「
午前5時45分。4号機原子炉建屋4階から炎があがっているのが確認された。使用済み核燃料を保管していたプール内の水が、核燃料が発する熱で蒸発。水からむき出しになり、さらに高温になった核燃料の表面で水素ガスが発生し、この水素ガスが爆発した可能性がある。
現場には、消防車4台、消防隊員17人が駆けつけた。
発電所が消防隊に示した敷地内の放射線量は、午前6時20分現在で1時間あたり最大400ミリシーベルト。被曝(ひばく)線量の1年間の上限は、緊急時でも本来100ミリシーベルトで、今回の事態を受けて上限が引き上げられたが、それでも250ミリシーベルトだ。この値を、わずか40分ほどで超えてしまうほどの放射線量。極めて危険なレベルだ。
指揮者1人が、発電所内の緊急時対策室で消火活動について打ち合わせをした。残る隊員16人が正門の外で待機する中、3号機から白煙が上がっているとの情報。核燃料の熱でプールの水が沸騰し、放射性物質を含んだ湯気が建屋の外に噴き上がっていたとみられる。結局、消防隊は現場を確認することなく、午前11時半に引き揚げるしかなかった。
「人が近づいていないので、正確な把握はできておりません」
16日夕方、東京電力本店で開かれた会見。担当者は、強い放射線で作業が困難になっていることを訴えた。現場の状況すら把握できない。4号機原子炉建屋から上がった炎はその後、消えた。だが、消えていることを確認できたのも、遠く離れた高台からだ。
東電によると、同日午前には180人以上が福島第一原発に集まり、消火作業や給水作業に備えた。しかし、午前10時43分、「原発敷地の正門付近で、毎時100ミリシーベルトの放射線量が測定された」との報告があった。避難指示を出すしかなかった。
約1時間後、その測定値は誤報と判明したが、避難した後だった。
この日、陸上自衛隊のヘリコプター3機も現場に向かった。UH1ヘリコプター1機とCH47輸送ヘリコプター2機。搭乗している隊員は全員、防護服を着用していた。かなり動きが制約される中での操縦だ。
周辺の放射線量を測定し、作業に問題がないと判断されれば、(1)CH47に最大積載量が7.5トンの水嚢(すいのう)をぶら下げて海水をくみ上げ(2)原子炉上空でホバリングをしながら水を投下する――という段取りだった。
山火事などで作業自体は手慣れている。とはいえ、原子炉上空でホバリングしながら水を投下するのは「考えたことさえない」(自衛隊幹部)という。
結局、指揮官が「作業の継続は危険」と判断し、この日の投下は見送られた。
ただ、消火活動が成功しても問題が解決するわけではない。
1~3号機では原子炉内の冷却水の水位が下がり、海水を注入して冷やす作業が続けられている。だが、高温の燃料棒が露出して空だき状態になる恐れがある。地震発生時には停止中だった4号機でも、燃料棒が貯蔵されているプールの水が蒸発、燃料棒がむき出しになる危険性がある。
」
写真:福島第一原発の(手前から)1号機、2号機、3号機。白煙の奥の白い壊れた壁が4号機=15日午前7時33分、東京電力提供
2011年3月16日22時10分
何とかしたいのに、近づけない――。爆発や水蒸気の噴出、火事と相次ぐトラブルをなんとか収めようと、福島第一原発の中では16日も早朝から、空と陸から必死の作業が続けられた。だが、高い放射線によって状況を把握することすら難しく、作業は思うように進んでいない。午前5時45分。4号機原子炉建屋4階から炎があがっているのが確認された。使用済み核燃料を保管していたプール内の水が、核燃料が発する熱で蒸発。水からむき出しになり、さらに高温になった核燃料の表面で水素ガスが発生し、この水素ガスが爆発した可能性がある。
現場には、消防車4台、消防隊員17人が駆けつけた。
発電所が消防隊に示した敷地内の放射線量は、午前6時20分現在で1時間あたり最大400ミリシーベルト。被曝(ひばく)線量の1年間の上限は、緊急時でも本来100ミリシーベルトで、今回の事態を受けて上限が引き上げられたが、それでも250ミリシーベルトだ。この値を、わずか40分ほどで超えてしまうほどの放射線量。極めて危険なレベルだ。
指揮者1人が、発電所内の緊急時対策室で消火活動について打ち合わせをした。残る隊員16人が正門の外で待機する中、3号機から白煙が上がっているとの情報。核燃料の熱でプールの水が沸騰し、放射性物質を含んだ湯気が建屋の外に噴き上がっていたとみられる。結局、消防隊は現場を確認することなく、午前11時半に引き揚げるしかなかった。
「人が近づいていないので、正確な把握はできておりません」
16日夕方、東京電力本店で開かれた会見。担当者は、強い放射線で作業が困難になっていることを訴えた。現場の状況すら把握できない。4号機原子炉建屋から上がった炎はその後、消えた。だが、消えていることを確認できたのも、遠く離れた高台からだ。
東電によると、同日午前には180人以上が福島第一原発に集まり、消火作業や給水作業に備えた。しかし、午前10時43分、「原発敷地の正門付近で、毎時100ミリシーベルトの放射線量が測定された」との報告があった。避難指示を出すしかなかった。
約1時間後、その測定値は誤報と判明したが、避難した後だった。
この日、陸上自衛隊のヘリコプター3機も現場に向かった。UH1ヘリコプター1機とCH47輸送ヘリコプター2機。搭乗している隊員は全員、防護服を着用していた。かなり動きが制約される中での操縦だ。
周辺の放射線量を測定し、作業に問題がないと判断されれば、(1)CH47に最大積載量が7.5トンの水嚢(すいのう)をぶら下げて海水をくみ上げ(2)原子炉上空でホバリングをしながら水を投下する――という段取りだった。
山火事などで作業自体は手慣れている。とはいえ、原子炉上空でホバリングしながら水を投下するのは「考えたことさえない」(自衛隊幹部)という。
結局、指揮官が「作業の継続は危険」と判断し、この日の投下は見送られた。
ただ、消火活動が成功しても問題が解決するわけではない。
1~3号機では原子炉内の冷却水の水位が下がり、海水を注入して冷やす作業が続けられている。だが、高温の燃料棒が露出して空だき状態になる恐れがある。地震発生時には停止中だった4号機でも、燃料棒が貯蔵されているプールの水が蒸発、燃料棒がむき出しになる危険性がある。
」
写真:福島第一原発の(手前から)1号機、2号機、3号機。白煙の奥の白い壊れた壁が4号機=15日午前7時33分、東京電力提供