区の市民はいつも平民会に出席することはできないので、実際には市街地区に住む富裕な土地所有者が実権を握るようになった。
 平民会はやがてトリブス会とよばれるようになり、貴族も出席できるようになって、全市民の民会となった。
 こうした旧来の貴族と平民のなかの有力者とが結合して、ノビレスとよばれる新貴族の階層ができ、今後数世紀にわたって、ローマの政治を支配するようになった。
 しかし新貴族は旧貴族とちがって、そのメンバーは封鎖的でなく、次にのべるイタリア半島統一の過程に、イタリア各地の上層身分の者を加えた。
 新貴族はまたその内部で親戚関係・友交関係・恩顧関係などによって、いくつかの党派をつくって対立抗争し、それぞれ有力な政治家がこれをひきい、高官の地位を獲得し、平民会をも自党に都合のよいように操縦しようとした。
 この新しい党派にもとづく人間的なつながりはクリェンテラとよばれたが、元老院はこのような諸勢力の頂点に位して、依然として権威をもっていた。
 またローマが対外発展をつづけるにつれて、イタリアと外地の人々も、新貴族を保護主として親分子分的関係を結んだ。


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