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恩田陸『夜のピクニック』のあらすじと感想

2018-07-14 17:06:52 | 紙の書籍
新潮文庫 恩田陸『夜のピクニック』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。




【目次】
夜のピクニック
解説 池上冬樹


【あらすじ】
西脇融と甲田貴子は同じ北高に通う高校三年生。異母兄弟でもある。
貴子は融の父親、西脇恒が貴子の母親 甲田聡子と浮気をした際にできた子供。聡子はシングルマザーとして貴子を育ててきた。
お互いの家は没交渉であり、貴子は父親に会ったこともないし、母親も養育費などを請求することもなかった。恒が胃癌で亡くなったのは貴子たちが高校に入学する前のことで、葬儀でこちらを恐ろしい目で睨みつけていた少年が融だ。
融の母親はずっと二人を無視し続けていて、遺族に頭を下げた聡子にも知らん振りをしていたのだった。
そんな複雑な関係のまま、高校生活最後の「夜間歩行」という長距離を夜通し歩くという行事に参加する。やがて二人は、それぞれに複雑な感情を抱えながらも気持ちを少しづつ通わせる。


【感想】
解説(池上冬樹)にもあったが、この作品はノスタルジックでリリカル、懐かしくて切ない小説だ。誰にでもどこかに共感やキュン♡としたり、胸が苦しくなったりするポイントがあるはず。
ストーリーは高校最後の「夜間歩行」という行事に参加している登場人物たちが、ただひたすら夜通し歩くだけである。それだけなのになんとも言えない読後感が残る素敵な作品だと思う。
融が貴子とその母親に感じる思い、貴子が融とその母親に感じる思い。それぞれにそれぞれの立場と感情があり、単純にいい悪いだけでは済まないのが人というものなのだろう。
そいうところの描写が本当に上手くて胸にぐっとくるので、思わず涙が出たりするのだ。
「夜間歩行」が終わる頃には融も貴子も、自分の中でもやもやしていたものを少しばかり消化していき、少しだけ大人になっていく。そんなところの文章が好きだ。

恩田陸の文章は読みやすく、多分、私の「読む」という生理にあっているのだと思う。ストレスがないというのかな。
作者によっては共感ができて不快感がなくても、「読む」という生理に合わないのかプチストレスになってしまう作品がある。こういう作品に出会うとちょっぴり悲しい気分になる。残念。。と感じるのだと思う。


【余談】
某レビューで「長い」という感想を目にしたが、私はそうでもなかったかな~。全447p.を長いと感じるか、そうでもないと感じるかは読む人次第かな?

恩田陸は2005年本屋大賞『夜のピクニック』、第156回直木賞『蜜蜂と遠雷』、2017年本屋大賞『蜜蜂と遠雷』を受賞している。「史上初の快挙達成!」と帯にあった。
恩田陸はあと2冊購入しているので、いつまでも「積読」にならないようにしないとね。

思い出したことがある。大学生のときのこと。
私のいた大学にも似たような行事があって、年一回、夜通し歩く。ただひたすら。
その後、卒業前にいろいろとあったらしく、中止になったらしい…。こんなことやっているのはわが校だけかと思っていたんだが、ほかにもあるのかもしれない。
そういえば、高校も長距離遠足というか耐久遠足というのがあった。校門出発で東の山頂まで行って戻ってくるという、とんでもなくしんどい行事が。これ、出席を取る行事。出席日数にカウントされるので、さぼれない。
元気が有り余っている一部の男子はスタートからダッシュ!そのまま走り続け、午前中に校舎に戻ってきてお弁当食べてお昼寝してから、夕方にようやく戻ってきた生徒と帰宅するーという正気の沙汰ではないことをやっていたな~。

これって日本人気質なんだろうか? やたら「頑張る!」とか「根性!」とかを試すような古い伝統行事が残っているのは。特に高校では文武両道を謳う進学校に多いと思う。
まぁ、いいとか悪いとかではなく、青春の1ページということで。





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