震災の夜は、あまりよく眠れなかった。
まだ暗い中、玄関からゴトリと音がして新聞が届いたのを知り、びっくりしつつもありがたかった。
そして、朝焼けの空を見て、その明るさがどれほど嬉しかったことか。
その日は、あちこち歩いて、町の様子を見て回った。
あすと長町を通りかかったとき、東の空に大きな黒煙が上がっていたのが見えた。
津波で破壊され、そのせいで大火災も起き、沿岸部の町は大切な物も大切な命も、たくさん失われた。
その黒煙が、まるで雲のようになって東の空にたなびいている。
切なかった。
あの日見た空は、生涯忘れられない。