【ロンドン=黒瀬悦成】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は10日、2020~24年の世界で行われた兵器取引に関する報告書を発表した。ロシアに侵略されたウクライナの兵器輸入は15~19年比で100倍近い9627%増。兵器輸入は世界全体の8・8%を占め、最大の兵器輸入国となった。
日本の兵器輸入も中国や北朝鮮をにらんだ防衛力の強化を受けて93%増となり、世界6位につけた。輸入の2位はインド、3位はカタールだった。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、少なくとも35カ国が同国に兵器を輸出した。米国からの供給が45%を占め、続いてドイツ12%、ポーランド11%など。
北大西洋条約機構(NATO)に加盟する欧州各国の輸入も105%増となった。米国からの供給が64%を占め、他の供給元は韓国、同じ欧州域内のフランスとドイツ、イスラエルなど。SIPRIは、欧州の輸入拡大は「ロシアの脅威に対抗するため欧州が再軍備を進めている現状を反映している」と指摘した。
SIPRIはまた、欧州が第1次トランプ政権(17~21年)の下で米欧関係が緊張状態になったのを受け、欧州は兵器輸入の対米依存の低下と、域内の兵器産業の底上げを図ったと指摘。しかし「米欧の兵器供給をめぐる関係は深く、NATO加盟国への輸出はむしろ増えた」と指摘。米国は現在、約500機の欧州向け戦闘航空機の受注残を抱えているという。
兵器輸出は米国が最も多く、世界全体の43%を占めた。2位はフランス9・6%。3位はロシア7・8%だった。
ロシアはウクライナ侵略の前から得意先のインドや中国からの受注が減り始めたのに加え、自国製兵器をウクライナ戦争に投入する必要が強まったことや、欧米の経済制裁の影響で15~19年比で64%減少した。
SIPRIの報告は、世界情勢を反映した兵器取引の長期的傾向を把握するため、5年間の範囲をとって集計・分析している。
産経新聞
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