あなたは、これまでに真実(ほんとう)に自分の健康の大切さを考えたことがありますか?あなたは、これまでに真実に自分の命の尊さと向き合ったことがありますか?青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編5が、すべてその答えを教えてくれます。
第7話/ 最後の肌の温もり
~愛の突然の死~
アメージンググレイス・・・
いつも僕のために 歌ってくれた
君の歌が もう聞こえない
あの大空に 君が旅立ってから
だけどこの瞳(め)を 閉じれば
いつも僕のそばには 君がいる
「それにしても、私たちが現実に空を飛んでいるって、考えてみると凄いことだよね・・・」
「そうだね、頬はブルブル震えて痙攣を起こしだそうだし、躰全体も海老反っていてかなり痛いけどね(笑う)・・・」
大輝と愛が、なんだかんだと話し込んでいるうちに、四人の躰は地上千五百メートルほどの距離まで降下していて、相葉と稲垣の合図ともにパラグライダー(パラシュート)が開かれた。
さすがに、パラグライダーを開く瞬間はもの凄い衝撃が躰全体に走ったが、フリーフォールのうつ伏せの状態から、人間本来の二足歩行の縦の状態になると、随分と身体も安定し楽になった。
そして、落下速度がゆっくりになったぶん、それほど風圧も感じられなくなると同時に、地上の景色が余裕を持って、よく眺められるようになった。
インストラクターの相葉と稲垣が、大輝と愛にパラグライダーの操作をしてみないかと声を掛けてくれたので、二人はすごく興味があったのでふたつ返事でOKし、大空の散歩を心の底から楽しんだ。
『大輝、私の「空を飛んでみたい・・・」という望みを叶えてくれて、本当にありがとう・・・』
『僕は、何もしていないよ、愛の「空を飛んでみたい・・・」という強い情熱が、みんなの心を動かしたんじゃないか・・・』
「そんなことはないわよ。もし大輝に、私の望みを叶えてあげたいという本当に信念がなかったら、きっとこんなふうに私の望みは叶ってなかったと思うわよ・・・」
「愛、ありがとう・・・君にそう言って貰えるだけで、僕は嬉しいよ・・・」
「私の望みは叶えてもらったから、今度は大輝の望みが叶うといいね・・・」
「僕の望み?もう叶っているじゃないか、こうして君と結婚式が挙げられたんだから・・・」
「本当にそう思ってくれいるの・・・」
「もちろんだよ・・・」
大輝のその言葉を聞いた瞬間、愛の目は自然に涙でいっぱいになっていた。
ただ、そんな幸せのひとときも長くは続かなかった。
それは、すぐ眼下に最初4千メートルの大空に向かって飛び立った、TOKIOスカイダイビングクラブの滑走路がハッキリと見えるようになり、だんだん目的地の着地場所に向かって高度を下げて近づいて行く度に、「大空を飛んでみたい・・・」という、愛が命がけで訴たえた大輝との空の上での至福の旅も、もうじき終わろうとしているからだった。
四人の乗ったパラグライダーは、大輝と愛にはかなりゆっくりとしたスピードで、目的の着地場所に向かって高度を下げているように感じたが、二人の空の上での至福の旅がもっと続いて欲しいと願う気持ちとは裏腹に、わずか十分ほどの間にもう地上にいる人たち姿がハッキリと見える、二百メートルか百五十メートルくらいの距離まで降下していた。
そして、地上までの距離が二十五メートルほどの所くらいまで来ると、最初は大輝がインストラクターの相葉に言われて、着地時の用意のために両足を前方に投げ出すような格好で、ランディング(上半身と下半身が直角になるような形を取り、尻で滑るようにして着地すること。)する準備をとった。
すぐに、愛も大輝に続いてインストラクターの稲垣に指示をされ、同じようなポーズを取った。
そして、着地時に多少の衝撃があったこともあり、慣れてないせいで前方につんのめりそうになる場面はあったものの、無事に二人とも無傷で目的の着地場所に、予定通りに降り立つことが出来た。
地上に到着し、大輝と愛がジャンプスーツを脱いでみんなが待っている場所に向かうと、泰三と百合子を始めに今日の結婚式に出席してくれた親戚や、TOKIOスカイダイビングクラブのスタッフたちが、大きな拍手で二人を出迎えてくれた。
その中には、さっきまでセスナ機を自ら操縦していた、このTOKIOスカイダイビングクラブのオーナー兼インストラクターの谷口の姿もあった。
その後、TOKIOスカイダイビングクラブの事務所に行くと、通常のホテルでの披露宴時のようにはいかないものの、それなりに大輝と愛の二人の今日の結婚式のために、わざわざ百合子が東京にあるホテルから取り寄せた、祝宴用の料理や飲み物類が用意されていた。
まず結婚披露宴を始める前に、“祝 亀梨大輝・石坂愛様ご結婚おめでとう”書かれた看板の前で、みんなで記念撮影を行うことになったが、大輝と愛が一緒に並んで写真を撮ることに対して、泰三は相変わらず不愉快な顔を見せたが、みんながいる手前もあったからだろう。
そのことを口に出して、いっさいそれ以上に何か小言などを言うことはなかった。
記念撮影が終わると、泰三が愛の父親として家族を代表して、今日の二人の結婚式に出席してくれたみんなに謝辞を述べた後、泰三と百合子の関係の親戚代表や、TOKIOスカイダイビングクラブのオーナーの谷口ら何人かが、大輝と愛に対して次々に婚礼の祝いの言葉を伝えた。
そして、最後は愛の主治医であり今日セスナ機の機内で、大輝と愛が仮の結婚式を挙げるときに神父の代役を引き受けてくれた、堂本誠の乾杯の音頭で結婚披露宴が始まった。
だが、そんな和やかな会場のムードとは一変し、愛本人に立ちくらみがするほどのかなり疲労感が見られたことから、急遽堂本の視触診の結果“すぐに病院に帰って精密検査をする必要あり”と判断されたために、わずか大輝と愛の結婚披露宴は一時間ほどで打ち切られた。
その結果を受けて、大輝は今日世話になった谷口や、TOKIOスカイダイビングクラブのスタッフの皆に礼を言うと、愛を泰三や百合子らと一緒に慶都病院まで送り、その日の夜行列車で“風のある町”に帰った。
愛は、大輝と別れるその瞬間まで、絶対に片時も彼の手を握ったまま離そうとしなかった。
きっと、愛にはこれが大輝の躰の温もりを直接肌で感じる、最後の時間(とき)だと分かっていたからかも知れない。
――♪ただ、キミを愛してる・・・・・――
大学のゼミの授業中に、大輝の携帯電話の着信音(着歌/中島美嘉の「雪の華」)が教室中に鳴り響き、百合子から愛の症状に急激な異変が起こり、彼女の死を知らせる電話が入ったのは、彼が“風のある町”に帰ってから三日後のことだった。
「か、亀梨さん、あ、愛が今日の十三時二十五分に亡くなりました・・・」
「えっ、えっ、えっ!!」
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