(NYCTCM/Creative Commons)
人は長年、仕事をしていく上で、様々な過程と段階を経ながら、徐々に経験を積んでいきます。もっとも厄介な時期は、知識と経験が中途半端な、いわゆる「コップ半分」の状態です。まだ仕事を始めて間もない新人なのに、まるで全てを知っているかのように自信満々で、人の忠告は全く耳に入らず、頭を下げて教えて貰おうという気持ちがありません。私も漢方医学を学んで間もない頃に、このような経験をしたことがあります。今思い出すと、思わず苦笑いをしてしまいます。私は外国の大学院でアメリカ人の教授から漢方医学を学んだので、私の「コップ半分」の状態は更に深刻でした。
私はアメリカから中国に行って臨床治療の実習をした時期がありました。その時、すぐ上の兄は、昔から私をないがしろにして来たのですが、改めて見直したようでした。また、私が海外で製造された立派な漢方医療器具を一点一点取り出して見せた時、ずいぶんと驚いた様子でした。
私が色鮮やかなプラスチック・カバーの付いた鍼を取り出した時、長年、銀の鍼を使ってきた母は眉をひそめて、「これでどうやって鍼を刺すの?」と聞きました。母は、私の方に手を伸ばして、手のツボにある合谷穴に鍼を刺すよう指示しました。私はカバーの付いた鍼を一本手に取り、そっと刺し入れてから、また抜き出した時には、少し有頂天になっていました。
母は「何にも感じなかった。どうして?」と聞きました。「感じないことこそ目標ですよ」と私は説明しました。母は自分がずっと使っている中国の銀の鍼を私に渡し、「あなた、これを使ってもう一度、同じところを刺してみて」と言いました。
「中国鍼」は私の常用鍼より何倍も太く、またカバーのない鍼の刺し方も知らなかった私は、「駄目、この鍼は太すぎて、外国人は耐えられない」と言い訳をしました。
その時、母は何も言いませんでしたが......
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