1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。
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「変わらぬ天地の恵みに感謝を。……いただきます」
『いただきます』
皆で手を合わせて、温かいスープに口をつけた。
人間のエクレアさんはともかく、頼りなく揺れている蝋燭の光しかない部屋で司祭様と向き合っていると、少しだけ落ち着かない気分になる。ただでさえ人間には獣人の表情は分かりにくい……
「お口にあいませんでしたか」
「え?」
「なにやら気難しい顔をしていたようですから」
慌ててパンを飲み込み、笑顔を作った。
「いえ、とてもおいしいです。ただ、階段と迷路の街という名は伊達ではなかったと思いまして」
まさか、あなたのことを不気味に思っていました、なんて言えなかった。
「階段と迷路の街?」
「あ、すいません。ここのことを僕ら人間はそう呼んでいるのでつい……。それで、先ほどアダムと辿り着けないなら宿の意味がない、入口近くにあればいいのに、という恨み言を少し。エクレアさんに出会えてなければ、よからぬ面倒に巻き込まれていたかもしれません」
「ああ、きっとそうでしたでしょう。なぜなら今夜は百年に一度の大祭、エクリプスの夜ですから」
「っ、なん、今、なんと言った⁉ エクリプスの夜だと? 真か⁉」
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できれば使いたいというと快く頷いてくれたので、深く頭を下げて感謝した。
「いえ、それがこの救貧院の役目ですから」
それまでずっと表情が乏しくて、僕たちに関心があるのかすらよく分からなかった彼女の顔が、ふわりとほころんだ。この救貧院のことを、心から誇りに思っていることが伝わってくる笑顔だった。
そのまま彼女は一礼して辞し、僕とアダムはそれぞれ椅子とベットに腰掛けてようやく一息をつけた。
「……よもや、こんなことになるとはな。ここへ来るべきではなかったかもしれん」
「どうしたんだ、いきなり。らしくない」
驚いて思わずアダムの額に指をあてて熱を測ってしまった。アダムが風邪を引いたところなんて、出会ってから一度たりとも見たことがないんだけど。
「何を言っておるか! いつまでも宿に着けぬのだから当たり前であろう! そのような宿に何の意味がある。もっと入り口近くに建てるべきだ!」
なんだ、いつも通りだ。さっきの重々しい感じは、疲れすぎただけだろうと思うことにした。
やがて呼ばれた夕食の席には、パンとスープ、いくつかの甘そうな果実が並んでいた。外はすっかり日が落ちてしまったようで、ほんの少し蝋燭の明かりから遠ざかるだけで、圧迫感のある闇が迫ってきた。
ブログを始めたばかりの頃、こんなコラージュ作品を載っけたことがあります。
タイトルが「STAR LIGHT」だったんですが、今日!
訓練学校で『星雲の作り方』というのを学びました!!
そして家でもう一度復習がてら作ってみたのがこちらです!
超カッコイイ♡♡♡♡♡ と、一人でテンション上げまくってました。
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「たいしたおもてなしはできませんが、どうぞごゆっくりお寛ぎください。エクレア、お部屋へご案内を。おつかいの荷物は私が預かりましょう」
「はい。お願いします。では、こちらへ」
司祭様は僕たちに小さく頭を下げると、右奥の扉の先へ消えていった。僕たちは左奥の扉から上の階へと向かう。木の階段がギシギシと軋んだ。ちょっと静かすぎて、いいようのない不安が心の内に滲む気がした。
「ここには私と司祭様の二人しかいません。今日は他に泊まられる方もいらっしゃいませんし、ゆっくりできると思いますよ」
「それも不思議なことよ。そなたはトルルと同じ純血の人間であろう。それがなぜ、このようなところに?」
「それは私が、山に置き去りにされていた捨て子だからです。もう十年以上前の話ですが」
蝋燭の光に浮かぶ彼女の顔色は変わらなかった。今はもう、辛いと思っていることはなさそうだ。
「本当の親の記憶も曖昧ですから、お気になさらず。ただ私は、司祭様に助けていただいたご恩を、お返したいと思っているだけです」
彼女は階段を上がってすぐの部屋のドアを開けて、中の燭台に火を移した。そして僕は銅の鍵を渡された。
「それではこちらの部屋をお使いください。お食事のご用意ができましたら、また呼びに参ります。お体を清めるのにお湯は使われますか?」
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いつの間に這い出てきたのか、僕の肩の上でアダムは頷いていた。鼻の下は、相変わらず伸びたままだった。
「どうぞ、こちらです」
やがて見えてきたのは、洗練された白亜の建物だった。厚い木の扉がギィと押し開かれた。タイルを貼った床には赤いカーペットが敷かれ、温かい色味の上品な家具が並んでいた。
「おかえりなさい、エクレア。……おや、その人達は?」
柔らかく落ち着いた声は、壁の燭台に火を入れている陰から聞こえた。高い天窓から入ってくる夕日の光はか弱く、室内は薄暗くて陰にいるそのひとの顔は見えなかった。
「ただ今戻りました、司祭様。こちらの方々は先ほど蛟の三番通りでお会いしたのですが、月桂冠の宿へ行くとおっしゃられたのでお引き止めしたんです」
「なるほど。そうでしたか」
こちらに歩み寄り、光の当たるところに出てきた『司祭様』は敬虔な黒い服に身を包んだ山羊の獣人だった。
「はじめまして。この救貧院の長のようなものをさせてもらっています。皆さんからは司祭と呼ばれておりますので、そのように」
そう言って片手を差し出してきた。あまり熱を伝えない動物特有の皮膚を持つその手を軽く握り返す。
「はじめまして、司祭様。僕はトルヴェール・アルシャラール、こっちは連れのアダムです。お言葉に甘えて、今夜はこちらで休ませていただくことになりました」