■事例Ⅰ~事例Ⅲ共通
中小企業診断士2次試験は、基本事例Ⅰ~事例Ⅲと、事例Ⅳで大きく分かれると考えた方がいい。基本的に事例Ⅰ~事例Ⅲは同じ考え方で解くことができるのだ。
なので次に、事例Ⅰ~事例Ⅲ共通で押さえておくべき内容を書く。
a)成功体験を活用する
与件文を読んでいると、しばしば成功体験が書かれていることがある。R5の事例Ⅰは顕著で、A社の成功体験による強みをX社に横展開しろという事例だった。その他、H30事例Ⅰは、売切り型の事業の限界を打ち破ることを目標にして、新規事業開発に取り組んだという過去の成功例を活かして、さらに次なる新規事業を開発していこうぜという事例だ(と思う)。他にもR4事例Ⅰは、若干変則的だが、農業を生業としている会社の社員定着率の少なさをどうするかという事例で、その従業員確保の解決策として、「そもそも社長はどうやって農業を好きになったの?」という社長の過去の経験を活かして従業員確保、定着に関する施策を答えさせようとしている。
事例Ⅰ~Ⅲは、いろいろ会社の変遷がつらつらと書かれているが、その中で会社が乗り越えてきた苦難とかが時系列でよく述べられている。その中にやはり成功体験も「成功」と文言が直接書いてあったりして見つけやすかったりする。それは出題者からの「これを使え」というメッセージなので、そのまま利用し解答を作成すると、点数も伸びやすくなると思う。
b)解答の割り付けを行う
与件文はいくつもの段落(文字の開始が一文字ずれて始まっている箇所を1段落としている)に分かれており、多いもので20くらいにはなるが、一般的に各設問に対して与件で使う段落は被ることはないと考えている。
例えば、段落の6~8は設問2に使う、段落の11から12は設問3に使うといったものだ。
基本的に解答の内容は設問間で被らせないのだ。
まず最初に設問と与件を読み、解答を考えていく前に、この設問と与件の紐づけを行って解答に書く内容の当たりをつける。自分はこの作業を割り付けと勝手に読んでいる。与件の各段落が各設問にバランスよく割り付けができると、そこからの解答作成がかなり楽になるし、手ごたえのある解答が出来上がる。
年度や事例によって割り付けがすんなり行くこともあるし行かないこともある。R5は事例Ⅰ~事例Ⅲでそんなに悩むことなく比較的スムーズに行ったので、いい結果になったと思っている。
c)システム化問題は厄介
上記の割り付けに関連する内容だが、設問の中にいわゆる「システム化」の問題が出ると、この割り付けがうまくいかなくなる。「システム化」は別名「IT化」「デジタル化」「コンピューター化」などのワードなどで出題される。
R2事例Ⅲを例にすると、第2問の問1で、営業部門の問題点と対策、問2で、製造部門の問題点と対策を答えさせているが、その後第3問でIT活用について助言せよという流れになっている。第3問のIT活用で、第2問の営業部門の対策も、製造部門の対策に書いていた内容もIT化という解答として書けるため、割り付けがうまくできなくなってしまう。自分はこんなシステム化の問題がとても苦手であった。
自分はシステムを本業とはしているため、なかなか皮肉な出来事ではあったが、これは単なる割り付けがうまくいかなくなるという事象なので別問題である。対応策として、「どちらにも同じような内容の解答を書く」というのがあるとYouTubeのきゃっしい先生が言っていたが(一応最終手段)、本当にうまくいくのかは分からない。
とりあえずR5には出なくて本当に良かったと思っている。前の記事で合格した要因に運もあったと書いたが、これは大きくはこのことである。
d)因果型とキーワード羅列型
解答の書き方として、A社では、「因果」というのを重視して書くように教わった。これは、ざっくり言うと「〇〇だから〇〇である」という一つの因果をしっかり書く。という教えであった。因果は「〇〇と〇〇により、〇〇である」といったピラミッド型などの書き方もできる。この書き方を骨子として、100文字で2つの因果をMECEの切り口で書く。といった解答の構成だった。
一方、ふぞろいは、A社と比べると、「キーワード羅列型」の解答と考えている。これは、解答にキーワードをできるだけ盛り込むという方針である。
例としては、DRINKというフレームワークを使った解答例で言うと、「〇〇の情報を①DB化し②即座に③ネットワーク上で④一元管理し⑤社内で共有する」といった書き方で解答にいくつものキーワードを埋め込むという書き方ができる。これは自分はふぞろい流と名付けていた。
自分はどちらかというと後者のふぞろい流で解答を作成していた。なぜなら前回の記事で書いたが、採点者は採点の大きな方向性として「キーワードが入っているかどうか」で判断していると思ったからだ。なので、引っ掛かりそうなキーワードを解答の中にガンガン埋め込んで部分点を獲得していくという戦法を取っていた。
他にも予備校や人によってにまた異なる書き方があると思うが、自分が実践していたのはこれ、という話です。
e)理由、要因を答える問題と助言、留意問題
問題には、単に理由や要因を答えさせる問題と、「助言せよ」や「留意点について書け」といった問題がある。前者を分析系問題、後者を助言系問題と呼ぶことにする。
分析系問題は、単に理由、要因をかけばいいだけなので、基本的に与件からキーワードを拾い、解答に書けるだけ埋め込んでいった。これは比較的簡単に作成できると思う。問題は助言系問題である。助言系問題は、捉えどころが難しい問題で、予備校でも各社でかなり解答がばらつく傾向があるらしい。問題の内容にもよるが、自分は助言系の問題が出てきたときには、ドメインの考え方から「誰に、何を、どうやって」の枠組みで解答を作成することを意識していった。んで「〇〇を狙う、〇〇を図る」といった「効果」も字数が入る場合にはできるだけ埋め込むという解答方法だった。
問題によって解答の内容も変わっていくと思うが、基本的に助言問題にはこう答えるといったやり方を持っていると、書いていくうちに応用も効きやすくなり、解答時間も比較的短くなっていくと思う。
f)社長の思いを汲む
与件文にはしばしば、社長の思いが書いてあったりする。基本的にその社長の思いを否定せず、社長の考えを反映した方向性で解答を組み立てていった。
例としては
・食品スーパーX 社と共同で行っている総菜製品の新規事業について、C 社社長は現在の生産能力では対応が難しいと考えており、工場敷地内に工場を増築し、専用生産設備を導入し、新規採用者を中心とした生産体制の構築を目指そうとしている。このC 社社長の構想について、その妥当性とその理由、またその際の留意点をどのように助言するか、140 字以内で述べよ(R5事例Ⅲ)
という問題があったりするが、これについては社長の思いを否定せず、「やりましょう」という方向性で解答を作っていく。なぜなら実際に中小企業診断になった場合、あくまで社長の思いを最大限汲んだ上で、「そのためにはこうすることが必要です」とかそういった方向性を助言するのが診断士のあるべき姿だかららしい。真っ向から否定してはお客さんの信頼も得られないし、それだと診断士の姿としてはあまりよろしくないため、基本的には社長の思いに沿って解答を作成する方向性となる。
g)顧客との直接の接点はニーズ把握に利用する
事例Ⅱとかで顕著ではあるが、BtoCのビジネス等で、直営店を経営していたり、最終消費者との直接のコンタクトがある企業の場合は、その接点で「顧客ニーズを汲む」ことが解答の方向性となる。これは1次の知識でも出てきた「サービス・エンカウンター」の考え方である。
そしてニーズを汲んで新製品開発や、新サービス開発に利用するのだ。
直近でもR5事例Ⅲで、商品開発をする際、販売先の料理長や商品企画担当者と直接の接点があったので(BtoCではないが)ニーズを汲むということを解答に入れた。そもそもわざわざ販売先の料理長が訪ねてくるか?と不自然なところもあったので、おそらくこの方向性は間違ってなかったと思っている。
h)成長戦略は新製品開発または新市場開拓
設問で成長戦略はどうするか?という問いが良く出てくるが、成長戦略は「市場浸透」「新製品開発」「新市場開拓」「多角化戦略」の4つがある上で、基本「新製品開発」または「新市場開拓」を取るようにする。「市場浸透」はレッドオーシャンだし、これは事例Ⅲの生産管理が自ずとプロセス改善により市場浸透を進めていくという方向性になる、また「多角化」は中小企業には体力がないので、今後どうするか?という問については消去法で新製品開発または新市場開拓になるのだ。その上で与件文からどちらの戦略が良いかを判断し解答に書いていくことになる。
i)競争戦略は差別化集中戦略
設問で競争戦略はどうするか?という問いも良く出てくるが、これは「コストリーダーシップ」「差別化」「集中化」がある上で、「差別化集中」戦略を第一候補として与件文により、「差別化」または「集中化」を選んでいた。これは中小企業の取りえる戦略が差別化集中(またはどちらか)しかないからである。基本的に中小企業は「他企業との差別化を図り」、(できれば)「参入障壁を築き」、「地域密着」で「最終消費者のニーズを取り入れ」「ニッチな市場に対して」「高価格で粗利を稼ぎ」生き残りを図るという戦略を基本方針とする。
j)組織図と社員数は必ず図示する
組織図と社員数は事例Ⅰでなくとも必ず図示してまとめるようにしていた。基本的に組織の言及は文章のみでつらつらと書かれているが、この中にかなり重要な情報が含まれていることが多くある。例えば、組織図を作ると営業組織がないとか、正社員が多い/少ないとか、兼務をしているとか、キーマンがいたりとかに気づくことができる。R5でも事例ⅠでA社とX社の部署割りが同じだったとか、事例Ⅲで工場管理者についての言及とか、これらは組織図を書かなかったら気づかなかった内容だった。
もちろん組織図を書いておいて使わないことも全然あるが、重大なヒントを漏らさないためにも必ず書いて整理することが重要である。
色々書いてしまったが事例Ⅰ~事例Ⅲ共通の考え方としてはこんな感じでしょうか?
こんな基本方針があると、年度や事例毎の解答も比較的ぶれずに一貫した解答が書きやすくなるんじゃないかと思う。
そんなんで今回は以上☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます