交通センタービル4階にある「東宝シネマ」で標題の映画を上映しています。コロナ禍の不安はありましたが、思い切って出かけました。座席は2/3くらいがうまり、観客は若い女性が目立ちました。(カンリニン)
映画は、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)での過酷な強制労働を描くものですが、その描き方が中立的で偏りがなく、そこが良かったです。と言っても氷点下40度を下回るような酷寒の地で、乏しい食料(黒パン)と劣悪な環境での強制労働は、やはり厳しい状況を生み出します。寒さと栄養失調のために餓死する者、絶望による自死者が後を絶ちません。それらの死者を降りしきる雪の中、ふんどし一枚の裸にして埋葬するシーンはこちらの心も凍り付くようでした。
シベリアと言えば上記のような極寒の大地ばかりを想像しがちですが、ここには冷涼にして快適な夏が存在します。いくら強制労働といってもたまには休日もあるわけで、そんな日にはみんなで川へ出て、魚を手づかみにしたり、子供時代に返って水遊びに興じます。また手造りのボールで野球に興じたりもします。微笑を浮かべながら鑑賞できるシーンもあるわけです。
また、収容所のあちこちにやたらとスターリンの肖像ポスターが張られ、社会主義思想の宣伝もされるわけですが、強制労働そのものが「不正義」であることを、映画はそれとなく批判しているようです。
そんな中にあって、襟章二つ星の上等兵に過ぎない山本幡男(二宮和也)は「必ず帰国の日が来る。このような強制労働は捕虜虐待の国際法違反だから・・」をかたく信じて、皆にそのことを言い、励まします。彼はロシア文学に憧れをもっており、露語の読み書き、会話ができるのでした。
事の始まりは1945年8月9日、ソ連の一方的な参戦によって引き起こされます。山本幡男は妻モジミ(北川景子)との間に3男1女を設けて満州国ハルピンで暮らしていましたが、その平穏な生活がソ連軍の侵攻によって崩壊します。つまり、幡男は捕虜としてシベリアへ、子連れの妻モジミはハルピンを脱出し辛うじて日本へ帰国します。この脱出行は、それだけで一本の映画が撮れそうな苦難に満ちたものだったでしょうが、この映画では一切省略されています。
さて、これからが、この映画の「キモ」にあたるクライマックスシーンが展開するのですが、幡男はハルピンで妻と別れるとき「オレは必ず日本へ帰って来るから、それを信じて、子たちを育てながら待っていて欲しい」と言います。モジミはその言葉を信じて生活の困窮に耐えながら戦後を生き抜きます。
さて、幡男(はたお)は無事に日本に帰国できたのか、、?。ここがこの「愛情物語」のテーマなのですが、そこを話すことは「ネタバレ」になります。上映中のことでもあるので、それは省略します。落涙率98%といわれるこの映画のテーマはこの後半部にあるのでした。
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