書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「天使のナイフ」薬丸岳

2006年12月28日 20時27分01秒 | 読書
作者初の小説で第51回江戸川乱歩賞を受賞した作品
久々にミステリー小説読了.
これは面白かった.
熱く,そして一途な気持ちのこもった小説です.
作者自身がミステリーが好きで好きでたまらないという気持ちがにじみ出ているような気がします.
それと何ていうのかな,すべてをこの仕事にかけているという一途さに弱いんだなあ,年をとると.
主人公,桧山貴志は一人娘の愛美を男手一つで育てているシングルファーザー.
愛する妻は3年前に,ある事件で殺されてしまいます.
悲しみに打ちのめされながら,せめてもの弔いに犯人への厳罰を望みますが,何と犯人は13歳の3人の中学一年生だったのです.
当時の少年法では,14歳未満の加害者には社会的責任は一切課せられず更生の道が与えられるだけ,しかも被害者には犯人が誰なのか,犯人が本当に更生したのか等,被害者なら当然知ってしかるべき情報が一切与えられないのです.
憎しみをぶつける相手を奪われた桧山には,もう愛娘の成長だけが生きるよすがとなっています.
妻を失って3年経ったある日,犯人の1人と思われる少年が何者かに殺されます.
ところが,桧山の不用意な発言から,その殺人の容疑が桧山に降りかかってくるのです.
とまあ,こんな感じであれよあれよという感じで物語は進んでいくんですが,読者は,当時の少年法のもつ加害者の権利優先の矛盾をこれでもかという感じで思い知らされます.
被害者が求めているのは,加害者からの心からの謝罪なのであって,けっしてうらみつらみをぶつけようというのではないのですが,そこが法律の硬い壁で簡単に跳ね返されてしまうことに,私もリアルな怒りを感じました.
幸い,その少年法が改正され,被害者が,加害者の少年の身元や更生の状況などを知ることができるようになったようですが,まだ,十分なものではないようです.
物語の前半は少年法の矛盾と,桧山の冤罪を軸に進みますが,後半は一転,ミステリーの要素が濃くなります.内容はちょっと言えませんがね.
ただ,私がすばらしいと思ったのは,単なる謎解きに終わらずに,社会派ミステリーとしてのストーリーの芯を崩さずに話を展開するテクニックですね.
それは多分,被害者の気持ちだけを一方的に擁護するのではなく,加害者側の罪の意識も丹念に描いていること,そして,これが一番大事なことなのですが,被害者意識と加害者の罪の意識の架け橋になるべき少年法が,全くの欠陥法だったということを見事に描ききっている点だと思うのです.
松本清張さんばり,というとさすがにちょっと持ち上げすぎかもしれませんが,その片鱗は感じます.
あと,目次の前に作者の受賞の言葉がのっていて,これがなかなかいいんですよ.
本編を読もうという気になったのも,わずか1ページの「受賞の言葉」にこめられた作者の熱い思いなんです.
う~ん,文章の力って本当に人を動かすんですよね.
コメント (2)
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札幌キロロツアー

2006年12月28日 02時40分13秒 | 日記

北海道から帰ってきました。
昨年は腰痛でスキーを断念しましたが、今年は無事に、楽しく滑ってきました。
キロロは雪質がとてもよかったです。
スキーをされる方はご存知でしょうが、雪質がよい、つまり雪の温度が低いと、粘着性が小さくてさらさら状態になり、スキーに絡みつかないので、ターンが易しくなります。
逆に温度が高いとシャ-ベット状になり、スキー板に絡んでとてもターンが難しくなります。
今回は幸運にも前者の状態だったということです。
幸運というのは、我々が行く前日に雪が降り、しかも冷え込んで雪が締まるという好条件に恵まれたのでした。

娘はボーゲンながらスピード狂でして、ハの字のまま猛スピードで降りていきます。
私は形にこだわる方なので、当然スピードは出ないわけで、いつも娘からリフト乗り場のところで待ってもらい、「お父さん遅い!」と叱られていました。
かみさんが娘と私の間に入って、どちらかが転んでいないかチェックする係りでしたね。
楽しかったですが、足と腰が筋肉痛でばりばり言っています。
直るのにしばらくかかりそうです。冬休みはこれからだというのに。
まあいいか。
最終日(つまり今日)は雨になってしまい、滑ることはできませんでした(残念!)
でも、昨日と一昨日の2日間は目いっぱい滑れましたので、良しとしましょう。
冬休みのビッグイベントはあっという間に終了です。
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