ちょっと前の書きかけだったお話、講演会で感じた事です。
’12年7月1日(日)東洋はり医学会本部で行われたもので、お話は看取りの医師、大井玄先生。
著書多数→アマゾンの大井玄先生本
演題は「人間の往生~看とりの医師の心がけること」というもの。
内容ですが「触れる事」「笑い顔」「つながりを感じさせること」の三つの事柄を紐解きながら、終末期をどのように温かく迎えてもらうかということでした。
肩書きからもお分かりのように、すばらしい頭脳と教養をもつ先生ですが、その物腰は非常に柔らかく、語りかける口調でのお話しはまさに癒しの医師、癒しという形容が適切かどうか心配なところですが、とにかくいろんなところに思いをはせる事のできた講演でした。
無意識の中で触れることにより、人は良い印象をもつということ。
私たちの鍼灸師の仕事は触れることからもまさにそう、私たち鍼灸師に何ができるか、改めて考えさせられた次第です。
特に印象に残っているのは自分が紡ぎだした「意味の世界」を大切にしてもらうということ。あやふやな記憶の中で、自身の生き様を通すべく自分の物語を紡ぎだす、それが認知症なのかもしれません。言葉により作り上げたこの「意味の世界」は認知症の中にももちろんあります。終末期医療に携わる者は患者の「意味の世界」を尊重するべきだとお話されていました。この「意味の世界」が言葉により作り上げられているということは、他人と繋がりを持てなければ誰しもが認知症と同じような反応を示してしまうといった解釈も当然のことなのだと思いました。そうなんですよね、年齢を重ねたから特別に起こる症状ではないのですよね。
「つながり」に関しても敬意を常にもちつつ、ゆったりと時間を共有し自分自身の紡ぎだした物語を気持ちよく語ってもらう。それが本当であろうがなかろうが、とにかく気持ちよく語ってもらうことで新しいストーリーが生まれる。それでいいんだと。生きている辛さを意味の世界にかくまってもらう、そのためにもゆったりお話してもらう時間を作っている、そんな話であったと記憶しています。
実際に看取りに携わる医師の生の声を聴くことができたのはとってもラッキーでした。
ただ残念だったのが事前に質問を募ったということ。
今回は講演の前に勉強会のML等を駆使して事前に質問を募りました。その質問に答えたあと、場内から質問を募ったので、お話の流れに沿った質問が少なかったのが残念でした。
事前に質問をもらうと話しの流れとは違うものになりますよね?意思表示ができなくなったときのために、法的にどういう手順で延命治療を拒否できるかとか、安らかな死を妨害するのはいかがなものなのかとか、東洋医学における五臓の内因と外因の問題が寝たきりの患者さんにどのような変化をもたらしているのかとか、事前に集めた質問は講演内容とは違うかなぁ。講演前に質問を見ていただいていたとしても、先生のお伝えしたい内容とかけ離れている場合もあるでしょう。今回のお話のキーワードが「触れる」とか「笑顔」とか「つながり」とか「言葉の意味」なので、それらに触れる前に事前質問に時間がつぶされてしまったは残念でした。
終わった後でぶつぶつ言んじゃない!なんてお叱りを受けそうですが、あのような場での質問は難しいですね。お話がお話だけに反芻する時間も必要でしたし、そのように考えると、私自身すくっと質問が浮かぶような訓練をしなくては…なんて思ってしまいます
じゃあ、どんな質問したかったの??なんて聞かれたら、今思えばネグレクトに関してどのようにお考えなのかお聞きしたかったなぁ…
認知症患者の家族の負担はとても大きいです。
介護者いわく、「死を待っているようでつらい」
このような、ご家族が介護に積極的な場合でそれで疲弊されている場合はまだいいんです。
介護に疲れ果てて、認知症を患う近親者を部屋に閉じ込めて隔離し食事だけを与えるといったネグレクトをおこしているような場合はどうしたらいいのか、「つながり」を介護者自身が切ってしまった場合はどうしたらいいのか、聞いてみたかった気がします。
現に知り合いの家では、あまりにも理不尽な振る舞いが続く事により介護者がつかれきって、座敷牢の中に閉じ込めざるを得ないと行っていました。そうしなければ、こちらの心が折れてしまうと…
あと、つむぎだす話をどのように気持ちよく話ししてもらうのか…
とにかく相槌をうつことによりお話の流れをとめない、カウンセリングでも行う方法ですが、そのような治療は時間がかかりますよね。
先生のやり方だと多くの患者さんを診る事ができないように感じます。
優秀な看護師がついているのかな…
とてもステキなお話でしたが実際問題としてこれを治療に組み込むとなると、物理的に大変なのではないかと感じてしまいました。
その場で質問が思いつくような人になりたいなぁ…
あとで色々出てきても遅いからなぁ…
なかなか難しいですね。
おおした
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