教育科学文化機関(ユネスコ)の「文化遺産保全のためのアジア太平洋遺産賞」の功績賞に選ばれた。戦後の建築物としては国内初の受賞で、同町は「建築関係者や町民の声で保全活動が進んだ。大変名誉なこと」と喜びの声を上げている。
同賞は、アジア太平洋地域の文化遺産の保全推進を目的に、平成12年に創設された。民間や官民共同で保存・修復事業が行われた、建築から50年以上経過している歴史的建造物が対象となっている。
国内での受賞は、3年前に受賞した横浜市の商業施設「横浜赤レンガ倉庫」に続く2例目。今年は16カ国47件の応募の中から、町役場を含む12件が選ばれた。今までの受賞は寺院や修道院、集落などが多く、戦後の現代建築物が選ばれるのは極めて珍しいという。
旧庁舎は地下1階、地上1階建ての鉄筋コンクリート造り。早稲田大学名誉教授の今井兼次氏の手で設計され、日本建築学会作品賞を受賞するなど、現代建築の傑作として知られている。しかし、建築から半世紀以上が経過して老朽化が進んだため、町は解体も含めた庁舎のあり方について検討していた。
この状況を受け、庁舎に親しみを持つ地元住民から解体に反対する声が上がったほか、県内外の建築関係者からも保存を訴える意見があり、町の検討委員会は20年に保存を決定した。設計当時の姿を可能な限り残す形で、会議室の飾り天井や議場を修復するなどしたほか、耐震基準に合わせた補強工事を実施し、不足した事務スペースは庁舎を増築するなどして対応。昨年3月に再生工事が完了した。
ユネスコは旧庁舎の再生事業について、「一時は解体の危機にも瀕したものの、歴史ある公共空間を地元で継続して活用できる形で再生された」と評価。さらに「他の存続が危ぶまれる現代建築のおかれている状況にも目が向けられることになるだろう」としている。
茂原のすぐ隣の町ですから、機会がありましたら見てください。