最近一次創作を読むことにハマっています。
でもラノベは無理なので、
BLとか
シリアス系の小説を探し回って読んでいるのですが、
新しい世界に触れているようで楽しいです。
自分以外の文章に触れるってやっぱり楽しいし、
文章に触れ続けられることが一番いい。
同人誌も、小説中心に買っていたので、文章をずっと読んでいたい…のです。
その割には、楽しく読める本が少なくて
本屋に行っても悩んで、買わずに帰ることも多い。
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それで、余り長くない話を思いついたので更新ではなくこっちに
書いてみました。続きを読む機能が欲しいよ…。
飛蔵で夏祭り
★ 蒼 恋 ★
人の方と肩がぶつかるこの距離は、好きじゃないと飛影は思った。そばにある黒髪を、そっと見ながら。
「混んでるね、やっぱり」
小さく声が聞こえた。蔵馬の声だ。近くの神社の祭りだというので、蔵馬に強請られるままに
ここまできた。…逆らえるはずのない、甘い瞳に、結局甘くなってしまう。どうかしていると思いつつ、
そんな自分も嫌ではないことが、真実だった。そっと、蔵馬の手に、自分の手を絡ませた。
「はい」
蔵馬が、さっきかったサイダーを渡した、そのまま飛影も口をつける。二人の間で一つのものを飲む
ことは、自然な成り行きだった。高く髪を結んだ蔵馬を、一瞬だけ見た。空気に溶けてしまいそうな
ほど、きれいだった。
この髪を結ったのは飛影だった。理由は分からない、ただ、その髪をそっと撫でているときに…自然に
結い上げてやっていた。
「似合う? 」
簪を挿した蔵馬は、柔らかく肩を寄せてきたのだ。答えることが出来ず、頬をなぞってみた。
「いこ」
弾む声で、そのひとは抱きついてきた。
その一瞬一瞬を思い出すだけで、こんなにも胸が甘い。ガッと、人の肩がぶつかりそうな気配に、
蔵馬の腰を引いた。
「あ、ありがとう」
サイダーを受け取り、蔵馬は左を指さした。
「ちょっと買ってくるね」
神社の階段に座り込んで、蔵馬はピーと、音を鳴らした。
鳥形の、笛のようなものを、蔵馬は楽しげに繰り返し吹いていた。仕方がなく、飛影はそれを見た。
「もっと強くやるんじゃないのか」
「え? 」
飛影の声に反応して、蔵馬はもう一度腹に力を入れてみた。ピー……と、高い音が響いた。
黄色い鳥の笛は、蔵馬の白い指の中で揺れた。ピー、ピーと何度も蔵馬は遊んでいた。
クク、と笑ったのは飛影だった。
「買ってやろうか」
え、と言う蔵馬の先を指さす。奥に…狐のお守りの看板が見えた。
「要らない」
頬を薄く染めて、蔵馬はそっぽを向いた。この手のからかいを、好きではないことを知っていて時々口に
出したくなるのは飛影のほうだった。
「お守りなんか要らないし」
丸い瞳をくるくるとさせて、睨む蔵馬の口は、小さく言葉を紡いだ。
「そんなもの要らないし。あなたがいるのに」
不意に、唇を奪いたい衝動に駆られた。
少し待っていろと言う飛影の影を追いながら、蔵馬は神社の入り口の木の前で立ち尽くしていた。
行き交う人々は寄り添って笑い合っていた。千本鳥居の奥には、二人が永遠に結ばれるようにと言う
お守りが、さっきの狐とは別に売っていた。
「こっちのほうが、よかったかな」
少し離れてしまうと、このまま離れてしまうような気がするのは、もう癖になっていた。
「飛影…」
遠くから、声が聞こえた。少女たちが、ざわめいていた。
「すごい、あのひと」
「ひとりかな」
「モデルさんみたい」
ふと、その方角を見て…唾を飲んだ。飛影。紺色のシャツに緩くベルトをして黒のズボンの飛影は、少女たちの
熱い声の先に居た。
近づいてくる飛影を、遠くから見ているように、蔵馬は見ていた。
「蔵馬? 」
ぼんやりと自分を見た蔵馬に、飛影は小さく声を掛けた。
「なんでも、ない」
「来い、こっちだ」
ぐいと、飛影が手を引いた。その手のひらの熱さに、鼓動が跳ねた。熱のない瞳をして、こんなに熱い手で、
自分を手繰り寄せる、飛影のからだ。…誰かに渡したくはない。見つけられたくはない。
「見るだろう? 」
え、と言う蔵馬は、ハッとして頷いた。花火。
「離れるな」
丘の上から、近く大きく夜空に花を咲かせて、二人は寄り添った。
座り込んだ二人の手が重なった。
「良い場所だろう」
満足げに言う飛影に、頭を寄せた。
「…ありがとう」
離れないで…花火の音が、呟きに重なった。
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