質問
イスラムの教えと普通の信仰者の現実の行動の乖離が非常に大きいのはなぜでしょうか。無責任で口ばかりで、アラブの童話を見ても、「騙される愚か者の方が悪い」という結末になっているのが多いように思うし、現実もその傾向がありますが?
回答
自分をムスリムだ、と名付けている人たちの中には、実際には、本当の意味で「ムスリム」でない人がたくさんいます。
彼らは、ただ、「ムスリムの社会に属している人」、というだけです。
そこには、大きな差があります。
現在は、イスラームがあり、本当の「ムスリム」がいる一方で、それとは別に、「ムスリム社会に属している人たち」が存在します。
これはとても大切なことで、ムスリムでない方たちに、私たちがきちんと説明すべきことです。
イスラームというのは、神から啓示された教えです。
神からその教えを啓示された預言者ムハンマド(彼に平安と祝福がありますように)が、私たちに教えてくださった教えです。
「ムスリム」というのは、その教えに従って生きている人のことです。
神が教えたように、神に反することなく、その教えに沿って生きようとしている人のことです。
しかし、「イスラーム社会に属している人たち」というのは、自分達のことを、「ムスリム」と呼んではいますが、実際は、イスラームのことを何も知りません。
礼拝も断食もしなければ、他人を尊重することもなく、働くこともなく、向上心もなく、他人を害して平気な顔をしている、、、こういう人は、イスラームの教えとは関係がないことをしている人たちです。
ただ、彼らは自分たちを、「ムスリム」という名で呼んでいますが、実際には、イスラームの教えを実践したことがないのです。
それは、例えると、木で家具などを作り、先祖代々、大工の仕事をしている家のようなものです。
その地域の人たちはみんな、「あそこは、大工の家だ」と呼びます。
おじいさんが大工で、その息子が大工で、、、と続いていたため、現在もその家は、人々から、「大工の家」と呼ばれていますが、実際には、もうそこの人たちは、サラリーマンになっていて、まったく大工の仕事について、何も知らなかったりします。
それと同じような状態が、ムスリム社会に起こっています。
母親と父親は、ムスリムであったけれど、子どもたちはイスラームのことをまったく知りません。
それにも関わらず、彼らは、「ムスリム」と呼ばれてしまいます。
あそこは「ムスリムの家だ」と呼ばれてしまいます。
それは、ただ「家系」であるだけで、「宗教」ではありません。
彼らは、本当の意味で、イスラームを実践している「ムスリム」ではないのです。
日本人留学生:「質問者は、住んでいるイスラーム国で、嘘の話をされて、お金を騙されて取られたりして、ひどい経験をしているようです。」
あなたにお金を求める人々というのは、真の「ムスリム」ではないことを知ってください。
もし、本当の「ムスリム」が、実際に貧困に陥り、お金に困っていたとしても、イスラームは、彼に威厳を保つよう教えます。
彼は、他の人に、自分から、「私は貧しくて困っている」と言うことも、お金を求めることもないでしょう。
イスラームは、彼に働くことを命じます。
そして、人々の前では、よく働いているまじめな人という印象しか残さず、自分が困っているところを人に見せたりしません。
あなたが出会われた、自分のことを「ムスリム」と呼んで、あなたを騙すような人たちには、アッラーの精算が必ずあります。
「ムスリム」と、「ムスリム家系に生まれてイスラーム社会に属する人」というのを、区別して考えていただかないと、現在のムスリム社会の中では、とても混乱してしまうことでしょう。
彼らを本当のムスリムだと、あなたが誤解してしまうののは仕方のないことですが、事実として知っておいていただきたいのは、残念なことに、彼らがイスラームを知らないにもかかわらず、自分のことを「ムスリム」と呼んでいることについて、イスラームの教えは何の関係もない、ということです。
質問
豚肉。不浄というのがわかりません。今のハイテク時代、非常に衛生的な肉を生産する事も可能です。
回答
ムスリム達が、豚肉を食べないのは、衛生的に不浄だから、という理由ではありません。
アッラーへの崇拝行為として、食べないのです。
ムスリムというのは、アッラーが命令したことに従い、禁止したことをやめる人です。
現在では豚肉を衛生的に処理をして、汚物などを食べない豚を養育することが可能でしょう。
ですが、それだからと言って、ムスリムが豚肉を食べてもよくなった、ということはありません。
この世界をお創りになられた創造主が、それを食べないように、と教えてくださっているものを、ムスリムは、アッラーを讃える行為として食べません。
一部の国では、豚の養育に気をつけて、豚が自分の糞や、人間の汚物を食べたりしないように飼育しているかもしれませんが、今でも多くの国では、人間の生活圏から発生する生ゴミや人糞をそのまま養豚に用いられることが伝統的な養豚法であるため、まだまだ衛生的に管理されてずに育っている状態が多くあります。
仮に、すべての豚が衛生的になったとしても、私たちが豚を食べないことは、アッラーへの服従を現すことが目的ですから、変わりません。
私たちは、アッラーの僕(しもべ)なので、崇拝行為として、豚を食べず、崇拝行為として、お酒を飲みません。
イスラームがお酒を禁じているのは、お酒が、アッラーが人間だけに与えてくださった「理性」を失わせるものだから、ということを知った後でも、ムスリムは、理性を失うからお酒を飲まない、のではなく、アッラーへの崇拝行為として、お酒を飲みません。
アッラーが、何が私たち人間にとって、一番良く、何が私たちを害するかということを最もよくご存知ですから、命じられたことに従い、禁じられたことをやめる、という崇拝行為として、ムスリムは、それを行うのです。
質問
なぜ、男性の証人は一人でよく、女性は2人でないといけないのか。女性の人格、思考力に対する偏見ではないのか。昔これを日本人ムスリムに聞いたら、「女性は心が優しいから、悪人のことでも本当のことが言えない」「女性には証言は負担だから」「女性は生理が来ると感情的になり、正しい判断ができないから」と言われましたよ。これは男性の思い込みじゃないですか?
回答
イスラームにおいて、女性に対する偏見はありません。
イスラーム法における義務においても、善行をした際にアッラーからもらえる報酬においても、女性は男性とまったく同等です。
しかし、生物学的な女性の生態という点において、体のしくみということでは、女性と男性では違っているというのは、周知の事実です。
この相違は、女性の欠陥というわけではありません。逆に、この相違こそが、人間の生を完成させるために、大きな役割を担っているのです。
この生物学的な男女の相違というのは、女性の価値を下げるものでも、社会的地位を奪うものでも、仕事の欠陥を生むわけでもありません。
女性が、男性よりもずっと仕事ができるということも、大いにあります。
しかし、この相違というのは、先ほど申し上げたように、生命を維持させ、人間の生を完成させるためのものです。
たとえば、女性の生理のことをおっしゃっていましたが、生理というのは、人類の生命を存続させ、人間の生を完成させるために、必要不可欠なものです。
女性が妊娠し、出産する、というのは、人類の存続に不可欠だからです。
ですから、生理ということひとつをとっても、それは、男女間の相違ですが、女性の欠陥ではまったくなく、反対に、それがなくては人類が存続できない、生を完成させるために、不可欠な、とても重要なもので、女性に尊厳を与えるものです。
ですから、それ自体が、女性の地位を降下させたり、女性を害したりするものではまったくくありません。
しかし、証言、という点においては、一般的に記憶力という点だけをもって比較すると、男性と女性では相違があります。
女性の社会的地位が向上して、女性の生活が家から社会へと広がりましたが、女性の生物学的な体のしくみは、変えることができません。
生理が来れば、血液が体から不足することによって、記憶力が普段よりも劣ります。
(参考:http://diamond.jp/series/mf_rules/10019/ 女性の記憶力や学習力は、生理中に低下し、排卵前後には高まるとされている。これは、女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」のなせる業だ。そもそも、記憶をつかさどっているのは脳の辺縁系にある「海馬」という器官。ここには、見たり聞いたりした情報が一時的に「短期記憶」としてストックされている。短期記憶はその後、大脳連合野のいろいろな部位に保管されて「長期記憶」となり、必要に応じて海馬に呼び出される。一連の働きに欠かせないのが、エストロゲンである。海馬の活性化には「長期増強」と呼ばれるシナプスの働きが必要になるが、エストロゲンは海馬の長期増強を高めて、神経細胞を興奮させるからだ。)
ですから、証言をするために、アッラーは、男性の証人は一人、女性は2人、とお決めになられました。
記憶という点では、男性も、忘れるかもしれません。
ですから、イスラームの証言というのは、男性一人でも、不十分です。男性二人、もしくは、男性と女性二人が必要なのです。
お互いに忘れたときに、思い出せるように、です。
男性の証人も、記憶力が悪い人は証人として成立しません。
また、生理の前には、イライラしたり、PMSと呼ばれる月経前症候群に多くの女性が悩まされているのは、男性はあまりご存じないかもしれませんが、女性だったら誰もが認める事実です。
(参考:http://www.women-life.com/body/02_pms.htm 精神症状、身体症状、社会症状、仕事が面倒になる、人付き合いが悪くなる等様々な症状がありますが、その原因はまだ未解明ではっきりしていません。日本では1,300万人、アメリカでは2,700万人の患者がいると推定されていますから、月経を有する女性の半数以上がなんらかのPMS症状をもっている事になります。 )
これは、女性が、創造主によって、そのように創られているからです。
社会の中で、女性の生活がどのように変わろうとも、女性の体は変わりません。
一般的に女性が男性よりも感情が豊かであるという、アッラーのお創りになられた女性の特徴のひとつも、子どものために必要なものです。
女性の感情が豊かでなければ、母になったときに忍耐力の必要な子育てを全うすることができません。
女性の豊かな感情により、子育てが容易になり、感情の豊かさにより、子どもを愛情豊かに育てることができます。
イスラーム法は、この世を創造されて、全ての事をご存知のアッラーが、こういった両性の特性も十分ご承知の上で、公正に決められているのです。
参考:
男は論理派、女は情緒的、ビッグデータで見えてきた男女の明確な差
引用「COLOR INSIDE YOURSELF(以下「CIY」)の自己診断の結果では、様々な個人の特性が現れるものの、「論理的に思考するタイプ」と「情緒的、感情的に思考するタイプ」には、男女間で明らかな差が見られました。論理的に思考するタイプ」では全年齢層で男性の割合が高く、「情緒的、感覚的に思考するタイプ 」では女性の割合が高い、という結果に。よく言われるように「男性は論理的に考え、女性は共感力が高い」という概念があながち間違いではないことを示しています。男女の思考の違いが存在することが明らかになりました。」
脳科学者・中野信子が解説。“ジェンダー”の枠から飛び出して自由になる、頭と心のつくり方。
引用「男女の間で筋肉量や皮下脂肪の量などが異なるのと同じように、脳にも男女の違いはあります。
たとえば神経伝達物質のひとつ、セロトニンは精神を安定させることで知られていますよね。この物質の合成能力には男女で差があり、男性は女性の約1.5倍というデータが。セロトニンが少ないと欠落に過敏になりやすく、不安傾向が強まりやすいのです。」
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