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ショートクランクのメリットを考える

2024-12-26 09:24:20 | ロードバイクの科学
 「てこの原理」は中学校の理科で誰もが学んだ原理ですが、自転車には多くの「てこの原理」が活かされているのです。まず、車輪の向きを変えるハンドルは力点が支点から遠いところにあるので小さな力で、向きを変えることができるのです。自転車を止めるブレーキやホイールを回すときのクランクなどもそのひとつです。

 てこ(Leverage)とは、弱い力で重たいものを動かしたり、微小な運動を大規模な運動に変換する道具のことです。自転車はクランク軸が支点、ペダルが力点ですが、作用点はどこになるのでしょう?支点を中心に回転する輪軸がある時、力点は力を加える点(ペダル)、支点(クランク軸)は動かないよう固定しているため、力点を動かすと作用点が動く仕組みと考えるとチェーンリングが作用点ということになります。

 従って、「てこの原理」からすればクランクは長い方が少ない力で大きな力を生むはずなのでクランクは長い方が有利とされてきたのです。ただ、タディ・ポガチャルのように高いケイデンスで走る選手にとっては、ショートクランクの方が有利だという意見が出始めているのです。

 確かにてこの原理からするとクランクは長い方が良いはずなのですが、自転車の作用点は円形のチェーンリングだということを忘れてはいけません。クランク長に合わせてチェーンリングも大きくしているのならともかく、同じチェーンリングでは1踏みでのチェーンリングの回転距離は同じです。ならば、短いクランクで回転数を増やした方が回転距離は長くなり、速く走ることが出来るのではないかと考えた結果なのかもしれません。

 実際にプロ選手でもクランク長を170㎜から165㎜へ変更したら「回しやすくなった分、ケイデンスが少し上がって、大きな回すものが短く(小さく)なったので、ひとペダルごとの仕事量は減って、回転数が増えた」と答えているのです。

 165㎜と170㎜では6Wの差が生まれますから、ペダルが重く感じても不思議はありません。クランク長を長くすればパワーは出せますが、それが継続できるかとなると話は別なようです。長時間脚を動かし続けるロングライドなら尚更でしょう。個人的には高いケイデンスが維持できる心肺能力がありませんが、ショートクランクなら少ないパワーでもある程度脚は回ってくれるはずなのです。

 オリンピックチャンピのレムコ・エヴェプールはフロント60-46Tのチェーンリングに165㎜のクランクを使用しています。また、今年トリプルクラウンを達成したタディ・ポガチャルも58-46Tに165㎜のクランクを使っています。エヴェプールは身長に合わせた妥当な選択ですが、ポガチャルはケイデンスを上げるための選択です。プロ選手の真似をすることが必ずしもメリットになるとは限りませんが、少なくともエアロフレアハンドルはプロを参考にして良かったと感じています。今、スマートトレーナーに使用しているのはCAAD10でクランク長は165㎜で、以前はCAAD12の170㎜でした。脚への負担は今の方が少ないように感じていることは事実です。

 ここ数年はフレアハンドルがプロの間で流行し、メーカーも市販車にフレアハンドルをアセンブルするモデルが増えていますので、来年はショートクランクが流行になっているかもしれません。私も来年はミッドコンパクト(52-36T)に165㎜のクランクセットに交換しようと考えているところです。
 

 




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