猛暑のこの夏、東京電力エリアの昼間の電力消費のほぼ4分の1を太陽光発電が担っています。8月10日(水)の実績を「でんき予報」のデータから見える化して見ました。
晴天だったこの日は午前10時30分から午後1時にかけて、太陽光発電は1200万キロワットを超えて発電しました。原発1基の発電が100万キロワットと言われていますので、原発12基分を太陽光発電で賄えるようになったわけです。この日は最高気温が35.3度の猛暑で、平日のオフィスビルの冷房需要がピークを迎える午後1時過ぎに、全体の消費電力は5400万キロワットを超えてピークを迎えますが、電力需要のピーク時には太陽光がどんどん発電するので、昼間の消費電力に占める太陽光発電の割合は2割を超え、4分の1近くまで上昇しました。東日本大震災での福島原発事故が起きる前は、太陽光発電はほとんど無視できる規模だったので、10年で様変わりです。
全体の使用実積から太陽光発電を差し引いて「太陽光を除く電源」を計算してみると、2つ上の図の灰色の線のようになります。この分は主に火力発電で電力を供給しないといけないわけですが、太陽光発電の普及で、供給側が火力を強めてせっせと発電しないといけない時間帯は、今や昼間ではなく、太陽が沈み、電灯の需要が増える夕方にピークを迎えることがわかります。
民主党(当時)の野田佳彦政権時代の2012年7月に施行された太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)。この制度で「もうかる」と民間は一斉に太陽光発電を始め、今の太陽光発電の供給が実現したわけです。10年後の2022年の猛暑の今年、この制度の効果が見える形で示されています。FITはその後、費用負担が大き過ぎると改められましたが、最近の原油高、脱炭素の流れからは、FITを復活させても経済的にペイする可能性はありそうです。
自民党の菅義偉政権が打ち出した「2050年に日本の温暖化ガス排出量を実質的にゼロ」にするには、もっともっと太陽光発電を増やす必要があります。小池百合子都知事が進める都内の新築物件の太陽光発電設備の義務化に加えて、全国でも耕作放棄地を有効活用して太陽光発電所を増やす必要があるでしょう。電力会社同士がでんきを融通する電力線を太くする工事も進めていますので、日本はもっともっと自然エネルギーででんきを賄える国に変われるのではないでしょうか。
太陽光発電の固定価格買い取り制度は、家庭も電気代で再生エネルギー賦課金として別途負担することになっていて、賦課金が膨らんだことから、固定価格は段階的に引き下げられてきました。しかし、最初に1キロワット時42円という、思い切った価格を設定したために、それが呼び水となり、太陽光発電所が一気に広がった側面も否定できません。