ブエルタ・ア・エスパーニャの総合優勝こそあるものの、出場停止処分明けのコンタドールの走りには明らかに翳りがあった。昨年のツール・ド・フランスではフルームに6分以上もの差を付けられ表彰台を逃した時には、王者の時代は終わったのかもしれないと感じたものだ。彼にとっては惨敗ともいえる結果だったからだ。
ただ、2014年シーズンのコンタドールはいささか違っていた。シーズン初戦となったヴォルタ・アン・アルガルヴェでは、昨年のツール・ド・フランスでクインターナとマイヨブラン争いを繰り広げ今季も好調のクヴィアトコウスキーに19秒差の総合2位で終えて迎えたティレーノ~アドリアティコで、その片鱗が明らかになった。
昨年の同レースでは、ニーバリ、フルームに次ぐ3位だったコンタドール。ケガでフルームは欠場し、替わりに出場したリッチー・ポートもリタイヤで、ライバルが少なかったことも事実だが、昨年のツール・ド・フランスで遅れをとったクインターナや昨年の覇者ニーバリ相手にどこまでやれるのか?正直あまり期待はしていなかったのである。
ところが、チッタレアーレにあるスキー場セルヴァロトンダにフィニッシュする今大会最長244kmの第4ステージでクインターナを破り優勝すると、続く第5ステージではゴールまで32kmを残して単独アタックを見せ、マリアアッズーラのクヴィアトコウスキーを奈落の底に叩き落し、最大のライバルであったクインターナにすら2分以上の大差を付けて圧勝して見せたのである。
出場停止明けのコンタドールはいささか無謀とも思われる奇襲攻撃を見せることが多かったが、昨年のツール・ド・フランスでは全て不発に終わっている。このレースでもスカイが万全の体制で望んでいればどうなったか分らないが、他チームには完勝であった。往年のコンタドールが戻って来たとは云えないまでも、出場停止明けの中では最も調子が上がっているように見えたのである。
2012年にはブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を飾っているものの、あれは奇襲作戦が見事に嵌った結果である。感動的ではあったものの、その裏にはギャンブルをしなければ勝てない事情があったことは確かである。ただ、この時は復帰直後でコンディションがあまり良くなかったからだろうと思っていたのだが、わずかステージ1勝に終わった昨シーズンを見ると、王者の復権は難しいと感じずにはいられなかったのである。
確かに、クレンブテロール問題が浮上した2010年後半からコンタドールは往年の輝きを失っていた。コンタドールがツール・ド・フランス初優勝を飾ったのは2007年だから、もう7年以上も前のことになる。プロロードレーサーのピークが27歳から32歳だということを考えれば、もう1・2年はトップに君臨できる可能性は無きにしも非ずなのだが、若干24歳でツール・ド・フランスを征した早咲きのコンタドールにとっては、マイヨジョーヌを再び身に纏うことはもう無いだろうと、私自身も考えていた。ましてや、あの強いクリス・フルームの存在を考えると、その考えは益々強まるばかりだったのである。
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