名前をつけないで保存
―液体の糸の流れる音―
子供は「今」を歓んでいる
大人は「今」をお願いしている
子供と大人の間は幾つもの迷路になっている
歓待されている「今」と
疎まれている「今」は
連結して
列車となってレールの上を
果たして走ることができるのか
前も後ろも左も右も
あるはずの
結びの糸は見つからない
見つけようとする人と
あっけにとられている人と
「今」をまんなかにすえて
子供と大人を
結びつけるものが一つある
その糸は
赤い液体の糸
人の身中をとうとうと
音を立てて流れている
この赤い液体
いきものの
いのちの泉か噴水か
時々この液体の糸の流れる音が
耳に聞こえることがある
ザッザッザッザッ と
聞こえる聞こえる
ザッザッザッザッ
ザッザッザッザッ
エッ!
耳鳴りでは断じてない
耳鳴りではないから ネ!