単純に判断するとその通りですが、日本円の価値がこのまま下落していったとして、日本が高度成長期のように円安をバネに輸出大国に転じることができるかは、怪しいでしょう。勿論、部分的にはできるでしょうが、時間はかかりますし、かつてより競争率は高く、産業の構図も複雑です。
①、日本で進行する産業空洞化
かつて、日本は製造業で栄えました。自動車は勿論のこと、半導体から船舶から、多くの工業製品の数割~過半が日本で製造され、輸出され、日本はその利益で潤いました。しかし、長く続いた円高と不況によって、国内の産業は窒息してしまい、工場の多くは経費の安い海外へと出ていってしまいました。
円安になれば、構図はかつてと似てきますから、海外移転した工場も、再び国内に戻って来てくれるかもしれません。しかし、それには、多くの課題があります。
②、技術格差
日本の衰退の主因が円高にあったにせよ、他にあったにせよ、既に日本は多くの分野で、その部門の主要国と比べて技術的に遅れており、5年から10年の格差があります。自動車部門は別ですが、半導体をはじめ多くの分野で、日本の各企業は撤退して久しく、かろうじて残っていても、中国・韓国・台湾・米国などと比べて、技術的に劣っています。
工場を日本に作っても、失われた技術、ノウハウ、職人、下請け、これらを再び培うのに、時間がかかるでしょう。部分的に海外から輸入すれば補えますが、その面は、円安の恩恵を受けることはできません。
③、海外企業の誘致
こうした点は、最近、政府主導で台湾の半導体企業TSMCの工場を熊本県に誘致したように、外国企業の工場の国内誘致をすれば、手っ取り早く解決できるかもしれません。彼らは、ノウハウも技術も持っています。そして、外国企業であれ、工場が日本で操業すれば、その従業員はじめ、関連企業や周辺の商業施設は潤います。
ただし、彼らは日本発祥の企業ほど、日本国内にその利益を再投資してくれるかはわかりませんし、独自の企業間貿易をしているでしょうから、どこまで日本の下請けに頼ってくれるかはわかりません。そもそも、国内の下請け企業の多くは、この30年の間に厳しい円高と輸出不振で廃業してしまったのですが。この点は、日本企業が国内回帰した場合でも、同じことが言えるかもしれません。
さらには、これから国内回帰する日本企業、新たに日本から企業が育つ場合、これらの外国企業の支社・工場は、強力なライバルになるでしょう。
稼いだお金を落としてくれるか、法人税がどこまで取れるか、下請け企業の育成に時間がかかる(その間は、工場誘致の恩恵も半減)、国内に日本企業のライバルを作ってしまわないか、これらが、不安点です。
④、日本の慢性的な労働力不足
高齢化と少子化が進行中の日本では、大変な労働力不足です。今現在は、新興国・発展途上国から、技能実習生などと称して極めて廉価で外国人労働者を雇うことによって、その点を補っています。ところで、円安が進行すれば、外国人にとって日本で働くメリットはなくなるので、新たに来なくなるし、今、来ている人も帰国してしまうでしょう。
そうなると、誰が工場で働くのでしょうか。産業育成をしようにも、実は労働力の面で日本は問題を抱えています。
⑤、多すぎる競争相手
戦後~高度成長期の1950~1970年代とは、大きく違う点は他にもあります。かつて未開発であった、中国、アジア各国、インド、アフリカ、その他、多くの国々が開発され、産業が育成され、各国企業が工場を作り・・・つまり、競争率が高すぎるのです。
いかに円安とはいえ、日本は、インドの低開発地域やミャンマー、バングラデッシュなどのさらに物価の安い地域・国々とも、コスト面で戦っていかなければいけません。これらの国々も、さらに開発されていくでしょう。
だからといって、日本の製造業が復興できないというわけではないのですが、かつてほどの恩恵は享受できなくなっているでしょう。かつてと比べて、競争相手が多すぎるのです。
結論:
①、日本で進行する産業空洞化
かつて、日本は製造業で栄えました。自動車は勿論のこと、半導体から船舶から、多くの工業製品の数割~過半が日本で製造され、輸出され、日本はその利益で潤いました。しかし、長く続いた円高と不況によって、国内の産業は窒息してしまい、工場の多くは経費の安い海外へと出ていってしまいました。
円安になれば、構図はかつてと似てきますから、海外移転した工場も、再び国内に戻って来てくれるかもしれません。しかし、それには、多くの課題があります。
②、技術格差
日本の衰退の主因が円高にあったにせよ、他にあったにせよ、既に日本は多くの分野で、その部門の主要国と比べて技術的に遅れており、5年から10年の格差があります。自動車部門は別ですが、半導体をはじめ多くの分野で、日本の各企業は撤退して久しく、かろうじて残っていても、中国・韓国・台湾・米国などと比べて、技術的に劣っています。
工場を日本に作っても、失われた技術、ノウハウ、職人、下請け、これらを再び培うのに、時間がかかるでしょう。部分的に海外から輸入すれば補えますが、その面は、円安の恩恵を受けることはできません。
③、海外企業の誘致
こうした点は、最近、政府主導で台湾の半導体企業TSMCの工場を熊本県に誘致したように、外国企業の工場の国内誘致をすれば、手っ取り早く解決できるかもしれません。彼らは、ノウハウも技術も持っています。そして、外国企業であれ、工場が日本で操業すれば、その従業員はじめ、関連企業や周辺の商業施設は潤います。
ただし、彼らは日本発祥の企業ほど、日本国内にその利益を再投資してくれるかはわかりませんし、独自の企業間貿易をしているでしょうから、どこまで日本の下請けに頼ってくれるかはわかりません。そもそも、国内の下請け企業の多くは、この30年の間に厳しい円高と輸出不振で廃業してしまったのですが。この点は、日本企業が国内回帰した場合でも、同じことが言えるかもしれません。
さらには、これから国内回帰する日本企業、新たに日本から企業が育つ場合、これらの外国企業の支社・工場は、強力なライバルになるでしょう。
稼いだお金を落としてくれるか、法人税がどこまで取れるか、下請け企業の育成に時間がかかる(その間は、工場誘致の恩恵も半減)、国内に日本企業のライバルを作ってしまわないか、これらが、不安点です。
④、日本の慢性的な労働力不足
高齢化と少子化が進行中の日本では、大変な労働力不足です。今現在は、新興国・発展途上国から、技能実習生などと称して極めて廉価で外国人労働者を雇うことによって、その点を補っています。ところで、円安が進行すれば、外国人にとって日本で働くメリットはなくなるので、新たに来なくなるし、今、来ている人も帰国してしまうでしょう。
そうなると、誰が工場で働くのでしょうか。産業育成をしようにも、実は労働力の面で日本は問題を抱えています。
⑤、多すぎる競争相手
戦後~高度成長期の1950~1970年代とは、大きく違う点は他にもあります。かつて未開発であった、中国、アジア各国、インド、アフリカ、その他、多くの国々が開発され、産業が育成され、各国企業が工場を作り・・・つまり、競争率が高すぎるのです。
いかに円安とはいえ、日本は、インドの低開発地域やミャンマー、バングラデッシュなどのさらに物価の安い地域・国々とも、コスト面で戦っていかなければいけません。これらの国々も、さらに開発されていくでしょう。
だからといって、日本の製造業が復興できないというわけではないのですが、かつてほどの恩恵は享受できなくなっているでしょう。かつてと比べて、競争相手が多すぎるのです。
結論:
これらすべてを勘案すると、円安は思ったほど日本の輸出拡大と繁栄に寄与してくれるとは限らず、寄与してくれるとしても、それは部分的で、かつてほどではなく、時間もかかる可能性が高いのです。
円安を輸出と結びつけて喜ぶ方もいるかもしれませんが、それは少し早計で、もっと用心して事態を見守る必要がありそうです。
円安を輸出と結びつけて喜ぶ方もいるかもしれませんが、それは少し早計で、もっと用心して事態を見守る必要がありそうです。