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「俺のおすすめね……。ああ、分かった。ところで、お連れはずいぶんとご立腹なようだが、何があった?」
「ええ。さっき、ここの裏にある黄色い屋根の料理店に行ってきたんですが、口にあわなかったみたいで。僕は美味しく頂いたんですけどね」
「喧しいぞ。今我の口の中は焼けた鉄を口に含んだときのように猛烈に熱くてかなわんのだ!」
「お前は焼けた鉄を口にいれたことがあるのか?」
すかさず怒鳴り返してきたアダムとは別に、何かが動いた気がして首を振る。席ひとつ分空けたカウンターの上で飲んでいた一団の中から、こっちを見ているキラキラしたオレンジと目が合った。僕が気づいたと向こうも気づいたみたいで、走って僕の手にすり寄ってきた。
「え、ちょ、君もしかしてフェネネット? でもこの毛の色……」
フェネネットは、木の上に住んでいる四本足の細長い身体の種族だ。特徴的なのは、濃い橙色の瞳と長くてツヤツヤとした長い毛。この毛は普通、茶色から金色らしいんだけど、後ろ足で立って僕に何かをアピールしてくるこのフェネネットは、黒毛だった。照明が暗いせいで見間違えたかと思ったけど、どれだけ近くで目をこらして見てもやっぱり黒色だった。
「ああ、そいつな。南のパイナップルの木に住んでいる群れの中で、なんでか一匹だけ黒毛なんだよ。といってもべつに虐められてる様子はねえし、何よりほら。もっと珍しいのがいる」