パリの思い出なのだから、
シャンソンの歌詞に作れるか、
エスプリの効いた短編小説のような物語だといいのですが、
そのとき、ロマンチックなエピソードはなにもありませんでした。
パリ二日目の夜はシャンゼリゼ散策に疲れて、
いったんホテルに戻って、仕切り直しをすることにしました。
地図を見る限り、ホテルから20分も歩けば、繁華街があるはず。
10月のこととて、早くも暮れかけた街に出て。
なんといっても、しっかりした食事で胃を満たしたかったのです。
おしゃれなフランス料理でなくていいから、お惣菜風のホカホカした煮物なんかあるといいなあ・・と、
きつねうどんやおでんのイメージにつのる思いなのです。
★★ ★★ ★★
一本の下り坂が南に延びていて、その両側には点々と街灯が並んでいます。
全体に、日本と比べると、おそろしく暗い町なのです。
わずかの光に誘われて
せっせと歩きます。ちらちらとネオンが洩れているあたりを目指し、
きっとその先に、
下町の定食屋さんみたいな店があって、
ドライフラワーの薔薇みたいなすてきなおばさんが、
後れ毛なんかかき上げながら、「ボンジュール」と迎え入れてくれる?
それにしても、暗い。これが繁華街? いったいどこに定食屋さんがあるのやら。
★★★★★
街灯の陰に、女性がひとり。
黒いコルセットに黒いタイツ、黒い靴、黒い髪と黒づくめなのに、
白い首、肩、太ももが闇に浮かび上がり、
突如、息が止りそうになりました。
まずいところに、迷い込んでしまった!!
難癖を点けられたら、どうしよう。
もちろん、それは杞憂というもの。彼女にとって私はハエほども気を引かない?
そもそも、このような界隈で、
夜目には14歳にしか見えない東洋人の女子など、誰の気を引くわけもないとようやく冷静になり、
目についた定食屋風の店に入り、
恰好をつけてグラスワインを一杯注文したものの、
フランス語は話せず読めず、料理がわからず、結局サンドイッチの夕食となりました。
期待の白ワインには度肝を抜かれました。グラスがとても大きく、
透明の液体がなみなみとふちきりぎりまで。
気のせいか本場のワインは強く、一口でくらっと来て、結局飲むのを中止。
早々と店を出て、今度は上り坂の暗い道を一心に北に向かって歩いたのでした。
あー。お腹が空いた。のどが渇いた。
あしたこそ、なべを・・と、思いながら。
マロニエの葉を踏みながら 凱旋門に向かって歩く姿が目に浮かびました。 訪れた事のない暗い夜の街 怖そうです。 暗いと言えば フランス映画も暗い感じで 私は苦手です。
シャンゼリゼ通りは、肌寒の風が吹いていました。
マロニエの落葉は、風にまかれて舞っていました。
セーヌ沿いのニッコー・ド・パリに投宿。
エッフェル塔を川の流れの向こうに見て、エスプレッソを頂きました。
遠い過去の事です。
大きな襟のコートを買い求めたものです。
あのホテルはまだあるのかな・・・?
それから、南米やアジアばかり歩きました。
若さって、良いものですね。
ほんとに、旅行は若くないとできませんね。ハプニングも若ければ楽しめますし。
大きな襟のトレンチコートでしょうか。ジャン・ギャバンみたいですね。失礼! アラン・ドロンでしたか。