前回の記事、第16回ミューズシネマ・セレクション~世界が注目する日本映画たち~『あん』 vol.1 からの続きです。
上映後のアフタートークとサイン会に参加したので、そのざっくりとしたレポです。
メモと記憶だけを頼りに書きますので、記憶違いはどうかご容赦のほどを。簡潔にするため、「です」「ます」の表現はカットしています。
司会はぴあの荒木さん、登壇ゲストは原作者のドリアン助川さんです。敬称略で書かせていただきます。
<ドリアン助川>
何故、この映画を撮ろうと思ったのか?ということについて話そうと思う。1996年ライ予防法が廃止になっても患者の隔離は続いていた。いろいろと思うことがあった。
所沢があってこの映画になった。縁が深い。
日本放送の深夜番組を5年間やっていたとき、若い人の「役に立たないと生きている意味がない」に違和感を感じていた。
その頃、知人の2歳のお子さんが亡くなるということがあった。この子はずっと病院にいてわずか2年という生涯だった。
どんな環境でも生きている意味はあるんじゃないか?と思った。
放送終了後、バンドを解散しNYへ。帰国後、思うように活動できなかった。
そのときに、所沢にあるNPO法人、不登校児童のフリースクールで行われるライブに呼んでいただいた。そこに、全生園から聴きに来られていた方々がいらした。
森本さんという方と出会った。いろいろとお話を聞いた。全生園の中に製菓部というのもあったとか。
その縁で製菓学校に通い始め、2009年から書き始めたのがこの『あん』。星を見上げて「書こう」と誓った。
出版しようとしたが題材が地味なので大手出版社から断られ続け、1996年ポプラ社で最低部数で発刊された。
小説家の角田光代さんらが書評で応援してくださり、NHKのラジオドラマになったりした。
徳江さんは哲学者のような感性をもっている。
映画のオファーがあったが危惧があった。
河瀬(瀬の字は旧字体、頁でなく刀の下に貝)直美さんの映画に出たことが縁となり、河瀬さん監督で映画化になった。
河瀬さんは変わった手法で撮影する方で、カットをかけずにカメラを回している。
妊婦さんと戸建てで一ヶ月過ごしたりとかして撮影した。間違いが起こってもおかしくない状況(笑
スタッフもいるんだが、「気にしないで」と言われた。
徳江役は最初から樹木さんでイメージしていた。
どら焼き屋はセットなんだけど、お店があると思い本当に人が並んでしまう。どら焼きは売るんだけど許可はとってないので、後からスタッフが追いかけていってお金だけは返したりしていた。
永瀬さんは撮影中、あの売上げだけで生活していた。銭湯に行ったり、コンビニ弁当を買ってきたり。
2年前の1月に私、樹木さん、河瀬さんの3人で全生園に行った。今も4000体近くの遺骨がある。
遺骨は引き取り手がない。遺族とは断絶していたり、していなくても「帰ってこないでくれ」と言われる。
プレミア前にカンヌ映画祭へ行ったとき、観客はプロばかりの中で心のこもった(おざなりではなく)スタンディングオベーションが5分以上続いた。
すぐに世界48ヶ国で上映が決定した。
ただ困ったことにみな「あんこ」を知らない(笑
英語圏では「あん」は「スイート レッドビーンズ ペースト」、どら焼きは「パンケーキ with スイート レッドビーンズ ペースト」。国によって違う。
ハンセン病は今は3種類の薬の服用で1週間で完治する。
日本ではどうして1996年以降もこういう状況だったのか?
日本の負の遺産。
徳江さんの言葉「宇宙の誰かが欲しかった命。どんな人間にも生きる意味がある」。これは文化や国は違っても世界に通じている。
森本さんが全生園に来るとき、客車を使わせてくれず、「搬送中」という幟を立てて貨車で連れて来られた。着いたら頭から消毒薬をかけられた。
自分はどうしたってその人の本当の気持ちはわからない、でも、千太郎やワカナのような事実を知って驚く側の視点なら書けると思った。
脚本は朗読してみたら6時間あり、カットして2時間にした。
カットした徳江さんの独白を朗読する。
<Q&A>
Q:1994年、1995年に中学生だったとき全生園に行った。ハンセン病患者の方々と出会ったことでなにかあればお話ください。
A:森本さんがとにかく明るい。いつも人を笑わせている。逆境にいるのに、あの明るい精神はどこからくるのか・・?
皆、逆に力をもらって帰ってくる。
Q:カンヌ映画祭で言葉(字幕)はどうなっているのか?
A:フランス語と英語の2種類の字幕を出していた。国によってタイトルが違う。
6月にパリで共生について話して欲しいと言われている。宗教、民族を越えて映画って伝わるんだなぁ~と。
Q:主人公の永瀬さんがどうオーナーと折り合いをつけたのか、小説には書いてあるのか?
A:1回書き直した。結局、その手前で。
もっと登場人物のエピソードもあったのだが散漫になり止めた。千太郎がテレビ東京の「テレビチャンピオン」に出場するというのもあった。
さすがに「それはないだろう~」と止めた(笑
ウクライナでは美女が樹木さんに抱きつき、「口の中まで泣きました!」と言った。初めて聞いた表現(笑
目だけ出ている民族衣装の女性が、その唯一出ている目から流れる涙を拭いていたり、、
スピードが重視される時代だけど、すぐに結果が出なくても捨てないこと。いつかなにかになるときが来る。
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とても興味深く、感慨深いお話でした。特にドリアン助川さんの朗読は心を打つものがあり、涙がこみ上げてきました。
朝日新聞 be(Blue)「逆風満帆」に2月27日(土)に上、3月5日(土)の下と上下2回に渡って、ご自身のことや『あん』にまつわるお話が掲載されていました。
『あん』の上映前に読んでおくことができてよかったな、、と思いましたね。
パンフレットにサインしていただきました♪ ありがとうございました。大事にいたします。
購入したパンフレット1000円。いい写真だなぁ。。
次の記事はこの後に上映された『ぼくたちの家族』の予定です。
明日の最終日は『ジヌよさらば~かむろば村へ~』を観に行きます♪
後日、みんな記事にアップしますね♪