ブエルタ・アル・パイスバスコのクイーンステージは伏兵ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)の勝利で終わった。この日の登りゴールを征し、最終日の個人TTをそつなくこなしてくれればと見ていたのだが、ライバルのバルベルデにも2秒遅れての10位という結果に終わってしまった。
確かに敵はバルベルデのみといった対応で、総合トップの座は守ったのだが、結果だけを見るならまだ絶好調時のコンタドールではないと感じざるを得なかった。というのも何度も攻撃を仕掛けながら、そこでライバル達を引き離せなかったからだ。
今季のコンタドールはここ数年と比べれば調子がいいように見える。それは間違いないだろう。ただ、往年のコンタドールならクイーンステージでライバル達に遅れを取ることはなかったはずである。
ティレーノ~アドリアティコでは山頂ゴールを征しているが、続くボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャのクイーンステージでは、ホアキン・ロドリゲスに5秒差の2位に終わっているのである。勿論、シーズン序盤で本番はまだまだ先。この時期にピークの仕上がりでは、本番のツール・ド・フランスまで調子を維持するのは難しいことも確かなのだが、8部程度でも勝ち負けできるだけの力がないとツール・ド・フランスでの復権は厳しいのではないか。
復帰後のコンタドールは能力の高さで押し切るというより、戦略で勝負に出るケースが目立っている。従って、ライバル達のマークがきつくなるクイーンステージでの勝利数は確実に減っているのである。この傾向は好調の今季にも見られることなので、コンタドール自身が能力の衰えを感じている証左でもあるように思えてならない。
今季絶好調のバルベルデも1週間のステージレースでは侮れないし、個人TTの能力を考えれば、昨日のゴールスプリントでも3位に食い込んでいるクヴィアトコウスキーも怖い存在ではある。ただ、ツール・ド・フランス総合優勝を狙うのなら、このあたりのライバルは蹴散らしておかないと話しにならない。
この大会もいよいよ最後の個人TTを残すのみである。25.9kmのTTなら1分程度のタイム差は簡単についてしまう。バルベルデとは12秒差、クヴィアトコウスキーとは41秒差では予断は禁物である。幸い、コースは300m程度の登りが2箇所あるので、コンタドール向きではあるのだが、総合トップの座を守り切れるのかに注目したい。
コンタドールはこの大会の後はしばらく休養し、いよいよクリテリウム・ドゥ・ドーフィネからツール・ド・フランス本番へと向かうことになるようだ。ツール・ド・フランスは1度総合優勝から遠ざかると復活の難しい大会である。特に連覇していた選手が間隔を明けて勝利したのは1974年のエディ・メルクスと1981年と1985年のベルナール・イノーだけである。
個人的にはベルナール・イノーのように飛び飛びでも勝利を重ねて欲しいものだと願っている。奇しくもイノーがツール・ド・フランスで初めて総合優勝を挙げたのも24歳のとことである。その後、膝の故障などもあり、80年と83年~84年(83年は不参加)で総合優勝を逃しているが、85年の勝利で5勝クラブの仲間入りをしている。
今年で32歳を迎えるコンタドールは、年齢的に5勝クラブ入りは難しいとは思うが、少なくとも後1・2度は総合優勝争いが出来る選手だと思っている。TT能力の衰えは気になる材料ではあるが、そこは3週間に渡る長丁場であり、戦術や駆け引きが勝敗を分ける大会であれば、彼の経験値がフルームの能力を凌駕する可能性もゼロではないと思っている。
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