ミレーの「落穂ひろい」は、
おそらくもっとも有名な絵画の一つでしょう。
また、多くの人に好まれる絵です。
農場で、三人の農婦が、小麦畑の刈り取りのあとに残る落穂を拾い集めています。
自分の農場をもたず、他人の農場で畑に残った穂を集める貧しい人たちです。
でも、この絵はほのぼのした情感と刈りいれた後に、まだ余っている収穫の祝福を
思わせるのです。
よく知られているように、この絵の由来は、旧約聖書にある「ルツ記」です。
貧しい二人の未亡人ナオミと彼女の嫁ルツが、着の身着のままの生活の中で、落穂を拾って
いのちをつないでいき、何とか立ち直っていく話です。
旧約聖書には、貧しい人たちへの施策が、神の戒めとして記されています。
落穂を残しておかなければならない。
ぶどう畑も隅から隅までかりとってはならない。(旧約聖書・レビ記19章9節10節)
この聖書の教えは、ミレーの時代にも生きていたのですね。
貧しい者たちを見つめる愛のまなざしが、絵を見る人にも伝わってくるのです。