小説の感想です。シリーズなので同時に二冊。
『図書館戦争』/『図書館内乱』(有川浩著、メディアワークス)
メディア良化委員会なるものが誕生し、好ましくないと判断されたあらゆる出版物を、超法規的検閲と称して没収する、読書好きには何やら暗い近未来。
資料収集の自由と、資料提供の自由を有する図書館は、メディア良化委員会に真っ向から対立する組織として、常に蔵書をかけて戦っていた。図書館を襲撃され、多くの死者を出した過去の痛ましい事例から、図書館は武装することになっていた。中でも図書館特殊部隊は、自衛隊よりも充実した実践訓練を行うと称される戦闘職種だ。
その図書館特殊部隊に、女性としては史上初で抜擢された、新人図書館員の笠原郁。彼女の他にはただひとり新人から抜擢された手塚は、同期の中で最優秀の秀才だと誉れ高いが非常に感じが悪いし、新人研修以来の上官の堂上は何故か自分にだけ厳しいしすぐ怒るし時々わけのわからないキレ方をするし、もうひとりの上官小牧は物腰が柔らかくて笑い上戸だけど掴みどころがないし、チームの隊長玄田は鬼瓦みたいだし、足の不自由な車椅子の老人は、ただの図書館利用者かと思いきや、図書館隊司令だし。
そんなメンバーに揉まれつつも、利用者が自由に読書する権利を守るため、郁は今日も戦う!
というようなお話。
図書館が武装するという突飛な設定ですが、主人公郁をはじめ、登場人物の言葉遣いなんかが非常に口語的で生き生きとしていて、随所に溢れる軽妙なやりとりなど、非常に楽しく読みました。
図書館武装化の歴史とかその組織形態なんかはちょっと入り組んでいますが、基本的には「体育会系女子とその上司の何だかもう見てるこっちが痒くなるイライラ恋愛モノ」かと思います(笑)。ノリ的にはライトノベル的。
実は主人公の郁が図書館員を志した志望動機が、高校生の頃突如やってきたメディア良化委員会の検閲から守ってくれた図書館員(「王子様」と仮称)に憧れたから、ということなんですが、面接の時にこのことを喋ってしまったり、寮で同室の同僚に喋ってしまったりした結果、郁以外のほぼ全員がそれは誰なのか知っている、という、なんかある意味可哀想な状態です(笑)。このへんが痒いけどイライラする、みたいな状況の所以ですね。
今回『図書館内乱』を読み終えた結果、郁本人も「王子様」が誰なのか知ってしまい、「えええーーーーーーッ!?」というところで終わっています。シリーズ化決定ということで以下続刊なんですが、どうなるんでしょう次刊の冒頭。ものすごい気になります(笑)。
『内乱』の中に出てきた本、『レインツリーの国』がスピンオフ企画として実際に刊行されたようなので、次はそれを読んでみようと思います。
・・・実は『となり町戦争』と間違えて読んだってことは内緒ですよ(笑)。