80ばあちゃんの戯言(2)

聞いてほしくて(つづき)

ミラクルボディ 第一回 世界最強の人魚達(5)

2016-07-23 11:42:54 | 最近の出来事
NHKテレビ ミラクルボディ よりの抜粋

モスクワから遠く離れたバルト海の港町、

カリニングラードでイシェンコは生まれた。

イシェンコの育った1990年代、町は経済危機

で、荒れていた。

シンクロをはじめたのは5歳の時、両親は仕事で

忙しく、この市民プールだけが彼女の居場所でし

た。

母 イリーナ イシェンコさんは

”娘が5歳で、シンクロを初めた時、カリニング

 ラードには、全く物がありませんでした。

 水着は私のセーターをほどいて編み、ノーズ

 クリップは、ヘヤピンを代用していました。”

 

 やせぽっちの目立たない彼女がオリンピック

 選手になるなど誰も想像できませんでした。

 しかし、イシェンコ13歳の時の演技が彼女

 の人生を変えたのです。

 やわらかく美しい腕で、白鳥の湖を踊る姿が

 現在所属するモスクワのコーチの目に留まった

 のです。

 少女時代から指導するコーチはヴァレンチーナ

 テブリヤ コーヴァさん

 ”彼女ほどあきらめない子供は見たことがない。

  向上心の強いこどもでした。普通の子だったら、

  5回も同じことをやらせたら、泣き出してしま

  うのですが、彼女は自分から58回も練習した

  ことを覚えています。”

 ナタリヤ イシェンコさん

 ”コーチにスカウトされてモスクワに行くことに

  なった時、自分には何かに変わる可能性がある。

  でも、私の代わりなんていくらでもあるんだから

  何があっても、耐えに耐えて、絶対あきらめない

  で上を目指そうと決めたんです。”

 自分は変わることが出来る、それだけを信じて

 女王の位置まで上り詰めたシェンコ,其の信念が

 彼女の肉体に奇跡を起こしている。それは太股の

 酸素量の測定の際、同時に行った脳のデータに表れ

 ていた。

 脳も筋肉と同じように使えば使うほど、酸素を消費

 する。 合わせるのが難しい足技をイ行っている

 まさに、その時、イシェンコの脳の中の酸素が

 激しく消費されていたのだ。其の量はロマーシナ

 と比べてもはるかに多かった。イシェンコは完璧な

 シンクロを目指して、脳をフル回転させて、より

 多くの酸素を消費していたのです。

 常識をはるかに超えて縮んでいたイシェンコの脾臓、

 それは筋肉だけでなく脳でも大量に消費される酸素

 を補おうと肉体が覚醒した結果だったのです。

 ロシアンルーレットのときの水中の映像を改めて

 見ると、一つの発見がありました。

 イシェンコがロマーシナの動きをじっと見つめて

 いるのです。息苦しさの中で必死に目をこらし動き

 を一致させようと努力している。無呼吸状態と戦い

 ながら、更にロマーシナに合わせようとする離れ技

 に、イシェンコは挑んでいたのです。


 リオ オリンピックで連発の期待がかかるイシェンコ

 しかし彼女の肉体は長年の酷使の代償を背負って

 いて、今回の科学分析の中で撮影されたMRI、少女

 時代からの練習に耐えてきた彼女の筋肉は回転する

 方向にゆがみ、背骨も大きく曲がっていた。消える

 ことのない背中の痛み。しかし、今の彼女はそれすら

 も乗り越えるべき何かと考えている。

 30歳のイシェンコにとってリオがおそらく最後の

 オリンピック。 自分たちの武器である、あの、

 ロシアンルーレットの難易度を更に上げようと

 挑んでいた。

 人魚姫の作曲家を呼んで行われていた曲の手直し、

 足技の時間を更に伸ばすよう音楽の変更を申し出て

 いたのだ。

 コーチ

 ”たった、たった、たった。たった・・・・。”

作曲家

 ”一小節分ですか?”

コーチ

 ”そう。イシェンコ、それでいいわね。連続技を

 増やすのね?”
 
イシェンコ

 ”はい。やります。”

ロマーシナもうなずいた。

コーチ

 ”人魚の耐え難い苦しみの心を激しい足技で表現

  できる。”


 
 童話の中の人魚姫は人間になれない苦しみと痛みの

 中、海の泡になって、消えてしまった。

 
 其の悲しい結末は、イシェンコの描く人生の物語

 にはない。

 イシェンコさん

 ”トップアスリートである以上、自分の限界まで努力

 すべきです。そして、更に、それを押し上げようと

 しなければ、存在する意味がありません。

 困難にぶつかった時、解決法のレシピなんてないんです。

 忍耐強く自分に向き合えば、解決法が見つかります。

 答えはいつも自分の中にあるんです。


 (完)
  

ミラクルボディ 第一回 世界最強の人魚達(4)

2016-07-21 21:03:34 | 最近の出来事
NHK、テレビ ミラクルボディよりの抜粋

是までベールに包まれていたシンクロ王国ロシア。

イシェンコ ペアの身体能力のなぞを探るため

日々の訓練の場へ向った。

初めてプールにカメラが入ることが許された

イシェンコとロマーシナの練習プール。其処に居た

のは、たくさんの少女達だった。

ロシア全土から選ばれた選手だけが所属するモスクワ

市営のシンクロクラブ。下は5歳から総勢450人。

美しい容姿と、長く美しい手足が選抜の基準。

イシェンコ ペアを筆頭に現在のロシア代表の8割が

このクラブ出身だ。

少女達が、毎日必ず行う辛い訓練がある。

水中倒立パッドカーチカ。 逆さで息を止めたまま

腕をかき続ける。

コーチ

 ”もっと高く!”

この訓練をはじめるのは8歳から、無呼吸状態で筋肉を

動かせる身体に変えていくため、ひたすら、これを

繰り返す。このクラブで度々耳にする言葉がある。

テルペーニャ!(耐えるのよ) シンクロという競技を

極める時に、もっとも大事なのが忍耐強さ。 

コーチ

”痛みに耐えなさい! 逃げちゃ駄目!”

痛い痛いと少女達は泣き叫ぶ。

このクラブでは9割の少女達が厳しさに耐えかねて

去っていく。

水中で自由に動く肉体を手にするための苦しい訓練

が毎日続く。イシェンコ ペア がこのクラブに選抜

されたのは2000年。もう16年も通っている。

金メダリストになっても、練習の地道さは変らない。

まづ、500米競泳の全種目を立て続けに泳ぐ。

続いてシンクロの基本泳法、水中倒立パッドカーチカ。

練習内容に目を見張るものは何にもない。

特別なのは、この練習を幼い頃から毎日続けてきたと

いうことだけだ。其の後、昼休みもなく5時間の訓練

がつづく。突然二人がケーキを食べだした。体力の

消耗が激しい練習に耐え、集中力と体力を回復させる

ためだ。

そんな小休止の時ですら、水から上がることはない。

多い時は一日10時間、年間にすれば、凡そ2000

時間も練習に費やしている。 

人間離れした変化を遂げたイシェンコ ペアの肉体。

そこには、二人が過ごしてきた気の遠くなるような

長く厳しい時間の積み重ねがある。

ナタリア イシェンコさん

”シンクロは激しく動きながら息を止めるという

 特殊な競技です。とにかく水に適応する訓練を

 続ける。永遠に其の繰り返しです。”

イシェンコとロマーシナの二人が組んでから11年

世界でもこれほど長いのは珍しい。東京での撮影が

終わった夜、突然車を止めてロマーシナが飛び込ん

だのは何と釣具屋だった。

釣りが趣味だというロマーシナはすっかり買い物に

夢中

ロマーシナさん

”日本の釣具は世界一よ。”

店に入ってもう30分。イシェンコさんは苦になら

ない様子でじっと外に立って待っている。言葉に

せずとも通じ合う何か二人の間にはあるようで

イシェンコ ペアの演技は動きの同調、シンクロの

完璧さは世界一と言われている。しかし、二人が

得意とする足技はシンクロさせるのが非常に難しい。

水中で逆さになった状態で、パートナーとの動きを

一致させなければならないが、逆さで足技をして

いるときの選手の視界はどうなっているのか、

スペイン ペアに、カメラをつけてもらった。

頭を逆さにして水中へ、スペイン選手たちの

カメラには天井と壁しか写っていない。

パートナーの体がほんの少し目に入るだけ。

この限られた情報だけが自分と相手の位置を

確認しているのだという。スペイン ペアの

足技はぴったり合っているように思えるが

しかし、ハイスピードカメラの映像だと、

細かいずれが目立つ。膝を曲げた角度も違う。

足の裏の向きも異なっている。こうした僅か

のずれも減点の対象となる。ロシア イシェンコ

ペアの演技はどうか、足の角度をシンクロさせたまま

動き続けている。更に、しぶきの形まで同じだ。

水から出す足のスピードと動きが合っていなければ、

できない。今度は左の足、合わせ易い真上で止める

のではなく、あえて、難しい微妙な角度でぴたりと

決めた。回転をしながらの沈み込みも、何処で止め

ても、足先の角度まで完璧に一致している。

二人が動きを合わせてる時に使うのはカウント。

頭の中のリズムだ。 演技の前には必ずこの動作

を行い、お互いのカウントが合っているかを

確認する。

スベトラーナ ロマーシナさん

”カウントは二人の共通なルール。私は

 真夜中に起こされても、半分寝ぼけてても、

 正確にカウントを取る自信があります。

 無意識の状態でできるようになるまで、

 私達は訓練しているんです。”

 頭の中で響きあう正確なカウント、その時、

 二人の脳波はどうなっているのか検証する

 ことにした。

 相手を見ながら手の動きをシンクロさせる。

 音楽もない状態で、頭の中で響くお互いの

 カウントを頼りに、動作を合わせていく。

 すると二人の脳波は違う反応を示した。

 無意識でもカウントを取れるといった

 ロマーシナ。この時の脳波には大きな大きな

 反応は見あたらない。しかし、イシェンコの

 脳波は動きを合わせせようとしたその時、

 大きく反応した。この脳波の状態は

 ミラーニューロンという神経細胞が活性化

 しやすい時だと考えられている。

 人間の脳には相手のことを鏡のように自分と

 重ね合わせようとする働きがある。他人が痛

 がるシーンを見ると、自分も顔がゆがんで

 しまうのも、其の一例だ。イシェンコはこの

 相手と自分を重ねる脳の動きが特に強い可能性

 があるとわかる。実際イシェンコはシンクロの

 演技中、カウントをとるだけでなく、ロマーシナ

 に合わせる微調整をしているという。

 イシェンコさん

 ”ロマーシナと完全に一つになれるよう彼女の

 すべての動きに注意を払っているわ。私が

 責任をもってロマーシナとのデュエットを

 成功させなければと思っているのです。

シンクロというのはいくら一人が技術があって

 素敵に踊れても、それが相手と合っていなければ

 何の意味もない。完璧にシンクロさせようという

 イシェンコの意思は練習中にも表れている。

 
 コーチ タチアナ ダンチェンコさんは

 ロシアンルーレットのタイミングがほんの僅かに

 ずれていたその時、

 ”イシェンコ 何をボーっとしているの?

 足が遅れているわ。ロマーシナに合わせて!”と言った。

 細かな修整はすべてイシェンコに托されているのだ。

 コーチ

 ”イシェンコ 足の方向がロマーシナと違うわ。

 解る?”

 イシェンコさん

 ”このところですよね”とカウントしてみせる。

 コーチ

 ”ちゃんとシンクロさせて!”

 たとえ自分の動きが正しかったとしても

 イシェンコは何も言わず二人の動きを合わせる

 ことだけに徹しようとしていた。

 肉体に変化をもたらすほどシンクロに打ち込ん

 でいたイシェンコ。何が彼女をそこまでつき

 動かしているのか、心理面から掘り下げた解析を

 行ったのは、 ソウルオリンピック シンクロ 

 銅メダリストで 現在トップアスリートの心理を

 研究している田中ウルヴェ 京(ミヤコ)さん。

 イシェンコとロマーシナのインタビューを元に

 田中さんが自己決定力という観点から分析を試みて

 行動を起こす時の動機付けを示すもので自己決定力

 が強いほど壁に直面した時に耐える力が強くなると

 いう。

 分析によるとロマーシナは金メダルのためとか、国の

 ためとか目の前の目標によって動くタイプで、

 イシェンコは自分を向上させるためという内から

 湧き上がる力、欲求で動くタイプ。より自己決定力が

 強いイシェンコはどんな逆境にも耐える力が強いのだと

 田中さんは分析する。

 イシェンコは動機付けが自己の限界の挑戦だからこそ
 
 逆境を乗り越えれば、乗り越えるほど、どれだけ辛い

 環境が自分を高めてくれるかっていう事を知れるから

 限界への挑戦をやめられなくなる。

 二人には自分がシンクロ人生を振り返る心理グラフを

 作ってもらった。(辛かった時をマイナス、楽しかった

 ときをプラスで表す。)

 少女時代ライバルとの競争に耐えてきた二人。

 ロマーシナは山あり谷ありの人生を示した。

 イシェンコが描いたのは、右肩上がりの一直線の人生

 だった。

 凄いですね。谷のない人生ですね。という質問に対して、

 イシェンコさんは

 ”勿論よ。上昇のみの人生よ”と答えている。

  この真直ぐなグラフは逆境すら自分の糧と考える

  イシェンコの姿勢をよく表しているという。

  其の原点は彼女の少女時代にまで遡る。


     (つづく)

ミラクルボディ 第一回 世界最強の人魚達(3)

2016-07-19 20:15:57 | 最近の出来事
NHK テレビ ミラクルボディ世界最強の人魚たち

よりの抜粋

お訪ねしたイギリスのマイケルベレンブリンク博士は

水中に生きる哺乳動物を専門とする動物学者です。

”人間と同じ哺乳類であるあざらしなどが水中で長時間

 活動できるメカニズムにヒントがあるのではないか。

 彼女達はほんの一瞬で息を吸って直ぐまた水中に潜り

 激しい運動を行う。まるで水生哺乳類のようです。

 そういう練習を長期間繰り返すことで体内の酸素量に

 変化が生じる。つまり、肺以外の追加の酸素タンクを

 もっている可能性があるのです。”


 ベレンブリンク博士の言う追加の酸素タンクとは何か

 博士の監修のもと、イシェンコ ペアのMRI の

 撮影を行った。

 演技中の潜水状態を再現するために合計2分間MRIの

 中で息を止めてもらい、身体の中の変化を調べる。

 いったい何処まで小さくなるのか、ベレンブリンク

 博士が注目していたのは、ある臓器。それは脾臓だ。

 脾臓は大量出血などの緊急時には血液などを心臓に

 送るが、あくまで補助的な役割で、摘出しても殆ど

 影響がないとされている。

 しかし、この脾臓はあざらしなどの一部の水生哺乳類

 では重要な役割りを果たしている。呼吸を止めると

 脾臓が収縮し、酸素をたっぷり含んだ血液が心臓を

 通して、全身に送られる。

 肺とは別に脾臓という追加の酸素タンクを使うことで

 長時間の潜水が可能なのだというベレンブリンク博士

 の仮説。人間にとっては緊急用にすぎない脾臓を

 イシェンコ ペアがシンクロの時に働かせているのでは

 ないか。つまり水生哺乳動物のように脾臓を収縮させて

 其処から酸素を得ているのではないか?

 比較のために、スペイン ペアにもMRIに、入って

 もらった。

 まづ、スペイン ペア のデータ。息を止めると、脾臓が

 11% 縮んだ。 これは一般人とほぼ同じ。ところが
 
 ロマーシナは 23%、更に注目は、イシェンコが息を止め

 た後、59%も小さくなっていた。 

 ベレンブリンク博士(リバプール大学動物学)

 ”イシェンコの脾臓が此処まで小さくなっていたことに

  正直、興奮しています。しかも息を止めた後に縮んで

  いますから、脾臓が潜水中の酸素供給に使われていると

  言うのは間違いありません。水中での激しい運動が

  人間の体の中身まで変化させているという事実は

  進化という観点から見ても、とても興味深い結果です。

  一度息を止めることによって脾臓が著しく縮み、体内

  で酸素が放出される其の不思議な感覚に、イシェンコ

  自身も気づいていた。

  イシェンコさん

  ”脾臓が関係しているなんて考えたこともなかった。

   でも、確かに最初より其の後の方が息を止めること

   が楽なのは感じていたわ。”

   

   イシェンコ ペアは、まるで水生哺乳類のように

   変化して、追加の酸素タンクを備えて、激しい

   足技を可能にしていたのだ。

   二人はどうやってこの肉体を手に入れたのか?

   (つづく)


ミラクルボディ 第一回 世界最強の人魚達(2)

2016-07-18 20:40:12 | 最近の出来事
NHK テレビ ミラクルボディ よりの抜粋

二人の身体的能力と技術を解き明かすプロジェクト

が始まる。

国立スポーツ科学センターのシンクロプールに、

今回特殊撮影のカメラを取り付けた。

水上も水中も同時に撮影できるツインズカムと言う

カメラ。 

動きの詳細を高画質、超スローモーシヨンで写し出

す4Kハイスピードカメラ。 最新鋭のカメラを

駆使して二人の動きを捉えていく。

プールに現われたイシェンコ ペヤ、オリンピック

に向けた最新のプログラムをカメラの前で演じる

のは是がはじめて。あらゆる角度からの撮影と

科学的分析によって技により磨きを掛けたいと

二人は今回の取材に応じた。

タイトルは ”人魚姫”

人間にあこがれ、葛藤する人魚の心を表現する。

序盤から二人は高い技術力を見せ付ける。

細かく複雑な足の動き,つま先までシンクロして

いく。 ツインズカムで見てみると体の軸を保ち

ながら高速スピン。支えのない水中を強く蹴り、

上半身を躍動させる。

中盤は一転。おだやかな海を自由に舞う人魚を

表現する。

シンクロでは技術だけではなく芸術性も採点の

対象となる。

水中の力強い足が水上の華麗さを支える、二人が

複雑に交錯する難易度の高い演技です。

動きに狂いはない。

終盤最大の見せ場、肉体の限界に挑む技をたたみ

掛けてくる。

水中から高く飛び出す倒立回転。腕の力だけで

横に動く足技、そして最後に持ってきたのが猛

スピードの大技、ロシアンルーレット。


二人が早速ツインカムで撮影した映像を見に来た。

ロマーシナさん

”いやだ。このカメラ。ミスがばれちゃう。

 水の中を実際に見るのは面白いわ”

イシェンコさん

”練習に役立つわ”

イシェンコ ペアの武器はダイナミックな足技。

しかしそれを増やせば水中での無呼吸時間が長く

なる。

演技中での無呼吸時間を計算してみた。

1分47秒。 全体3分12秒のうち、実に

半分以上も呼吸を止めていた。

注目は疲れがピークに達する終盤にあえて

足技を固めている事だ。

イシェンコ ペアの演技は世界のトップ選手と

比べてどれだけ身体の負担が高いものなのか

過去オリンピックで2大会銀メダルのスペイン

ペアと比べてみた。

スペインペアは スペインらしい情熱的な演目

終盤には早い足技を入れてきた。

ところが、ロシアとスペインでは水中での

無呼吸時間に違いがでて、スペイン1分29秒

ロシア1分47秒。20秒近い差が出た。

特に終盤の差が大きい。

イシェンコペアの 演技が如何に常識離れした

ものか浮き彫りになった。

スペイン ヘマメングアル 選手

”いったいどんなトレーニングをすればあんな

 に激しい演技ができるようになるのか驚きです。

 しかも、始まってから終盤までまるで精密な

 器械のように ミスを全然しない。本当に人間

 離れしています。”

無呼吸状態でのイシェンコ ペアの激しい動きが

何故可能なのか、アスリートの心肺機能の専門家

イギリスのベンジャミン ジョーンズ博士に分析

を依頼した。

”足技を行うには、太股の筋肉を早く大きく動かす

必要がある。其のエネルギーの源は酸素だ。

呼吸によって酸素はまず、肺にためられる。その後

血液とともに心臓から太股に送られる。いわば肺は

酸素タンク。心臓はポンプの役割だ。潜水中はこの

タンクの中の限られた酸素で筋肉を動かさなければ

ならない。無呼吸状態で足技を続ける時、筋肉の中

の酸素はどう変化したのか、体内の酸素の割合を

測定出来る装置(酸素飽和度測定器)を太股につけ

る。同時に、心拍数を計る装置(心拍計)つける。

普段はクールな女王イシェンコさんもはじめての

測定に興味しんしん。

 イシェンコさん

 ”みいらみたいに巻かれてる。”

銀メダリストのスペイン選手にも同じ測定を行った。

まづ、スペイン選手のデータ。

太股の筋肉の酸素が急速に減っている。足を大きく

動かすために太股の酸素が消費されているからだ。

不足した酸素を補うために、ポンプとなる心臓の

動きを早くし、たくさんの酸素を太股に送る必要

がある。しかし心臓の働きを示す心拍数は下がり

続けている。これは人間が水中に居る時の潜水徐脈

という生理現象で、潜水中はタンクとなる肺の中の

酸素が限られているため心拍数を落とし、もっとも

大事な脳以外に送る酸素を制限しようとするのだ。

息継ぎで酸素が肺に入ると心拍数はいったん回復

する。しかし、水潜るとまた、節約モードになり

心拍数は下がってしまう。心拍数が下がれば、筋肉

の中の酸素の割合は落ちてしまう。是では早い足技

は出来ない。しかしイシェンコのデータは違って

いた。潜水中でも心拍数は下がらない。

節約モードどころか、170近くまで上がったのだ。

心拍数が上がったことで酸素の割合も回復、是なら

早い足技もを続けることも可能だ。パートナーの

ロマーシナもイシェンコと同様の結果だった。

しかしよく見て欲しい。このとき二人は呼吸が出来て

いない。タンクである肺に酸素が補給されないのに

何故心拍数が落ちないのか、酸素タンクの大きさ

つまり肺活量に違いがあるのか、だが、スペインと

ロシアどちらも肺活量に大きな違いはなかった。

ロマーシナ  5・66  イシェンコ  5・8

スペイン   4・81  5・64

エセックス大学スポーツ生理学教授ベンジャミン

ジョーンズ博士

 ”潜水中の酸素量には限界がある。あの足技に

 必要な酸素をどうやって手にいれ体内の酸素不足

 を解決していたのか其の仕組みは想像以上複雑な

 ようです。今回の測定だけではまだ説明が出来

 ません。


プールでの撮影が終わると旺盛な食欲を見せる二人、

いったん陸に上がると親しみやすい普通の女性、

しかし、心肺機能の専門家も解けないなぞを持った

二人は水の中に居るときはいったい何処から酸素を

手にいれているんだろうか、私達は手がかりを求め

て、イギリスのある研究者を訪づれました。

(つづく)

ミラクルボディ 第一回 世界最強の人魚達(1)

2016-07-17 12:59:13 | 最近の出来事


“NHK スペシャル ミラクルボディ 第一回世界最強の人魚達”

よりの抜粋

毎日毎日、ブログに何を書こうかと悩み、時には、私がテレビを

録画しておいて、其の中で感動したものの中から、もしかし

たら、是を見逃しておられた方々がおありだったら、さぞ残念

かもというすばらしい番組をブログで書かせていただくことが

あるのですが、画面には、すばらしい風景やら、可愛い写真

とか、正確なデータの表記などなどこれあり、それを、私には

表現できないのと、人の言葉は脈絡がつながらないこともまま

あり、時には聞き取れずに、何度も何度もビデオを見直して

原稿に書くのですが、これが意外と大変な労働になり、

原稿を見ながら、PC に書いていくのですが、このときにも、も

う一度ビデオを見直した方がいいと思うことも出てきて、PC

の部屋には新しいビデオがないので、ほんの3.4米のところ

ではあるのですが、ビデオを見に行きつ戻りつしながら書いて

いるんですが、86歳を目前にしている私にとっては、ちょっと

辛くなることもあるんですが、今日のこのお話には全く感動、

感動でしたので、どんなことがあっても最後までお伝えしたい

と思っております。

何処まで書けるか解りませんが、出来たら、最後の回まで

お読みください。

では・・・・。


水の中を自由に動き回る其の肉体を手にするために長い時を

過ごすシンクロナイズトスイミング、宙を舞う華麗な演技、

しかも、水の中で、繰り広げられるその時には、息を止めたま

まの過酷な動き、ダイナミックな足技、その間、頭を下にした

ままで、一切呼吸できない。

およそ3分間の演技の大半、選手は無呼吸状態で動き続け

なければならないのだ、酸欠に陥って選手が失神すること

だってあるこんな競技はほかにはない。


スポーツ生理学者

 “陸上競技で言えば、3分間のダッシュを、半分息を止めて

 行うようなものだ。

 しかも彼女達はにっこり笑顔で、信じられません。“

この過酷な演技で今世紀中、金メダルを独占している国がある。

それはロシアだ。

そんなシンクロ王国のトップスター、ナタリヤ イシェンコさん

と スベトラーナ ロマーシナ さんはオリンピックと世界選手

権で金メダルを44個もとり、リオデジャネイロで連勝を目指して

いる。

ナタリヤ イシェンコさん

“私達の強みはすべてよ。芸術性、技の難易度、完成度、水の中

で 私たちに敵う人間なんて居ないのよ。“



世界で二人にしか出来ない技がある.それはロシアンルーレット。

猛スピードで30秒間足を動かし続ける。頭は勿論水の中。

一歩間違えば、酸欠の危機。しかし成功すれば、観衆の度肝を

抜く荒技だ。

それを可能にするのが、無呼吸でも動き続けられる身体能力。

是までベールに包まれていた女王の肉体に今回始めて迫ることを

許された。

最新の科学分析で見えてきたのは進化の常識を覆す驚きの事実。

体内の酸素量が限界に近づいた時、突如身体の奥底にある緊急の

酸素タンクともいえる存在が活動を始めたのだ。


生哺乳類研究者

“進化の観点から見るととても興味深いのです。水生哺乳類と

 同じ機能を手に入れ、水と適応した。“

其の生まれ持った肉体を環境に合わせて進化させることなど

出来るのか、人間の限界にいどむシンクロナイズドスイミング。

其の頂点に立つ二人の身体と心を裸にする。

リオデジャネイロ オリンピックで 金メダル最有力候補

イシェンコ、ロマーシナ ぺヤが今年3月二人の体の科学的

分析のため来日した。

(つづく)