小さい池
江戸時代から
埋められもせず
澄んだり濁ったりしながら
その池はいまもある
アメンボウの家族が
太ったり痩せたりしながら
池の主になっているだけ
ほかのいきものはすみつかない
たまにゲンゴロウがニサニチいたが
すみにくいのかすぐ立ち去った
さいきん、波紋を描くアメンボウが
ひとりになっているらしい
まわりの立木が切りとられ
この池がめだちはじめ
将来、いよいよ埋められるらしい
一疋残っているアメンボウ
じつとその日をただまつている
それでもせっせと波紋を描きながら
ひとりで、我が物顔は失はないで
夢うつつのような
波紋とあそんでいる