前回の続きです。
式から単位を落とすということは、大人のための教科書的な本でも結構あります。例えば、あるゲーム理論の本*1)に、クールノーの複占市場というものの解説が出てきますが、そこで価格pは次の式で決まるという仮定が出てきます。x,yはこの市場に2つだけある企業のそれぞれの生産量で、aはある決まった価格です。
p=a-(x+y)
なるほど、鉛筆で考えると、P=50円として例えばx+y=1000万本 ・・・、えーーー。
はい、次の式の方がわかりやすいと思います。単位はそれぞれ、価格p,aは円、x,yは本、定数kは円/本とします。
p=a-k(x+y) kは適当な定数
まあ、量そのものはひとつの文字で表し、"量=数値*単位"と表現するのが国際単位系(SI)でも推奨される表現ですし、特定の単位など入れたら式の一般性が失われそうである、ということもありますから気持ちはわかります。でもせめて量の次元は合わせないと拙いのではないでしょうか。
量の次元というのは、言ってみれば単位をもっと一般化した概念で、メートルでもキロメートルでも尺でも長さの次元という点では同じ、としてしまうものです。私が単位を付けた式を推奨するのも、ポイントは次元を間違えないようにする、という方がより本質的です。単位は、同じ量を表す単位であっても国や時代により色々と大きさが違います。単位をどんな大きさに決めるかには任意性があり、恣意的であると言えます。しかし次元にはこのような任意性は少なく、異なる量の次元を理由もなく同じにすることはできません。
と言った舌の根も乾かないうちに(^_^)、次元も単位ほどの自由度はないものの恣意的なところがある、という話をします。量の次元に恣意性があるということが一番わかるのが電磁気における単位系の違いです。ここではMKSA単位系とガウス単位系における各電磁気量の次元の違いを挙げておきます。
[L] 長さの次元、[T] 時間の次元、[F] 力の次元、[I] 電流の次元
力はMKSA単位系の基本量ではなく、質量が基本量なので本来は質量の次元[M]で表すべきですが、単純化のために力の次元を使いました。本来の表現は、[F]=[M][L][T]-2を代入すれば得られます。MKSA単位系では長さ・時間・質量という3つの基本量の他に電流を基本量の一つにしていますが、ガウス単位系では基本量は3つだけであり電流は組立量のひとつです。このことをMKSA単位系は4元単位系であり、ガウス単位系は3元単位系であるといいます。
なお理化学辞典*2)の付録に"電磁気的諸量の次元"という詳しい表がありますから参考にして下さい。
ところで基本量の種類が単位系により異なるということがどうして可能なのでしょうか? 次回はその話をします。
*1) 武藤滋夫『ゲーム理論入門 (日経文庫―経済学入門シリーズ)』日本経済新聞社(2001/01) p54
*2)『岩波理化学辞典-第5版』岩波書店(1998/02)
式から単位を落とすということは、大人のための教科書的な本でも結構あります。例えば、あるゲーム理論の本*1)に、クールノーの複占市場というものの解説が出てきますが、そこで価格pは次の式で決まるという仮定が出てきます。x,yはこの市場に2つだけある企業のそれぞれの生産量で、aはある決まった価格です。
p=a-(x+y)
なるほど、鉛筆で考えると、P=50円として例えばx+y=1000万本 ・・・、えーーー。
はい、次の式の方がわかりやすいと思います。単位はそれぞれ、価格p,aは円、x,yは本、定数kは円/本とします。
p=a-k(x+y) kは適当な定数
まあ、量そのものはひとつの文字で表し、"量=数値*単位"と表現するのが国際単位系(SI)でも推奨される表現ですし、特定の単位など入れたら式の一般性が失われそうである、ということもありますから気持ちはわかります。でもせめて量の次元は合わせないと拙いのではないでしょうか。
量の次元というのは、言ってみれば単位をもっと一般化した概念で、メートルでもキロメートルでも尺でも長さの次元という点では同じ、としてしまうものです。私が単位を付けた式を推奨するのも、ポイントは次元を間違えないようにする、という方がより本質的です。単位は、同じ量を表す単位であっても国や時代により色々と大きさが違います。単位をどんな大きさに決めるかには任意性があり、恣意的であると言えます。しかし次元にはこのような任意性は少なく、異なる量の次元を理由もなく同じにすることはできません。
と言った舌の根も乾かないうちに(^_^)、次元も単位ほどの自由度はないものの恣意的なところがある、という話をします。量の次元に恣意性があるということが一番わかるのが電磁気における単位系の違いです。ここではMKSA単位系とガウス単位系における各電磁気量の次元の違いを挙げておきます。
量\単位系 | MKSA | ガウス |
電荷 | [I][T] | [F]1/2[L] |
電流 | [I] | [F]1/2[L][T]-1 |
電位 | [F][L][I]-1[T] | [F]1/2 |
電界 | [F][I]-1[T] | [F]1/2[L]-1 |
[L] 長さの次元、[T] 時間の次元、[F] 力の次元、[I] 電流の次元
力はMKSA単位系の基本量ではなく、質量が基本量なので本来は質量の次元[M]で表すべきですが、単純化のために力の次元を使いました。本来の表現は、[F]=[M][L][T]-2を代入すれば得られます。MKSA単位系では長さ・時間・質量という3つの基本量の他に電流を基本量の一つにしていますが、ガウス単位系では基本量は3つだけであり電流は組立量のひとつです。このことをMKSA単位系は4元単位系であり、ガウス単位系は3元単位系であるといいます。
なお理化学辞典*2)の付録に"電磁気的諸量の次元"という詳しい表がありますから参考にして下さい。
ところで基本量の種類が単位系により異なるということがどうして可能なのでしょうか? 次回はその話をします。
*1) 武藤滋夫『ゲーム理論入門 (日経文庫―経済学入門シリーズ)』日本経済新聞社(2001/01) p54
*2)『岩波理化学辞典-第5版』岩波書店(1998/02)
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